先ほど、NHKスペシャルの宣伝を見た。1台がときに何億円もするストラディヴァリウスというバイオリンの秘密を探るという。
番組ではストラディバリウスと他のバイオリンの音を紹介していた。もちろん私にはその違いはまったくわからなかったが、なんと、専門家が聞き比べても違いはほとんどわからないのだという。二つのバイオリンでブラインドテストをすると、専門家でもその正答率は高い人で50%ぐらいなのだという。
これはすごい。二つにひとつの実験で正答率が50%ということは、まったく、少しもわからないということだ。それに、高い人で50%というのも不可解である。これは専門家の正答率が低い方に偏っているということであり、偶然以上の確率で、ストラディバリウスではない方のバイオリンをストラディバリウスだと誤認するということを示している。
もうこれは番組成立の根幹にかかわる大問題だと思うのだが、番組では平然と「バイオリンの出す音を科学的に調べてその秘密を探る」などと続けるのだ。違いがわかっても、それに何の意味もないという結論がとっくに出ているのに、測定をするのだ。しかも、普通はバイオリンの音は直接耳に入る音と、壁などに反射してから耳に入る音が混じって聞こえるが、それだと違いがわかりにくいので、反射音がない特殊な部屋で、マイクを8カ所に設置して、その音の出方を徹底分析するという。これは、ラバーを貼った状態ではラケットの違いがまったくわからないので、ラバーを剥がしてラケットの表面8カ所に振動計をつけて打球をして違いを測定するようなものだろう。
この実験で番組としていったいどんな結論を出すのか、本編を見るのが今から楽しみでならない。