年別アーカイブ: 2010

The Mummy(ハムナプトラ)

ジュラシックパークの隣にはThe Mummyというアトラクションがあった。エジプトのミイラをテーマにした映画で、後で邦題を調べたら『ハムナプトラ』というらしい。パンフレットを読むと、真っ暗闇の中で前後左右に激しく揺れる乗り物だということで、またいたずらに物理的に激しいだけの乗り物だ。私はそういうバカバカしいのは嫌なので、乗らないつもりだったが、足立さんが「違うかもしれない」と言うので乗ってみた。

最初こそ、暗闇にミイラや棺おけなどが登場したが、すぐに真っ暗になり、突然前方に体験したことがないほど凄まじい急加速をした。足立さんに借りた帽子が頭から脱げるほどの加速だった。そして上下左右にもまれてから急停止し、今度はこれまた凄まじい加速でバックをされて、あっという間に終わった。45秒くらいだったと思う。

私は乗り物酔いしやすいので、座席から降りる前にはもう吐き気に襲われていた。1分もかけずに人を具合悪くさせる恐ろしい乗り物だった。当然、面白くもおかしくもない。ただ不愉快なだけだった。このあたりから、どうも私はもともと自分が嫌いなものばかりあるところに来てしまったことに薄々気づき始める。

出口で、暗闇でフラッシュを焚かれて撮影された写真が売っていた。「買うものか」と思ったが、意外に面白い写真だったので買ってしまった。そういえば隣の足立さんは乗っている間中ずっと「うわーっ」と思いっきり叫んでいた。足立さんもこういうのは大嫌いだそうだ。二人で嫌いな乗り物に乗って文句を言っているというわけだ。店員には間違いなくカップルだと思われたはずである。

ジュラシック・パーク

こうして45分間のスタジオツアーは終わった。昼食にチリドッグを食べて、こんどはパンフレットにも大々的に宣伝が書いてあった『ジュラシック・パーク』だ。かなりの人だかりで、内容的にも子供に一番人気があるように思われた。

ここでも優待券が威力を発揮して、ほとんど並ばずに乗った。これはボートとジェットコースターを合わせたようなもので、最初に高いところに運ぶところだけ動力を使い、あとは水の流れに沿ってコースを回り、最後に25mの急角度の坂(滝と表現していたが、それでは死んでしまう)を滑り落ちて水しぶきでびしょ濡れになるというアトラクションだった。

私はジェットコースターのようなものは実はさっぱり面白くない。怖いことは怖いが、怖いのが嫌だというのではない。ただ面白くないのだ。じゃあ何を期待して乗ったのかと言うと、本当の原始時代に迷い込んだような不思議な気持ちになることを期待したのと、あとは「せっかく来たんだから」というのと「これだけ人気があるのなら面白いに違いない」という考えだった。

結果は・・・ごらんの通りだ。確かにボートの周りには恐竜がいて、なぜだか口から水鉄砲の水が出て客にかけたりしたが、あまり面白くない。最後は急角度の坂を落ちてずぶ濡れだ。足立さんと二人で無言でボートを降りたのだった。写真の表情がすべてを物語っている。

飛行機事故

次はどういう映画か知らないが、墜落した飛行機のセットだ。飛行機がぶつかって壊れた家やひっくり返った車もあった。本物の飛行機を使って作ったらしい。迫力は凄いが、なにしろ現実にあることだけに、リアルすぎて少し嫌な気持ちになった。まあしかし、本当の墜落ならもっとバラバラになり、これは映画的なウソなのだろうとは思うが。

『ノルウェイの森』

ヤフーのニュースを見ていたら、村上春樹の小説『ノルウェイの森』が原作の映画にビートルズの『ノルウェイの森』を使うことが決定したという。極めて異例なことだ。ビートルズ側も村上春樹の実力とステイタスを認めたということなのだろう。

『なんでも鑑定団』で『ヘルプ!』を使うのもはやりビートルズの許可を得たのだろうか。あの番組は私も好きだが、私がビートルズでもっとも好きな曲を何の関係もない番組に使われるのは嬉しくはない。

ところで、先のヤフーのニュースに面白いことが書いてあった。ビートルズの「ノルウェイの森」の原題「Norwegian Wood」のWoodは森ではなくて材木であり、「Norwegian Wood」とは「ノルウェー材の家具」という意味である(歌詞を見ればそういう意味で使われていることが分かる)。ヤフーのニュースによれば、80年代中盤に村上春樹が『ノルウェイの森』を書いて大ヒットして以来、ビートルズの「Norwegian Wood」の邦題もいつしか『ノルウェイの森』に定着していったとあった。それでは私が77年に買ったビートルズのレコードの曲名に『ノルウェイの森』と書いてあったのはなんだったのだろうか。

調べもせずによくこんなことを書けるものである。村上春樹が『ノルウェイの森』を書くずっと前からビートルズのこの曲は日本では『ノルウェイの森』だったのであり、だからこそ村上春樹は小説の題名に選んだのだ。この小説が出たとき「ビートルズの曲名を題名にするなんてずるい」と思ったものだった。

さすがに今日ヤフーのニュースを見たら、その記述は削除されていた。ビートルズマニアから猛抗議が来たのに違いない。

『ベイツ・モーテル』

いよいよユニバーサルスタジオ訪問最大の目的であった、ヒッチコックの名画『サイコ』の舞台となったベイツ・モーテルだ。私は正直に言えば『サイコ』がそれほど怖いとも面白いとも思わないのだが、この映画の映画史における重要性、そのステイタスに憧れているという感じである。

映画の前半は、有名女優であるジャネット・リー扮する会社員が職場から大金を持ち逃げし、バレそうになりながらも豪雨の中、このベイツ・モーテルにたどり着く。観客はすっかり彼女に感情移入しハラハラドキドキだ。ここまでくれば追手は来ないだろうとやっとひと息つくと、彼女はまったく突然にこのモーテルの異常者に殺されてしまう。大金も横領もまったく無関係にだ。ここで初めて観客は、ここまでの話はどうでもよく、これから始る恐ろしい話の前振りにすぎなかったことに気がつくという仕掛けだ。心憎いまでの鮮やかなストーリー展開だ。

まあ、そういうわけで私はこのベイツ・モーテルが大好きなのだ。しかしこの写真を見て欲しい。なんと、ベイツ・モーテルの背後には緊張感のかけらもないオブジェが顔を出しているのだから腹立たしいではないか。私はバスから降りてこのモーテルの周りを歩いたり中に入ったりしたかったのだが、それは叶わず、バスは止まりもせずにスーッと通っただけだった。バスが通るのに合わせて、主人公のノーマン・ベイツのふりをした人がモーテルから女性の死体を運び出して車のトランクに詰めていた。バスはだいたい7分間隔ぐらいで運行していたから、この男は暑い中、一日に何十回もこの演技を繰り返しているのだろう。

こうして、夢にまで見た「ベイツ・モーテル」はあっさりと目の前を通り過ぎてしまったのだった。

住宅地

次にバスは住宅地に入った。まったく何の変哲もない住宅地だが、これはすべて映画のセットなので、そのデキを誇っているのだろう。芝生が異常にきれいで、最近枯れ気味の我が家の芝生のことを思い出して嫌な気持ちになった。いかにプロが育てているとはいえ、たかが肥料と水をやるだけのことの一体どこにコツがあってこんなに差がつくというのだろうか。芝生が黄色になりがちだったので焦ってしまい、「真っ青になる」という、年に4回までしか使ってはいけない肥料を連続でかけたのがまずかったのだろうか。

綺麗な住宅地のセットを見て、その綺麗さゆえに不愉快な気持ちになっている客がいるとは、さしものユニバーサルスタジオのプロデューサーも気がつくまいて。

ジョーズのいる池

お次は池に現れる人食い鮫、ご存知『ジョーズ』だ。

池の真ん中にいかにも人形らしく動かない潜水夫がいて、そこに鮫が近づくと潜水夫が激しく震え、やがて水面下にもぐってその周りの水が赤く染まる。足立さんによると、以前見たときはこの犠牲者は潜水夫ではなくて水着の女性だったというから豪勢である。

その後、一仕事終えたジョーズはバスの近くに来て顔を出したりするのだが、どうにも作り物っぽい。しかしよく考えてみると、本物の鮫がそもそもツルッとしたとらえどころのない作り物のような顔をしているのだから、私の感想は理不尽なものだったのかもしれない。しかし理由はどうあれ、苦笑するしかないのだった。

地下鉄での大地震

次はまたバスごとある建物に入って行き、なんという映画だか忘れたが、地下鉄で大地震が起きて洪水になるアトラクションだ。バスがちょうど電車のように地下鉄のホームに入っていくのだ。

私のユニバーサルスタジオの印象は実はこのアトラクションであり、以前からテレビなどで目にしていて、いつかは体験いたいとずっと思っていた。しかし結果は・・・いまひとつだった。地震のために壁が崩れたり火花が散ったりするのだが、いかにも作り物っぽく、怖くも面白くもなかった。足立さんも同じ意見だったので、何かが足りないのだろう。それとも3Dキングコングで我々の目が肥えたのだろうか。

メキシコの洪水

次にバスが停車をしたのは、古いメキシコのセットだ。こういう古いものは私は好きなので、自分の実家を思い出しながら働く農民たちを想像していたが、突然人工の雨が振り出した。なるほどと余裕で見ていると、遠くの方から大量の水が流れてくるではないか。

そしてご覧の通り道路は完全に冠水し、標識はなぎ倒され馬車も流されるという迫力であった。もちろんバスまでは水は来ないので心配ない。水が引いてから見ると、ちゃんと標識と馬車は動くようにレールが敷かれてあった。水が来る前にこのレールに気づいてストーリーを予想できなかったのがちょっと悔しい。

3Dキングコングの次に面白かったのがこれだったかもしれない。

『速いモーター』

次は自動車が炎に合わせて吹っ飛ぶ装置の見学だ。実際に吹っ飛ぶのではなくて、車体の下につながっている腕で車の動きを自在にコントロールして、さも吹っ飛んだように見せる装置なのだ。

映画ではこの装置での映像にCG加工をして、カーアクションを見せるのだろう。

最初は爆発で車が吹っ飛ぶデモンストレーションだったのだが、後半は音楽に合わせて2台の車が空中でコミカルに躍りだし、この装置の技術を誇っていた。

出口にはなぜか『速いモーター』と、トンチンカンな日本語が書いてあった。おそらく「高速マシン」とでも訳すべきものを直訳したのだろう。中途半端に日本語がわかる人しかいないとこうなるという良い例である。