NHKのドラマ「あまちゃん」で、岩手の方言「じぇじぇ」がなにかと話題になっている。私は岩手出身だがかなり南側の奥州市出身なので「じぇじぇ」は知らないが、同類と思われる「じゃじゃ」というのはよく知っている。
子供心にも、大人たちが使うこのいかにも根拠がなさそうなデタラメっぽい方言をユモーラスかつ不思議に感じていたのだが、あるとき、その由来について結論を出した。
これは標準語の「いや」の転訛なのだ。奥州市で「じゃじゃ」を使うときは、たとえば他人の家に遊びに行って思いがけず料理を出されたときなどに「じゃじゃー」と恐れ入ったように言う。あるいはまた、誰かが酒酔い運転で警察に捕まったと聞いたときなど「じゃ、だらしない奴だな」などと言う。そしてこれは子供はあまり使わない、どちらかというと分別臭い大人の言葉である。このときに我々が体感するニュアンスは、標準語の「いや」あるいは「いやいや」にかなり近い。音にも共通点がある。だから私は「じゃ」は「いや」が訛ったものだと結論づけていた。「いや」と同じだから「じゃ」と1回だけのときもあるし「じゃじゃじゃ」と3回言うときもあるし「じゃー」と伸ばすときもある。
もちろん、これまでこんな「学説」を披露する場はなかった。奥州市以外で使われているかどうかもわからない方言の由来を解説する場などあるわけもない。
「あまちゃん」で役者たちが使う「じぇ」の発音の仕方にはとても違和感がある。何の感情もない音をただ発しているのでとってつけた無意味な言葉に聞こえるのだ。「いや」と同じつもりで発音をすればより自然になるものと思われる。標準語で「いや」「いやいや」と言うとき、ちょっとあごを引いて下の前歯を出すように下唇を横に広げ気味にするだろう。音程も少し下げ気味になる。「ゲゲッ?」のように尻上がりに発音することは絶対にない。そういうところも含めて私は「じゃ」が「いや」と同じものであると結論している。
「じぇじぇ」についても同じ起源かどうかは、久慈に知り合いがいないのでなんとも言えないが、さてどうだろうか。