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明晰夢

明晰夢というのをご存知だろうか。てっきり、はっきりと見える夢のこと思っていたが、調べてみると、「これは夢だ」と自覚しながら見る夢のことだという。

初めて明晰夢を見たときのことははっきり覚えている。小学校5年ぐらいのことだ。私は家の前の川の橋の上に立っていて、そこでふと「これ、夢じゃないかよ」と気がついたのだ。それならいつもできないことを思い切ってやろうということで、川の中の石めがけて頭から飛び込んでやったのだった。それで目が覚めて、今後はいつでも夢だと気がついて怖い夢を怖がる必要もないし、夢の中で好きなことをやろうと思った。ところがそう簡単にはいかないもので、その後、明晰夢を見たのは数えるほどしかない。

それとは別に、異常にはっきりくっきりと映像を見ることができる夢というのがある。これは今まで2回だけ見たことがある。そのうちの1回が、つい最近で、しかも「これは夢だ」と思いながら見たので大変面白かった。

まず、夢のなかで「これは夢だな」と確信をした。それで、ひとつこの夢の映像がどれだけはっきりと見えているかチェックしてやろうと思った。そう思いながら目に映っている映像を見ると、覚醒時とまったく同じ精細さで見えている。目を大きく見開いて(夢の中でだ)、目の前にある花だの紙に書いてある図形だのをしっかりと見たのだが、夢にありがちな曖昧さは微塵もなかった。人間の脳とはなんと面白いのだろうか。

この夢の精度を後で確かめられるようにと、私は目の前の紙に書いてある図形を見ながら、鉛筆で丁寧に別の紙に図形をトレースしたのだ。もちろんこれも夢の中なので、そんなことをしても後で確かめることなどできないのだが、そこは夢の浅はかさである。

「はっきりと見えたような気がした夢を見た」のではない。夢の中で、覚醒時と寸分変わらない精細な映像を見たのだ。しかも夢だと自覚しながら。これをわざとできるようになったらものすごいことになるだろう。ハイビジョンどころではない、無限のコンテンツが無料で見られるのだ。

人間の脳にはこういう可能性があるので、あるはずのないものが見えたり聞こえたりすることなど当たり前のことだ(UFO、幽霊など)。

叔母さんから聞いた話。大学時代に同居していた友人が首吊り自殺をした。自分の布団の上で首を吊られたという。叔母さんは徹底した唯物論者だが、ショックは大きく、その日から一年間毎晩、目をつぶるとその友人の姿が現れたという。歩いていても後から呼ばれ、振り向くとその人がいて、来ている服の模様から差している傘まではっきりと見えるのだという。叔母さんは「人はこれを幽霊と言うんだ」と自分に言い聞かせながら睨み返すと、すーっと消えていくのだそうだ。すべて、自分の心理から起こる錯覚だったのだ。

幽霊を信じたい人は、この話を聞いても「それは本当の幽霊で、睨まれたから消えたんだよ」と言うことだろう。結局、人は自分の信じたいことしか信じないのだ。

悪いのは誰か

スピリチュアル・カウンセラーの江原がマスコミでたたかれ始めている。http://netallica.yahoo.co.jp/news/22877
まだ生存している人を死んだと思って霊視したのだという。これに対していろいろな意見があることと思う。以下の意見が考えられる。

?生霊を霊視しただけであり問題ない
?霊視はウソであり、江原は悪い奴だ
?霊視がウソなのは当たり前で、信じる人が悪い
?霊視がウソなのは当たり前で、いままでそれを肯定的に取り上げていたマスコミが悪い

?は論外として、私の考えは?と?である。そしてこの中でもっとも悪質な意見が?だと考える。作る方は騙そうとして作っているのだから、だまされるのは当然であり、したり顔で「そんなの信じる方がバカなんだよ」などとは絶対に言えないのだ。そしてこういう意見がもっとも根本的な?や?の意見を疎外していくのだ。インチキに対して「騙される方がバカだ」という意見が間違っていることは誰でもわかるだろう。悪いのはインチキを働いている張本人とそれを斡旋している者に決まっている。

マスコミは、オカルトを取り上げるときにはもう少し慎重になってほしいものだ。フィクションだとはっきり伝えるか、そうでなければそれが本物である証拠をつかんでから放送するべきだ(そんな証拠はないに決まっている)。科学離れが進んでいるといわれる現代日本だが、我々の社会は依然として自然科学を大前提として営まれている。

まず、社会を規定する法体系が自然科学に基づいている。だから犯罪に関して、霊視による目撃情報や念による犯行の可能性は考慮されないのだ。もし念力で物を動かすことができるのなら、もっとも軽い物質である電子など簡単に動かせるはずだ。そうすると、電気仕掛けの機械やコンピューターなど念力によって簡単に誤動作してしまうことになり、あぶなくて新幹線にものれないし、コンピューターによって巨額の取引が行われる証券市場も成り立たなくなる。世の中を動かしている側は、そういうことをわかっているのだ。わかっていない側だけがデタラメな情報に騙され、カモにされている。

超能力によるスプーン曲げを未だに信じている人もいる。それをやり始めたユリ・ゲラー自体が手品師だというのに。もし本当にスプーンを力学的な力以外の方法で曲げているなら、スプーンの曲げる部分を1cmだけ切り出したものを曲げてもらえばよい。テコの原理は力学の原理だから、もしこれでも曲げられるようなら本物である可能性は残る。こんなすぐに思いつくことすらしないで放送をするということは実はマスコミ側もそれらがインチキであることを知っているからなのだ。http://homepage3.nifty.com/hirorin/natasha.htmだからインチキ霊能力者と同じくらいに悪いのは、それを結果的に斡旋しているマスコミだ。まあ、黒木梨奈レベルの人がうようよしているんじゃ、それも仕方がないかもしれない。我々一般人がができることは、せいぜい騙されないように自分で予防することだけである。

神様の話

昨日、帰り際に上司のデビッドが神様について話し始めた。彼によると、聖書には、貧しい人たちのために収入の10%を教会に寄付するよう書いてあるのだと言う。それで彼は若い頃からずっと毎週175ドルづつ寄付をしていて、これまでの総額は大変な額になるという。てっきり、それで損をしたという話なのかと思って喜んで聞いているとそうではなくて、そのおかげで幸せだと言う話だった。

結婚もした、子供もいる、みんな健康だ、家もある、車も食べ物もある。望むものはすべて手に入った。教会に寄付した額をはるかに超える溢れんばかりの恩恵にあずかっているという(寄付したからではなくてまじめに働いたからだと思うが)。

日本にはそういう習慣はないのかと聞かれたので、日本人は形式は仏教や神道に入っていてもほとんどの人は神様を信じておらず、無宗教だといった。それで寄付と恩恵に似た制度として、年金制度について説明した。我ながら見事に論点を外したものだ(神様と年金の何を比較しようというのか)。深夜だったので疲れていたのだと思う。

デビットが神様の存在を信じるようになったのにはきっかけがある。20代の頃に仕事があまりに辛くて、辞めたかったのだが家族もいて辞めるに辞められない時期があったという。そこである日、神様に「助けてください」と祈ったのだそうだ。するとその翌日、今の会社からヘッド・ハンティングの電話があったのだそうだ。さらに同じ週にもう一社から誘いがあったという。これで神様の存在を確信したそうだ。

ひとしきり話が終わり、しばらくしてあらためて「死後の世界があると本当に信じているのか」と聞いてみた。デビッドは「ビリオン(10億)%信じている。それも永遠の世界だ」と言った。

アメリカ人の愛称

同僚のマイクとグレッグの本名が、それぞれマイケルとグレゴリーだと最近知った。何かの契約書を見たら書いてあったので、「誰よこれ」と聞いたら「俺だ」と言われた。電子メールのアドレスもマイクとグレッグなくせに、本名は違うのだ。聞いてみると、ほとんどのアメリカ人の「マイク」は実は「マイケル」だし「グレッグ」は「グレゴリー」なのだという(さすがにジョンはジョンだそうだ)。

マイケルがマイク、グレゴリーがグレッグならまだいい。ロバートがボブとはどういうことよ。ウイリアムはビルだそうだ。これはアメリカ人にとって(英語圏共通か?)常識なのだという。しかも誰に聞いてもその由来は知らない。

NASAが宇宙人の死体を隠しているというエリア51で働いていたとマスコミに名乗り出たロバート・ラザーという詐欺師がいる。後で何かの本を読んだらボブ・ラザーとなっていて、名前を間違えていると思った。後でロバートとボブの関係を知ったとき、「なるほど」と膝を打ったものだった。

我々日本人も見習って、利昭のあだ名をヤス、真一郎のあだ名をアッシーなどと決めてはどうだろう。覚えられなくて広まらないと思うが。

UFO話で思い出した。昨年の4月頃にガルフブリーズというところで卓球の試合に出たことがある。『ガルフブリーズ・オープン』という大会だったのだが、どうにも「ガルフブリーズ」という単語に聞き覚えがある。有名な観光地でもないし、世界選手権が開かれた都市でもないのにどうして聞き覚えがあるのかわからない。それでネットで検索したらわかった。

1987年に『ガルフブリーズ事件』といわれる有名なUFO目撃事件が起こった場所だったのだ。http://homepage3.nifty.com/hirorin/ufofakes1980.htm あんな有名な場所の近くに赴任することになるとは思っても見なかった。

行ってみたが、UFOがいそうなようすは感じられなかった。地元の卓球選手に聞いてみると、その噂を知っている人もいたのに嬉しくなった。何しろ『事件』といっても単なる狂言だったのだから。

築90年の家

よくものすごい回数引っ越した人の話を聞くことがあるが、私も普通の人よりは引っ越している方だろう。会社に入って5年間に5ヶ所に住んだのだ。もちろん記録を作ろうとか誰かから逃げようと思ったわけではない。そのときどきに理由があってのことだ(誰でもそうだと思うが)。

私は大学時代、親戚の家の庭にプレハブを建てさせてもらって、只で食事、洗濯をしてもらって7年間お世話になった。常に実家の監視下にあったので少々窮屈だったとはいえ、とても感謝している。それで、一人暮らしをしたことがなかったので、会社に入った年の7月にそこを出て、生れて初めてマンションで一人暮らしをはじめた。会社の人事からは寮に入るよう薦められたが、どうしても一人暮らしをしたかったのだ。時はバブル末期の89年で、洒落た感じの生活に浮ついたような満足感を覚えた。

それから1年たった頃、つげ義春の『李さん一家』というマンガを読んで、無性にボロ屋に住みたくなった。農家で育ったせいか、土とか古い木というものに愛着をおぼえるのだ。しかもボロ屋なら家賃も安いだろうし、いいこと尽くめだ。それでボロ屋を探そうとしたら、先の親戚が大家をやってたボロ一軒屋の一家が夜逃げをしたという。なんとタイミングのよい夜逃げだ。それで、そこに格安で入れてもらえることになった。望んでいた通りのボロ屋で、庭の土はへんに柔らかいし床は傾いていたし押入れからはなんともいえないカビ臭いにおいがして、大満足だった。夜逃げした人が置いていった荷物もそのままもらった。夜逃げをしたと知らずに訪ねてきた友達の女子高生を追い返したのもよい思い出だ。

その家に一年住んだ頃に、今度は結婚をすることになった。心機一転ということで、新居を探したのだが、私の考えは変わらず、妻と一緒にボロ屋を探しに不動産屋を回った(そのころはまだ妻は私の言うことを何でも聞いていた。今はことごとく反対である)。ある不動産屋で「古い家が好きで探している」と言うと、ありますよと一覧を出してくれた。そこにはなんと30年どころか、『築60年』とか『築80年』とか書いてある。私は「信じられない」と狂喜した。「こんなに古いのがあるんですか!」というと、女性店員が「そうなってしまうんですよ」と、こっちは喜んでいるのにすまなそうに言う。そのわりに家賃はさほど安いわけでもない。さすがにこれだけ古いとかえって維持費がかかるのだろうか。さらに見ていくと、『築90年』という物件があるではないか!「すげえ、ほぼ100年前の家か!」と思った直後、そうではなくて、1990年に建てられたという意味であることにやっと気がついたのだった。なんと紛らわしい。今でもこの不動産屋の表記はおかしいと思っている。

結局、そこでボロ屋を見つけて住んだのだが、2年ぐらいすると今度はどうしても卓球場がほしくなり(8/23参照)、家を建てて現在に至っている。結局、仙台市内にいながら5年間で5ヶ所に住んだことになり、友人からは「一体何をやっているんだ」と言われたが、事実はこういうことなのだ。4度の引越しのすべてを手伝わせた友人、杉浦君には申し訳ないことをしたと思っている。

それにしてもたった一話で、人に引越しまでさせてしまうつげ義春のマンガの力の凄いことよ。

『トリビアの泉』

4年ぐらい前になるだろうか。フジテレビの『トリビアの泉』制作担当という人からメールが来たことがある。以下がその全文だ。差出人の氏名は一部変更してある。

差出人: 黒木 梨奈
送信日時: 2004年9月27日月曜日 20:45
宛先: XXXXXXXXXXXXXXX
件名: 番組協力のお願い
今福 道夫様
突然申し分ありません。
フジテレビの「トリビアの泉」という番組製作を担当しています黒木と申します。
私どもの番組は視聴者からいただいたハガキを元に雑学を紹介する番組なのですが、今回「とても、派手な卓球がある」というおハガキをいただきまして、それについてリサーチしています。なにかご存知であれば教えていただきたいと思いご連絡させていただきました。
現在VTRとして、台の上にのったりする中国のエキシビジョンマッチの映像のみが手元にあるだけなのですが、詳しいことがわかっておりません。
お忙しいとは思いますが、よろしくお願いいたします。
日本テレワーク株式会社
品川区東品川X-XX-Xフジテレビ別館XF
03-XXXX-XXXX
黒木梨奈 090-XXXX-XXXX

どうだろう。なんと怪しいメールだろうか。まず、差出人名が怪しい。まるでAV女優のような名前だ。本当にこんな本名の人がいるのだろうか。それに今福道夫って誰よ。宛名を間違えているのだ。しかし内容からすると間違いなく私宛だ。たぶん、私が『日本超卓球協会』というサイトをやっているので、検索でヒットしたのだろう。日本卓球協会と間違えているのだ。それにしても、こんな情報だけでどうやって協力してほしいというのだろうか。第一、どうしてそのハガキをくれた本人に聞かないのか。電話番号が書いてあるところを見ると、東京まで電話をかけろということだろうか。

これは新手の詐欺に違いない。私はそう思った。しかし、ここからどうやってどんな詐欺行為に持ち込むのか見当がつかない。どう考えても詐欺の種類が思い浮かばないし、第一、本当に『トリビアの泉』かもしれない。それで、書いてあった携帯の電話番号に電話をした。すると、「今忙しいので後でかけなおす」と言われた。「さすがテレビ局、目が回るくらい忙しいんだろうな」と思ってドキドキして待っていると、そのままかかってこないではないか。人をバカにしている。不審感を募らせながら、今度は書いてあった会社に電話をかけて、黒木という人が本当にいるかどうかを確かめた。すると確かにいるという。

それから10日も経ってからまた黒木という人からメールが来た。今度は「総務の方に問い合わせされたようで」という前ふりの後に詳しい説明があった。そのハガキをくれた視聴者はネットで映像を見たのだが、探せなくなったというのだ。まあ、アクロバティックなショー卓球で台に上がったりするといえば80年代に活躍した中国の陳新華あたりだろう。携帯に電話をするとやっと本人が出た。話してみるとそそっかしい感じではあるが普通の人のようだった。黒木梨奈というのも本名だそうだ。陳新華の説明をして「映像を見れば選手名がはっきりわかるので送ってくれ」と伝えた。しばらくするとVHSテープが送られてきて、やはりそこには陳新華が映っていたが、封筒には、タニシだかヤドカリだかを研究しているどこかの大学教授に宛てたお礼の手紙が同封されていた。

あまりにひどい仕事ぶりなので「大丈夫でしょうか」と失礼なメールを出したのが最後である。企画もボツになったようだ。本当に大丈夫なのだろうかあの人。

『双眼鏡愛好会』

耳掃除で咳が出る人がどれくらいいるのか検索してみると、当たり前のようにいるようで驚いた。くしゃみに関しては、なんと『太陽とくしゃみ同盟』http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Gaien/3900/taiyou.htmlなどというサイトまであった。こういうことは「いろんな人がいて不思議だなあ」と思うにとどめておけば面白いのだが、ここまではっきりするとなんだか面白くないものだ。

2月に中国の広州に世界卓球選手権を見に行くことにした。中国に行くのも海外での世界選手権も初めてであり、卓球王国・中国でのものすごい歓声の中での観戦が今から楽しみだ。もう出場するような勢いである。ついでに卓球王国の取材陣として現地レポートだかブログ番外編だかをやることになっている。

目があまりよくないので、試合観戦のために双眼鏡を買おうとしている。それでサイト検索したら、おもしろいサイトを見つけた。http://binoculars.at.infoseek.co.jp/nyuumon1.htm『双眼鏡愛好会』というのだが、会でもなんでもなく、双眼鏡狂の人がひとりで作っているサイトだ(他人のことは言えないが)。双眼鏡の原理、高い双眼鏡と安い双眼鏡の違いなど、まったく素晴らしいサイトである。なかでも目からうろこが落ちたのは、双眼鏡の性能は倍率ではないということだ。10倍以上の双眼鏡は、明るさと手ぶれのために実用的ではなく、一流メーカーはそういう倍率の双眼鏡は決して作らないという。この人が信頼しているメーカーはカール・ツァイスというドイツのメーカーだ。双眼鏡の内側の反射を抑える処理など、偏執狂的に素晴らしいのだという。カメラ好きにはたまらないマニアックなサイトだろう。たかだか双眼鏡ひとつにここまで情熱をかけているところがすごい。

それで私もすっかり感化されて、ツァイスの双眼鏡を買うべく、オークションで安いのを探している。

いきなり生検かよ!

耳掃除をして咳が出る人などどこにいるのかと思っていたら、さっそく妻に友人から「私も出る」とメールがきたらしい。不思議だ。

06年の1月に人間ドックで、前立腺がんを検知できるという血液検査PSAを行った。普通は40代では前立腺がんなどないのだが、選択肢にあったのでつい丸をつけて受診してしまったのだ。すると、値が6.4であり、がんの可能性があるという。調べてみると、PSAが4~9の人は、25%の確率で前立腺がんだとある。心配性の妻が騒ぎはじめた。

仕方がないので病院に行くと、医者は露骨に困ったような顔をして「42歳で前立腺がんにかかった人がいたら学会で発表できるくらいだ。そもそもどうして受診したのか」などという。ほとんどありえないというのだ。次の検査をするかどうかは私次第だという。それは費用と時間によると答えると、F/T比という血液検査があるという。それなら手ごろな費用なので、後日それをすることになった。何週間かして結果を聞きに行くと、その値もがんの疑いのある悪い値を示しており、医者の態度がすっかり変わっていた。前立腺から直接針で細胞を採取して検査する、「生検」を勧めるという。その検査をするためには、費用もかかるし、2泊3日で病院に泊まらなくてはならないが仕方がない。

前立腺は直腸のすぐ前にあるので、直腸側から超音波による映像を見ながら8箇所ぐらいに針を刺して細胞を採取するのだ。針はほとんど痛くなかったが、肛門が痛かった。

がんといっても、前立腺がんの場合は早期発見すればほとんどそれで死ぬことはないあまり怖ろしくない病気らしいので、結構気楽だった。いたって健康体なのに大手をふって会社を休んで病院のベッドで好きなことをするというのは得がたい経験である。「魔太郎がくる!!」「おろち」「三つ目が通る」などという古いマンガ本を持っていってかわるがわる読みながらパソコンで卓球王国の原稿を書くのは本当に楽しかった。結局、がんは発見されなかったのだが、PSAの血液検査だけはときどきやったほうが良いといわれた。

それで昨年ドーサンに赴任して、10月にPSAの検査をやったところやはり高かった。医者は思うところがあるらしく、2週間分の薬をくれて、飲んだらまたPSAをやるという。それで検査をしてしばらく結果を待っていると、いきなり超音波検診の案内が来た。それで昨日行ってきたのだ。

すると、どうも様子がおかしい。超音波検診をするだけのはずのなのに、「今日の検査の後は、渡す薬を飲めばあとは普段どおりに生活していいが、重いものを持ち上げるのだけは2,3日控えなさい」などという。超音波検診だけなのにどうしてそんな注意をするのかと思い聞いてみると、なんと生検もするのだという。聞いてない。だいいち、まだPSAの結果さえ聞いていないではないか。

すると医者は、「PSAの値が6.1とまだ高いので生検をすることにした」という。というわけで、てっきり腹にゼリーを塗られて超音波映像を見るだけだと思っていたのに、行ったらその場で直腸に器具を入れられて生検されてしまったのだった。日本では2泊3日で手術のようにものものしい感じだったのが、ここアメリカでは行っていきなりブスッである。まるで体温計で体温を計るような気軽さだ。「さすがアメリカ、進んでいる」と思うことにした。

体質

私は太陽などまぶしい光を見るとくしゃみが出る。私の実家の家族は全員がそうだったので、誰でもそうなのだとばかり思っていた。それが違うと分かったのは結婚してからだ。私が太陽をみながらアフラアフラしているのを見て妻が「変だ」と言う。風邪気味のときには室内で蛍光灯を見てもくしゃみが出る。なにしろくしゃみをするのは気持ちがいいので、出そうなときには極力、出る方向に持っていくのだ。くしゃみの後で口内にひろがるしょっぱい味も楽しみのひとつだ。それで、歩いているときとか車を運転しているときに、突然太陽の方向を見ながら歩みをゆるめたり静止したりすることになる。確かにおかしいかもしれない。何年か前、念のために実家で母親に「太陽を見るとくしゃみが出るか」と聞いたところ「なにを当たり前のことを」と言われた。さもありなんだ。

また、私は炭酸飲料を勢いよく飲んだり極端に辛いものを食べると、しばらくしゃっくりが出る。妻が「気になるから止めて」と言うが好きでやっているわけではないので無理な注文だ。

そういう妻にも奇妙な体質がある。耳掃除をすると咳が出るのだ。これなど私にはとうてい考えられない異常なことに思えるのだが、おろらく全国にはそういう人は他にもいるのだろう。

くしゃみ、しゃっくり、咳とくれば残るはあくびだろう。私はいつでも好きなときにあくびを出す特技がある。方法は簡単、あくびをするように大口を開ければよいのだ。ほんの5秒くらい待つとすぐに本当のあくびがでる。そんなことが何の役に立つのかと思うだろうが大立ちだ。コンタクトレンズにゴミが入ったときに自由自在に涙を出して洗い流せるのである。まいったか(問題はあくびを出すための予備の5秒と本当のあくび合わせて10秒以上も大口を開け続けていなくてはならないことで、さすがに人前ではできない)。

体質ということでは、一昨年死んだ祖母の耳垢が湿っていたのを思い出す。調べてみると、日本人の16%が湿った耳垢であり、白人は90%以上が湿性なのだというから楽しいではないか。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%80%B3%E5%9E%A2
なお、湿性耳垢は優性遺伝なのだそうだ。もちろん、湿った耳垢の方が生物として優れているという意味ではない。遺伝の影響が個体に現れやすいという意味である。さらに、乾性耳垢は、皮膚がむけたものであり、湿性耳垢は、耳垢線というところから出る分泌物だという。調べてみるものだ。

アメリカの人形

今週、日本の材料メーカーの人たちが出張に来た。妻の知り合いでもあるので、我が家に来てもらって、卓球こそしなかったが楽しく語らった。

そのうちの一人が、子供にアメリカ製の遊戯カードを頼まれたとのことで、トイザラスに連れて行った。

そこでいろいろなオモチャを見たのだが、なんといっても凄いのが女の子用の人形の顔だ。我々の感覚からすると、どれもこれも異常にケバケバしく、日本の女の子ならもらったとたんに気持ちが悪くて泣きたくなるような顔なのだ。ところが、これがアメリカの女の子の間では絶大な人気があるのだという。こうなるのが彼女らの願望であり夢なのだろう。

ちなみに、ここいらでは、プレゼントをあげるときにはレシートをつけてやると喜ばれる。そうすると、気に入らないときには店に行って交換が換金ができるからだ。大手の店では、特に商品が壊れていなくても、ただ「気に入らない」というだけの理由で返却を受け付けている。

もちろん、故障もしょっちゅうだ。私が乾燥機を買ったときは、一緒に買わされた配管の直径が合わなかったし、電源の形も違っていて、配送してくれた人がその場で両方とも交換した。ところがスイッチを入れたとたんにガリガリと物凄い異音がして「壊れてるね」といわれた。いい加減にしてほしい。

ある日本人は、買ったガラス製品が割れていてクレームをつけに店に行ったら、その店に展示してある同じ製品も割れているので「ほら、こうなっているんだ」と示し、説明する手間が省けたという。喜んでいいのだろうか。

それで、とにかく店にはかなり大きな返却コーナーがあって、いつも人が並んでいる。最近はもう慣れてきて、1割ぐらいの確率で壊れていると思うことにしている。