テレビ出演

プールの監視員のアルバイトをしているとき、テレビに出たことがある。

西公園プールでは、毎年8月のもっとも暑い時期になると、「夜間プール」と称して、社会人にだけ夜9時ぐらいまでプールを開放する。このときに、地元のテレビ局が「今年も夜間プールが始まりました」などと季節の風物といった趣で、ニュースで取り上げるのだ。

撮影に来たのはNHKだったと思う。客のふりをしてインタビューをされる、いわばサクラが監視員の中から選ばれるのだが、それが私になったのだ。生放送だったのだが、困ったのは、本番の30分も前からずっと休まずに泳ぎ続けさせられたことだ。ちょっとでも休むと「続けてください」と言われる。いつ映ってもよいようにだとはいえ、とても疲れた(後に自分でビデオ撮影をするようになると、彼らの気持ちがよくわかった)。

いよいよ出番になると、マイクを持ってプールに入っている女性アナウンサーめがけて、「自然に」泳いでいって、声をかけられてインタビューに答えるのだ。私は事前の台本どおり「日中にプールに行けない我々社会人にとっては、夜間プールはありがたいですね」などと真っ黒な顔で答えたのだった。

偶然テレビを見た友人からは、「なんか水中カメラに向かって泳いでくるわざとらしい奴がいるな、と思ってたら条太で驚いた」と言われた。どうみても社会人には見えなかったそうだ。そりゃそうだ。

このプールの監視員の連中、なにかといえば水着を着ていない人をプールに突き落とす「もてなし」をしていて、女性アナウンサーも毎年、プールに投げ込んでいた。

私が赴任しているこちらでも、会社のホワイトハウスで集まりがあると、裏庭のプールに落とし合うのが恒例となっている。どこでも同じようなことをするんだなと思った。