例の韓国雑貨店でめずらしい缶詰を見つけた。缶に印刷されてある写真を見ると、どう見ても何かのサナギのようだ。書かれていた英語を辞書で引いてみるとやはりサナギだった。私はサナギは食べたことがないが、写真を見ると、なにかイカの燻製のような色合いで、食べなくても味が想像できる。美味いに決まっている。鍋に入れて湯気を立てている写真が念入りで楽しい。
こういうものは気の持ちようである。海老などまるっきり昆虫と同じだし、蛙だって鶏肉と変わらない味だった。わたしはいわゆる青虫などは嫌いだが、蚕(かいこ)はきらいどころか可愛いと思う。小学校の頃、実家で養蚕をやっていた時期があるのだ。金になると思うと、気持ち悪いどころか「がんばってくれよ」というような気持ちになって、何匹もまとめて掌にのせてなでていたりした(ひんやりしていたな)。蚕を飼っている部屋に入ると、何万匹もの蚕が桑を食べる音が「ザーッ」と部屋中に響き渡るのが、当たり前とはいえ凄いと思った。
繭を作る時期になると、4cm四方ぐらいの格子が10×10ぐらいならんだ紙製の枠に蚕を一掴み置く。するとうまい具合に格子に一匹づつ蚕が入って、体を反らしながら口から糸を吐いて繭を作り始める。何日かすると完全に真っ白な繭ができ、あとはそれを棒で抜いて出荷するのだ。中のサナギはどうなったのか覚えていない。煮ていたような気もするし、繭を裂いていたような気もする。
毛虫と蚕の違いといえば毛だが、一概に毛があるから気持ちが悪いというわけでもない。杉崎君は何年か前の年賀状に「俺の可愛さランキング」というのを書いてきた。それによると、「猫>子供>ハムスター>亀」だそうだ。当時は息子が生れたばかりで情が移っていなかったようだが、さすがに今では一番だという。毛が生えている点で猫に軍配が上がったそうだ。