ランゲルハンス島

糖尿病の検査の結果「ぎりぎり糖尿病です」と言われた。なかなか気の利いた表現にニヤリとした。ニヤリとしていられたのも、かなり軽度で、正常と糖尿病の中間である「境界型」なので治療の必要はなく、糖分や食事量を心持ち抑えればよいだけだということだからだ。

妻には「あれだけ毎日チョコレートやポテトチップスを虚ろな目で食べ続けていれば病気にならない方がおかしい」と言われた。まあ、妻の表現は誇張だが、甘いものが好きなのは確かだ。チョコレートは毎日食べるし時にはツブ餡の缶詰を買って食べるくらいだから、人並みとは言いがたい。

ネットで調べると、一度本当の糖尿病になってしまうと、もう治らないと怖いことが書いてあったので、今日からチョコレートもツブ餡も食べないことにした。チョコレートごときのために死ぬわけにはいかない。

初めて糖尿病を発見したのは、イギリスの医者トーマス・ウィリスで、1674年のことだという。トーマスは多尿症の研究をしていて、どうしても尿の成分を知りたくて患者の尿を舐め、それが甘いことから糖尿病を発見したという。

また、糖尿病がすい臓と関係があることを発見したのは、それから約200年後の1889年、ドイツの内科医オスカル・ミンコフスキとヨーゼフ・フォンメーリングだ。彼らが健康な犬のすい臓を除去するテストをしたところ(気の毒な犬だ)、何日かするとその犬の尿にハエが群がっていることに気づいて尿を調べ、すい臓と糖尿病に関係があることを突き止めたという。

現代の何をとってみても、先人の途方もない努力の上に成り立っていることを実感させられる。なんと我々は幸福な時代に生きているのだろうか。

ちなみに、ランゲルハンス島とは、血糖値をコントロールするのに重要な働きをするインスリンを分泌する、すい臓内の細胞群に、その発見者にちなんでつけられた名前である。まちがっても「そこに行ったことがある」などとはいわない方がよい。