今日は高校の卓球部のOB会に参加してきた。OB会といっても仙台支部の開催で、最後に開催したのが20代のときだから20年以上ぶりの開催だ。
ここで人生初の珍しい体験をした。参加者のOさんという先輩と激しい口論になり、おしぼりを投げつけられ、酒を顔にかけられ、最後には雑炊をかけられるに至ったのだ。
私は常々、芸術家などがこういう激しいコミュニケーションをしたという逸話を聞くと、自分にはそういう魂のぶつかり合いのような激しいつき合いができないことに、どこかコンプレックスを感じていたので、今回の経験で人間の器がちょっとだけ大きくなったような気がして誇らしい気持ちになっている。ただ酒や雑炊をかけられただけのことなので別にどうということもないわけだが、誰でも経験できることではないので、今後、随所で自慢してやるつもりだ。
事の顛末はこうだ。今回のOB会を設定してくれたOさんが、Kくんという後輩がOB会に参加できなくなったことにいたく腹を立てているという。そもそもKくんは隣県の岩手県在住であり、仙台支部のOB会にわざわざ来る義理はなかったのだが「できれば参加する」と言っていたのが、ちょっと前に参加できないことになり「済みませんが今回は参加できません」とOさんに連絡をしたのだ。しかしこのOB会のためにいろいろと準備をしていたOさんの目にはこれがあまりにもあっさりとした不参加連絡に映り「理由ぐらい言えよ」といきなり攻撃的な論調になってしまった。一方Kくんにしてみれば、たかが飲み会に参加できなくなったぐらいのことでなぜそこまで問い詰められなくてはならないのかという論調になり、以来、二人は険悪な関係になっているというのが、この飲み会に至る事情であった。
こういう揉め事は私は大好きなので、いっちょ審判をしてやろうとさっそくフェイスブックでの二人のやりとりを見せてもらったところ、私の判定は「完全にOさんのクロ」であった。「Kくんに謝ってください。謝らないのなら私は支部長(今回Oさんから任命された)の権限であなたを仙台支部から除名しますのでもう来ないでください」と言ってやったのだ。
私は学生時代から、先輩だというだけで後輩に生意気な態度をとったり、酒だのお酌だのを強要する世間の風潮を腹に据えかねていたので、ここぞとばかりにまくし立てたのだった。
それでなくとも既に激高しているOさんにそんなことを言ったものだから、Oさんの怒りは尋常ではなく、上記の状況となったわけである。とはいえOさんにも理性は残っており、コップなどの硬い物は投げてこなかったし雑炊は冷えていたし殴ることもしなかったので、私としては安心して最低限の防御をしつつ批判を続けることができたわけだ。その点はOさんの理性を信じていた。
最後にはあわやテーブルをひっくり返す「星一徹状態」になりかけ、周りのメンバーから「店の迷惑になるので二人で外でやってください」と言われてちょうど飲み放題の3時間となり店を後にした。
Oさんはトイレで放尿をしたのを境に何事もなかったかのように穏やかになり、全員で2次会のカラオケに繰り出したのだったが、誰も一曲も歌うことなく続きの話をして最後には笑顔で握手をして別れたのであった。こういうことがあるから人生は面白い。
もちろん私は自説を変えるつもりは毛頭ない。今後Oさんと会う場合には、きわめて温厚かつ冷静かつ丁寧に、Kくんに謝ることを何年かけても説得し続けるつもりだ。謝るまではこれ以外の話をするつもりはない。
迎えに来させた息子の車の中で全身についた飯粒を剥がして食べながらそう固く決意をした土曜の深夜であった。