仙台のワールドカップの最終日を観戦してきた。
よく卓球王国の記事で『全日本には魔物が棲んでいる』と書かれることがあるが、私は別の意味で試合会場には魔物が棲んでいると思う。
それは、観客の応援や拍手が終わって選手がサービスを出そうとして会場が静寂につつまれた瞬間に「がんばれっ!」と怒鳴るオヤジだ。本人は応援しているつもりだろうが、全然応援になっていないばかりか、間違いなく選手の集中力を乱している。
がんばれなどと言われるまでもなく頑張っているに決まっているのに「頑張れ」と、まるで勉強しろと言われても勉強しないグズな子供を叱るような調子で怒鳴るのだから不愉快極まりない。しかも、相手が外国人の場合、言葉がわかる日本選手だけが集中力を乱されるのだから、これはもう応援ではなくて明確に妨害である。
得点したときに喜んで怒鳴るのならまだしも、リードされていて苦しいときに「挽回!」とか「しっかり!」などと叱咤されるのだからたまったものではない。
ちなみに、石川と劉の決勝のとき、会場で一人だけ劉が得点したときに大声で中国語で叫んでいる太った男が観客席にいた。仙台在住の生きの良い中国人だろうと思って双眼鏡で見たら、なんと馬琳だった。ガクッ。蘇州での劉に対する粗相の埋め合わせだろうか(卓球王国7月号『劉詩雯涙の真実』参照)。
ともかく、選手に不利になるような独りよがりの叱咤は止めてほしい。本人は「俺の応援のおかげで勝った」ぐらいに思っているだろうから余計始末に負えない(そう思っていなくてはあんな応援はできない)。
もっとも、金を払って試合を見に来ているのだから選手が迷惑だろうが何だろうがストレス解消のために好きなように怒鳴るのだ、応援の形を借りた自己顕示欲の発露の場として卓球の大会を利用するのだ、ということなら仕方がない。プロ野球やサッカーの試合会場にいるどうしようもない観客と同じように、卓球にもそういう扱いが難しい観客がいるということであり、選手はネットやエッジ、あるいは会場に鳥や虫が迷い込んだのと同様に、避けられないアクシデントとして受け入れるしかないのだろう。
なんたる気の毒なことだろう。誰か近くの席の人、退治してくれないものだろうか。サービスを出すタイミング毎に親し気に話しかけるとか。「それにしてもアレですなあ、近年の日本女子は強いですなあ」などとどうでもよいことを試合中ずーっと。