英語の名前

デイリークイーンの意味が「毎日の女王様」ではおかしいと思って調べてみたら、なんとDailyではなくてDairyで、「乳製品」という意味だった。だから「乳製品の女王様」という意味で、ソフトクリームが自慢の店だったということがあらためて分かった。調べてみるものだ。

どうしてDailyだと思い込んでいたかといえば、Dairyを知らなかったからだ。しかし、Dairyの発音はデイリーよりはデアリーに近いのだ。もしデアリークイーンと言われていたら、間違うことはなかっただろう。DQの担当者が、日本で売るときに考えがあってデイリーとしたのだろう。

こういう例は他にもある。たとえば昔、Vitamin Zというロックグループがいたのだが、日本では「バイタミン・ゼット」という名前で売り出された。音楽評論家のピーター・バラカンはこれに対して「これはおかしいですね。イギリス読みならビタミン・ゼット、アメリカ読みならバイタミン・ズィーで、これはどちらでもないあり得ない読み方です」と言っていた。日本のレコード会社の考えはたぶん次のようなものだったんだろう。まず、「ビタミン」は栄養ドリンクの名前を連想させてかっこ悪いのでこれを避けた。次に、日本ではZをズィーと読む習慣がないので「ゼット」にした。それで結局、英米混合の「バイタミン・ゼット」に落ち着いたというわけだ。ピーターはそこまではわからなかったと見える。

日本でクアーズとして売られているビールがある。これのつづりはCoorsで、どこにも「ク」と発音する要素がない。どう考えてもコーズかコアーズだ。しかしコーズではなんか物足りないと思った日本の担当者がこれをクアーズとして発売したのだろう。そのおかげで、日本人はアメリカに来ても一生懸命「クアーズ」と言っては店員に「何?コーラ?」などと聞き返されることを繰り返すことになる。

私はもともと酒をあまり飲まないので当然、そんなアヒルの鳴声みたいなビールなど知らない。アメリカに初めて出張にきてレストランに入ったとき、出張経験の長い先輩が「クアーズは発音が難しくてなかなか通じないんだ」と言いながら舌を巻いたりして世にも奇妙な声色で「クアーズ」と言って、案の定、店員に聞き返された。私には店員の発音は「コーズ」としか聞こえないのでそう注文するとすぐに通じ、先輩に「お前すげえな」と言われた。「だって店員はコーズって言ってるじゃないですか。そういえばいいんじゃないですか?」というとその先輩は「ここいらは訛ってるからそう言うかもしれないが、本当はクアーズが正しいんだ」などと言う。何を言っているのか。正しかろうが間違っていようが通じる方を使えばいいだけのことではないか。

一度クアーズだと思いこんだ人にはコーズとは聞こえないし、仮に聞こえてもそうは言いたくないのだということがよくわかってとても面白かった。

ちなみに、卓球ラバーのベストセラー「スレイバー」は英語圏では「シュライバー」だ。