まだあるのか、と思う人もいるだろうが、残念ながらあるのだ。
今回のは、これまで発表したものとはかなり趣が異なる。高2のある夜、友達が家に来ているときに急に思いついて、その日のうちに撮影した、これが最初のビートルズごっこなのだ。
だから人数も3人だし、服装も扮装も間に合わせで、何から何まで準備不足である。モデルとなる具体的な写真もなく、なんとなくビートルズ風にした、いわゆるイメージ写真なのだ。
その中で、どういう工夫をしているかが見所である。まず私はジョン・レノンの神性を表現しようとして敷布を体にまとっているのだがミイラのようになってしまっている。ジョン・レノンといえば丸メガネだが、そんなものはないので、鼻とヒゲのくっついたプラスチックのおもちゃのメガネから鼻を外して使った。
その鼻とヒゲを弟につけてリンゴをやらせたのだが、鼻が落ちそうなので物凄い形相になっている。「絶対に落とすな」と厳命したため、このような表情になっていたのだが、これは計算外であった。「お兄ちゃん、もうダメだ」「うるせー、いいから落とすな!」とやりとりしたことを覚えている。頭には婆さんのカツラをつけている。
ポール役の友人には、まずセロテープを目じりに貼って「痛い痛い」と言われながら思いっきり下のほうに引っぱり、ポールのタレ目を表現した。あごひげは、学生帽の頭をくりぬいて即席で作りセロテープでアゴに貼った。こいつの顔がなんとも脂ぎっていて、セロテープがすぐに剥がれるのだ。それで、べらぼうに長く後の方まで貼ってやった。
誰に撮影してもらったかは覚えていないがおそらく家人だろう。これだけで、とても良いことを思いついたと興奮したことを覚えている。それで、次は時間をかけて準備をしてサージェントペパーズの扮装になるわけである。
嫌々つき合わされている二人とは対照的に、ジョン・レノンのキリリと引き締まった知的な顔(写真右)を真似して完全に本気になっている私が本当に恥ずかしい。