古本屋で超能力の本を買って読んだ。私は以前は超能力の実在を信じている、いわゆるビリーバーであったが、その後、いろいろな本を読んで、今ではその存在に極めて懐疑的である。しかし、もともとはオカルトは大好きなので、存在して欲しいのはやまやまだが、入ってくる情報から判断すると、残念ながら現時点ではあるとは言い難いと思っている。
この本は、超能力懐疑派である皆神龍太郎氏と、超心理学研究者の石川幹人氏による対談形式の本である。懐疑派と研究者の対談であるが、この両者は超能力の実在について推測が反対であるが、いずれにしても科学的に真実を突き止めたいという目標は同じなので、別に喧嘩をしているわけではない。ただ、懐疑派の皆神氏が、研究者の石川氏に素朴な疑問を投げかけ、石川氏はそれに答えながら超心理学の歴史や現状について説明をしている。
石川氏によると、日本で科学的に超能力を研究している研究者は今のところ3人で、世界中あわせても100人ちょっとだという(もちろんまともではない研究者なら山のようにいるだろう)。
気になるのは、これまでの「まとも」な研究者が確認した超能力現象はあるのかないのか、という疑問だが、石川氏によればそれは「ある」が、その効果は、透視や予知といった、情報知覚のテストでごくわずかに見られる程度で、念力は「ない」という。
情報知覚のテストでは、偶然なら25%的中するテストで、33%に的中率が上がる、といったごくごく地味な効果が膨大なテストで見られるというものであり、それですら再現性には議論があり、まして何かに利用できるようなレベルのものは確認されていないという。
対談で皆神氏が言っていたことでなるほどと思ったのは、100年以上もの超能力の科学的研究がされてきて、いまだに上のようなごく地味なものしか確認されていないわけだから、仮にそれが実在するとしても、その威力はこのレベルが上限であって、よくインチキ超能力者がやるようにスプーンを曲げたり、行方不明の人を捜し当てたりといった超能力はまずないだろうということだ。ただし石川氏は、多人数の能力を合わせることでその地味な能力を実用化することも視野に入れて研究を続けている。
地味とはいえ、石川氏の実験で興味をそそったのは、被験者がヘビとかクモなどの不愉快な画像を見せられる3秒くらい前に体に変化が起こり「悪い予感」を感知しているとか、911のテロ事件のあった日だけ、コンピューターの乱数がある自己相関を示したという例だ。もちろんそのメカニズムはまったくわかっていないから現時点ではまるで雲をつかむような話である。
超能力の研究というものが、どれほど気の遠くなるような地味なものであるか(それほど多くのテストを繰り返さないと偶然以上の効果が観測されない)、著者のウエブサイトを覗いてみるのもよいだろう。
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/