宗教団体への訪問

学生時代、一番弟子の戸田と宗教団体めぐりをした。問題は一体何の名目で行くのかだ。普通は、街角で勧誘されるか、または家に訪問を受けて誘われるケースがほとんどなのに、こちらから出向くわけだから、相当に異常な行為である。まさか、「議論をふっかけにきた」と本当のことを言うわけにはいかないから、怪しまれないような何か他の大義名分が必要である。

そこで思いついたのが、「何か宗教に入ろうと思って色々見てまわっている」というものだ。しかし考えてみて欲しい。いったいどこにそんな人間がいるというのか。宗教というものは、信じてしまったから結果的に入るのであって、市民サークルやクラブ活動じゃあるまいし、「何かに入りたい」と思って探すものではないのだ。我ながら、なんとバカ気た謳い文句だろうかと可笑しくてたまらなかった。

幸い、どの団体に行っても、怪しまれることはなく「それは良い考えですね。ぜひうちを見て行って欲しい」と言われたものだ。まあ、水掛論以外のまともな議論になることはほとんどなかったわけだが。

そのような趣味を持っていた私が、いまやキリスト教の本場、アメリカに来ているわけだが、さすがにここでは、議論することは周到に回避している。ただじっくりと話を聞いて、彼らの思考論理に思いをはせるだけだ。