そろそろまた『ザ・ファイナル』の撮影の裏話を書こう。
今回の作品は、とにかくエンタータイメント性を重視したので、見栄えのするラリーが期待できるカットマンを優先して撮影することをあらかじめ決めていた。撮影の一部を担当した編集部の高部さんが「あのう、なんかカットマンだらけになっちゃってますが・・・」と不安そうな顔をしたものだった。「大丈夫、続けてください」と言いながら何かとんでもない間違いをしでかしているような不安に駆られたことを白状しておく。
しかし結果としては素晴らしいラリーや偶然が生んだ珍プレーなど貴重なカットを撮影できたので、正しい作戦だったと思う。
常時4台のカメラを回したはよいが、ひとつの試合を複数のカメラで撮影した場合は同じラリーを捉えた映像が4種類あるわけで、編集のときに選択肢がありすぎて頭を悩ませた。いっそのことカメラが1台しかなかったらどんなに楽かと思うものの、素材があるからにはベストのものを選ばないわけにはいかない、そういう不思議なジレンマだ。困ったのは、角度の関係で映像にカウントが映っていないし審判のコールも不明瞭なので、プレーそのものからしかラリーを特定できないことだ。
まあ、そうやって悩むところがまたいかにも創作活動をしているようで楽しかったわけだが(家の者にはどうもそうは見えなかったらしい)。