世の中に卓球好きはいろいろあれど、大会を運営するのが大好きだという人は全国にも2、3人しかいないのではないだろうか。それがこの方、今野啓さんである。
もちろん自身も卓球をやっていたのだが、大学時代に重度のイップスになり、練習のロングサービスも入らず先輩から「ふざけてるのか!」と怒られる辛い思いをしたそうだ。そんな経験を経て中学校の先生になり、指導の傍らいつしか大会運営の面白さに目覚めたのだという。
その趣味が高じて今では宮城県中体連卓球専門部の委員長であり、来年、宮城県で行われる全中の大会組織委員長でもある。そのため、今では授業を持たずその大会の準備に専念する毎日であり、本人いわく「これで給料をいただけるなんてまさに天国」だそうだ。
そこで上映する映像作品の作成を依頼するため私と会ったのだが、準備してきた仕様書がすごい。未定部分が多いにもかからわず異様にきちっと書かれていて、この人がこういう書類を作るのが大好きであることがよくわかった。「自分が作った書類をファイルして眺めて悦に入っているんでしょう?」と聞くと「もちろんです!」と言っていた。私も卓球関係だけはそうなので気持ちはよくわかるのだ。
「こんな男はどこにもいないから、来年の全中はきっと前代未聞の素晴らしい大会になるよ」と同席した青山さんは語った。「絶対頭おかしいから」だそうだ。
持参したタブレットには卓球王国の記事がリストされてあり、ルール関係のページがスキャンされて整理されていた。ありがたいというか呆れた読者である(確かに頭おかしいかもしれない)。
今野さんは今週、世界ジュニア大会の審判をしに上海に行っているはずである。奥さんに話を切り出すとき「上海に旅行したくない?」と恐る恐る切り出したという恐妻家でもある。「ひとりで行ってきなよ」という答えを期待したと思うが二人で行く羽目になり、今頃、一流選手たちとの交流の誘惑と奥さんとの上海観光との狭間で悶絶しているはずである。