女子の銅メダルが確定して本当に嬉しい。よくドイツ戦の敗戦のショックから立ち直ったものだ。中総体の地区予選で負けてさえあれほど悔しいのに、毎日12時間も練習したあげく準決勝でドイツに負ける口惜しさなど想像もつかない。心からおめでとうと言いたい。
ところでオリンピックの報道を見ていると、特に女子についてチームワークの良さが取り沙汰されている。
卓球を知らない人からすれば「個人競技なのに何のチームワークが必要なの?」と思うだろう。
チームワークと言えば中学校のときにクラスのある女子と論争をしたことを今でも覚えてる。彼女はバレーボール部だったが、卓球はバレーとは違ってチームワークは要らないからその点は楽だろうと言ったのだ。愚かだった私は悪口を言われたような気がして言った。
「いや、卓球でも必要だ。ダブルスなんか特に」
「でもダブルスだけでしょ」
「シングルスでも団体戦があるから必要だ」
「でも試合は一人でやるんでしょ?なんで?」
「なんでもだ!」
という具合に最後まで私は卓球にチームワークが必要だと言い張ったのだった。
今なら言える。
卓球にはチームワークは要らない。ただ自分が勝つことだけを考えればそれでよい。
卓球の団体戦で勝つのに有利に働く人間関係とは、お互いに「こいつなら勝ってくれるだろう」という実力に対する信頼感だ。それがあることによって気が楽になって自分が良いプレーができるわけだ。
卓球に必要なのは、心が一つだとかチームメートの考えがわかるとか仲が良いとかではなく
「敵にしたら憎らしいほど強いが味方にしたらこれほど頼もしい奴はいない」
とお互いに思えることだ。このような信頼感が勝利を導く。
勝つために必要な人間関係をチームワークと定義するならこれが卓球のチームワークと言えよう。
ベンチで応援するとか相手の弱点をアドバイスするとか勝って泣いて抱き合うなど、そんなことはあまりにも当たり前すぎてわざわざチームワークなどと言うほどのことではない。勝ちたいんだから誰でもやる。
前回のロンドンも今回のリオも、日本女子チームは、まさに私が上に書いた意味でのチームワークが素晴らしいから勝ったのであり、見えているものとは全然違う種類の強烈なチームワークが勝利を裏から支えているのだ。
ロンドンで銀メダルを獲った後の全日本選手権で、福原が早めに負けて、石川が優勝したときの記者会見で、明らかに卓球を知らない記者が「福原選手の分まで頑張りましたか?」と石川に質問した。ロンドンでチームメートだったものだから国内でも仲間だと思い込んでいるのだ。
石川は冷静に「国内ではライバルなのでそういうことはありません」と正確に答えた。
マスコミが日本女子チームのチームワークの良さを強調するのは、その方が感動物語として都合が良いからにすぎない。可愛らしい3人娘の心のつながりは「こうならいいな」という大衆の願望なのだ。卓球のためにはそれに乗るのもいいが、本当の意味の恐ろしいまでの「チームワーク」もそれはそれで奥深い卓球の世界なので、たまには触れてもらいたいものだ。
まあ無理だろうな(笑)。