年別アーカイブ: 2010

郭躍華対陳新華

ITTFのITTVのフォルクスワーゲンカップ2010のエキシビジョンマッチで、なんと郭躍華対陳新華をやっている!ふたりとも年老いてぶよぶよで見ていられない。しかし貴重は貴重だ。他にもセイブ兄弟の対決、松下対渋谷などの対決が見られる。
http://www.ittf.com/itTV/
(無料だが見るためには電子メールアドレスを登録してパスワードを受け取ることが必要)

また、まだアップはされていないが、まもなく、水谷がサムソノフを破った試合が見られるはずである。

綿矢りさ『インストール』

綿矢りさの『インストール』を読んでみた。勉強の意味もあるが、これほど有名な小説を読まないで済ますわけにもいくまい。

話は普通だったが、場面ごとの描写が面白かった。中でも声を出して笑ったのが、古いパソコンが起動して本体が震えたときの描写だ。

「その震え方は、昔親戚一同でカラオケBOXに行ったときに聴いたおじいちゃんのあの歌声、肺活量が弱ってる年寄りならではのあのビブラートがききすぎた歌声を私に思い出させた」

よくもこんな人を小バカにした面白い表現を考えたものだ。私も見習わなくてはならない。こんなところだけ面白がるっていうのもなんだが。

実はもう一ヶ所、グッとくるところがあったのだが、ここには書けない。興味のある方はご一読を。

インサニティの脅威

先日、ここドーサンの名物店である『ハンツ』というオイスターバーで宴会があった。オイスターとは牡蠣(かき)のことだが、意外にもここいらでは生牡蠣を出す店が結構ある。その中でも『ハンツ』はもっとも美味しいので有名だ。

実はハンツにはもうひとつ有名なものがある。とんでもなく辛い香辛料がおいてあるのだ。ハンツのオリジナルではないが、普通、ここまで辛いものは置いていないので、ここで飲み会をすると、いかに他人の料理にこっそりとこの香辛料を入れるかという戦いになる。この香辛料はその名も『INSANITY』つまり狂気という名前で、結構辛いものが好きな私でも、これをつま楊枝の先に1ミリほどつけたのをなめただけでしばらくは話もする気にならないほど辛い。

事情を知らない新入りには「これをつけると美味い」とだまして食べさせることになる。この日は淳くんがその犠牲となった。牡蠣につけて食べてたまらずトイレに駆け込んだが、そのすきに今度はビールに入れられ、そうとも知らずに辛さを和らげようとビールを飲んだが、飲めば飲むほど辛くなるのだからたまらない。策略に気がついたときはもう遅かった。写真左が、ビールを飲んで異常に気がついたときの様子。

写真中央は、ビール瓶をあてて唇を冷やしている様子だ。『INSANITY』は、辛いというよりは痛いのだ。それを触ってから目を触ったりトイレに行ったりすると大変なことになるという代物なのだ。それでも内容物を見ると唐辛子などとしか書いておらず、特別な人工的な化学物質が入っているわけではないようだ。唐辛子を濃縮するだけでここまで辛くなるというのは意外だ。

この日は、帰任が決まったアキラくんの送別会だったので、みんなでかわるがわる彼の料理やデザート、スプーンの裏、タバコ、はては上着の袖や襟にまで『INSANITY』を塗る始末だ。容量の小さい人なら本気で怒りそうな所業だ。用心深い人は一度も席を立たずにこの宴会を切り抜けたのだった。

ロンの体

それにしてもロンの体は凄い。こんなに筋肉があるのに卓球をこれほど熱心にするというのがなんともミスマッチで可笑しい。私が教えたことはちゃんと覚えていたのだが、いかんせん筋肉が多すぎてスイングの邪魔になっているように思える。なにしろ手や腕をとって形を示そうとしても、ものすごく堅くて腕や手首を動かせないのだ。たぶん筋肉が邪魔で動かないんだと思う。しかもチャックと同様、すごいのは上半身だけで、肝心の下半身が貧弱だ。卓球選手に必要な筋肉の正反対のような気がする。

先日会ってからどれくらい練習をしたのか聞くと「毎日やってる」とのこと。スタンによれば、ロンは練習のしすぎでフォームがめちゃくちゃになっていてどんどん下手になっているのだそうだ。申し訳ないが可笑しい。

結局、休みながら11時から6時くらいまで卓球をしてへとへとである。ロンもさすがに50を過ぎているからゼイゼイ言っているのだが、全身汗でずぶ濡れになりながら卓球をした。卓球場は我々3人の汗でまるでボクシングジムのような臭いが漂っていて(小学生の頃、近くの高校のボクシング部の練習場によく忍び込んだときに嗅いだ臭いだ)、妻が「臭くて入れない」と言っていた。

私は馬龍のバックハンドの連続写真を見てからそのマネに凝っていて、今日はそればかりやった。この歳になってもちょっとの刺激でまだ上達するのが楽しい。

飛行成功!

ロンの飛行機は何事もなく無事にフライトを終えた。ロンは飛行機仲間のエイドリアンという友人と一緒にドーサン空港に現れて、フロララ空港までの30分のフライトを楽しんだ。とても小さなボロボロの飛行機でかなり心配だったが、飛行は普通だった。ジェット機との大きな違いは、離陸があっという間だったことくらいだ。まだ自動車くらいの速度なのに数秒で離陸した。しかし急上昇というわけではなくて、ジェット機で感じられるような激しい上方への加速度はまったく感じられなかった。

飛行機の中はエンジン音で非常にうるさいので、3人ともヘッドフォンをしてマイクで会話をした。さすがに命がかかっているだけあって、離陸前にはチェックリストを見ながら何十個もの項目を二人で声を出して確認しあっていた。フライトの途中で、ロンが「後の席に俺が墜落したときの新聞記事があるから見ろ」とガハハと笑いながら言った(忘れてきたらしくて実際にはなかった)。

飛行機のほとんど最前列で前方を見たらさぞ感激するのかと思ったらそうではなくて、ジェット機の窓から外を見て「そっちに進んでいる」と思うのと違いはなかった。景色が動かないからなのだろう。運転席に座れば違うのだろうか。

飛行機は中古で250万円くらいで5人で共同で買ったという。ちなみに新品だとその10倍ほどだそうだ。空港の使用料は払わなくてもよく、無料だそうだ。

ロンに聞いたところによると、墜落したのは3年前で、離陸してまもなく故障のため急降下し、森に突っ込んだのだそうだ。墜落後、飛行機は火を噴いて炎が木の上まで上がったが、ロンと同乗者ふたりとも逃げて無事だったという。新聞には「奇跡の生還」と書かれたと得意気だ。足と腰にプレートを入れたが、病院を出て4日後にはもう飛行機に乗っていたという。「俺たちは転んでもすぐに起きて走る馬と同じだな」という英語の常套句なのかオリジナルなのかよくわからないことを言っていた。

ともかく、卓球をしていたおかげで珍しい経験をした。なお、エイドリアンは卓球をする人ではなかった。

愚劣なテープ

ここ数年、すっかり音楽に興味がなくなった。
学生時代はあれほどロックに入れ込んでいたのに、ある時期から、だんだんと音楽がうるさく感じられてきて、自分には音楽はまったく必要ではないという結論に達した。学生時代からその兆候はあった。当時から私は、音楽を聴くことは聴いていたが、その解説を読んだり語ることにより喜びを感じていて、自分が本当に音楽を必要としているかについてわずかに不安があった(実は卓球に対しても同じ不安がある)。だから、音楽を好きだというよりは、なんとなく芸術っぽい雰囲気が好きだっただけのような気がする。

こんなことを言ったら、昔から音楽をともに語り合っていた友人から「寂しいこと言うなよ」と言われたが、偽っても仕方がない。私には音楽は要らないものだったのだ。個人的な思い出と完全に結合してしまっているビートルズやニューオーダー、クラッシュ、ルースターズ以外はもう聴くこともないだろうと思い、テープやCD、ビデオを整理した。

それでなんとも愚劣なテープが出てきた。学生時代に私より一足先に就職した友人が送りつけてきたものだ。タイトルからわかるように、ロックの名曲にオリジナルの日本語の詩をつけて歌ったものだ。

東京GALS(竹村/フリップ)
サリーマン(竹村)
報復関税(竹村/バーン)
会社を辞めた(平山/マーリー)
ぼくら学生(竹村/クラプトン)
小判(竹村/レノン・マッカートニー)
胸いっぱいの愛を(竹村/ペイジ)
ブラック・ドッグ(竹村/ペイジ)
ドスケベ・アワノ(竹村)
ムネモミヤモト~フィナーレ(竹村/平山)

タイトルとクレジットを見るだけでバカバカしさが伝わってくる。キング・クリムゾンやトーキング・ヘッズの名曲が、変わり果てたコミックソングになった姿がここにある。これは友人が作ったテープだが、私も同じようなテープをたくさんつくっていて、就職してから職場の音楽好きの後輩にそれらのテープを聞かせたところ、なんだか私がものすごく楽しいことをしていたように感じたらしく「その手があったか。どうして俺もやらなかったんだろう」と悔しがっていた。しかし私はそれほど楽しかったわけではない。何かを残したいが、マシなことができないので仕方なしにこんなことをやっていたのであって、楽しみながらも「こんなことして何になるんだ」と虚しい気持ちが強かった。

20年経ってブログのネタになったので良しとしよう。

ロンの飛行機(遺書)

ロンから連絡が来て、先日の卓球の指導のお礼に、今度の土曜に自家用飛行機に乗せてくれるという。

興味はあるが、なにしろ一度墜落して腰と足にプレートが入っている人である。しかし、自家用飛行機に乗って下界を眺め回すなどということはまずないのだから、乗せてもらおうと思う。もし墜落するようなことがあったら、このブログを遺書にしたい。

編集部へ:
『奇天烈逆も~ション』の単行本を出してください。表紙は無表情のシャリフ。定価は一冊3万円。売り上げは全国の恵まれない卓球が下手な人にノイバウアーの『グリズリー』を寄付するのに充ててください。

ちなみに、フライトはドーサン空港からフロララまでであり、無事に着陸をしたら、そのままスタンの家で卓球をすることになっている。さて、どんなフライトになるだろうか。

恐るべき絵

先日、日本人赴任者の懇親会があった。例によってテーブルごとにチームに分けられ、商品をかけてゲームをやった。

その中で出た問題で「ドラゴンボールに登場するチャオズというキャラクターを描け」というのがあった。私はドラゴンボールもチャオズも知らないので早々に回答を諦め、同じチームでチャオズを知っているというF君に回答をまかせた。

その結果、F君が描いたのが下の絵(写真左)である。恐るべき面白さである。これは意図して描ける絵ではない。絵心がない人特有の思いっきりわけのわからない絵である。まったく表情のない案山子のような顔に、なぜか片方だけ引いた眉。動物とも昆虫ともつかない体。これが”チャオズを知っている”という人が描いた絵だろうか。わずかに頭にあったチャオズの印象が、彼の”チャオズ”の頭上に一本の線を引かせたところも泣かせる。

ちなみに、一昨年、同様の懇親会のゲームで「アルマジロを描け」という問題が出たとき、途方もないアルマジロ(写真右)を描いた人物こそF君その人である。くれぐれも中途半端に絵心をつけて、つまらない絵を描くようにならないでほしいものだ。

銀河宇宙人大百科『大宇宙人』

先日、ある日本人赴任者の家に遊びに行くと、奥さんが2冊の宇宙人本を見せてくれた。もちろんこれは、私がオカルト好きなのを知ってるからであって、誰にでも見せているわけではなかろう。なんでも、父親がそういうのが好きで、まだ幼稚園児の孫娘にこういう本を「読め」と送りつけてくるのだという。それを熟読した娘は、今では幼稚園でお絵かきの時間にUFOから降りてくる宇宙人の絵を書くまでになったという。

見せられた2冊のうち、1冊はどうしようもないデタラメだけの駄本であったが、もう1冊は、大変興味深い本だった。なにしろ題名が怪しい。『大宇宙人』である。しかも表紙のデザインが完全にふざけている。ビートルズのアルバム『サージェント・ペパーズ』のパロディになっているのだ。どうして宇宙人大百科の表紙でビートルズごっこをしなくてはならないのか。著者のところには「目黒宇宙人博物館編」とある。目黒にそんな博物館があるのかと奥付を見ると、著者は目黒卓朗という人で、目黒宇宙人博物館の館長だという。やっぱりそんなことか(笑)。

中を読んでみると、メチャクチャ怪しい宇宙人の目撃談ばかりである。頭がメロンの形をした宇宙人やら、ラベンダーが珍しくて凝視した宇宙人とか、それが何を意味しているのかさっぱり見当のつかない頭の痛くなるような話ばかりだ。

ところが面白いのはここからだ。各宇宙人の目撃例の後に「宇宙人基礎知識」というコラムがあるのだが、そこに書いてあることは完全に正しい知識、つまり、宇宙人の存在を否定するような話ばかりなのだ。チャネラーだのコンタクティーの話は信用できない、アダムスキーはデタラメ、ミステリーサークルやキャトルミューティレーションも超常現象ではない、といった、身も蓋もない話が極めて明解に冷たく書かれている。ふざけた表紙と頭の痛くなるような目撃談とは正反対の正確な情報が書かれているのだ。

もしかするとこの本は、一見、オカルトバカ本を装いながら、安易に宇宙人の話に飛びつくオカルトマニアに真実を教育することを目的とした啓蒙的な本なのではないだろうか。しかし「ジャガイモ袋そっくりの宇宙人」の話の後で「エリア51の話はウソ」などと書いて、果たして効き目はあるのだろうか。なにしろこの二つの話、まったく並列に書かれているので、どちらか片方だけを疑う理由はないのだ。だから読者は、エリア51に宇宙人の死体が隠されている話はウソだけど、ジャガイモ袋そっくりの宇宙人の話は本当だと思うしかない。・・・なんだが、エリア51の方がまだマシのような気がする。

ロンの話

さて、この日一緒に卓球をしたロンの話だ。私は彼とは初対面だったが、とにかく熱心な人だった。外見も52歳には見えない若さだ。卓球は初心者だが、その情熱はあふれんばかりで、私が何か教えると、持参したICレコーダーに語りかけて録音をし、私のアドバイスを忘れないよう努めていた。ここまでされると喜ばないわけには行かない。指導にもいよいよ熱が入る。

郁美さんにると、ロンは不動産だかレンタルだかの仕事で儲けていて、ミリオネラーだというから、何億円もお金があるのだろう。スポーツもスキューバーダイビングや格闘技の経験があり、さらに自家用セスナを持っているのだそうだ。それで何年か前、墜落してし死にそうになり、足腰にはプレートが入っていると言う(アメリカ人って本当にこんな奴ばかりのようである)。パイロットの免許とは珍しいので見せてもらうと、ライト兄弟から始まる飛行機の歴史を感じさせる粋な免許証だった。

卓球の何がロンをこれほどまでにひきつけるのかわからないが、とにかくロンは週に3回はスタンに電話をかけてきて卓球の話をするという。ただ、彼の問題点は、アドバイスをすぐに忘れることだという。私のアドバイスもビデオに撮ったり録音していたようだが、果たして次に会うまで覚えているだろうか。何一つ覚えてなかったらどうしよう。なんだか怖い。