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360度3Dキングコング

ビル街のセットの次は、世界初とうたわれていた360度3Dのキングコングのアトラクションだ。左の写真のように、バスごとトンネルに入って停車し、バスの左右の壁に3D映像が映し出されると、もうバスが原始時代に迷い込んだかのようだ。目も当てられない大きさの恐竜たちがギャーギャーと戦いあっている。事前に配られた偏光メガネをかけると物凄い迫力だ。「あいつらこっちに来るんだろうな」と思っていると案の定、恐竜たちはバスに気がついてやってくるのだが、正義の味方であるキングコングが助けにきて恐竜たちと戦い始める。途中で恐竜やらキングコングやらがバスの上をまたいだり投げ飛ばされたりしてバスの左右を行ったり来たりする。しまいにはバスごと谷底に落ちていき、すんでのところで助けられるという短いストーリーだ。なお、ストーリーはうろ覚えなので違ったかもしれない。

時間にすればおそらく3分ほどのような気もするが、映像に合わせてバスは揺れて、とにかくリアルでまったく楽しい見世物だった。結果的にこれがダントツに面白いアトラクションであり、唯一、もう一度体験したいと思ったものだ。絶対にお勧めだ。

その後は、いろんな映画で使用した後の自動車の展示があり、私の大好きな『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に使われたデロリアン号だったかも置いてあった。

スタジオツアー

まずはスタジオツアーに参加した。実際の映画で使われる屋外セットや使用済みの小物などをバスの中から見られるものであり、当然これは世界中にあるユニバーサルスタジオの中でも、ここハリウッドにしかないアトラクションだ。そもそも私は、このアトラクションでヒッチコックの『サイコ』に使われた「ベイツ・モーテル」のセットを見たくてユニバーサルスタジオに来たのだ。

このツアーはずっとバスに乗ったままで45分かけてさまざまなセットを次から次へと見ることができる。ニューヨークの町並みあり、ちょっと古い感じのヨーロッパありで、映画のためだけに立てられたとは思えないほどちゃんと作られている。

かと思えば、右の写真のようにビルを絵で描いてあったりもする。

ユニバーサルスタジオ

足立さんはユニバーサルスタジオには昔行ったことがあるにもかかわらず、一日つきあってくれることになった。今回私は、時間がないので、すべてのアトラクションを列に並ばずに最優先で入れる130ドルもする特別券を買ったのだが、付き合ってもらう足立さんにも買ってもらわなくてはならず、申し訳なかった。

それにしてもこの券の威力は絶大で、明らかに何百人も並んでいる人たちを横目に見ながら、最前列に入れるのだ。アトラクションによっては入り口も違う。この券のおかげで、開催時間を待つことはあっても列に並ぶことはまったくなく、一日ですべてのアトラクションをまわることができた。これがなかったら半分も見られなかっただろう。

通常の券の2倍の値段ではあるが、これから行く「アトラクションを楽しみたい人」にとっては、お勧めである。どうして「アトラクションを楽しみたい人」などと当り前のことを書いたかというと、それは追々説明する(見当がついたかな?)。

足立さんの家

卓球をした後はもう夜中だったので、足立さんのご自宅に向かい、すぐに寝た。

翌朝、奥さんが作った半熟目玉焼きをマフィンの上に乗せた朝食をいただき、いよいよロス観光の本命である、ユニバーサルスタジオへと向かうことになった。

写真は足立さんのご自宅だ。通りの様子は日本の住宅地と変わらない印象だ。お約束どおり車庫には卓球台があり、奥さんが物干しをするときにいろいろな物を置くのに使っていた。当然のように卓球マシンもあった。

MAXさん

ロスの卓球クラブには、足立さんの他にもうひとり日本人がいた。
本名はわからないが、通称MAXさんと呼ばれている人で、なんと彼はジャスポのサイトでラバーのモニターをやっているという。
http://blog.jasupo.jp/?eid=99215

読んでみると確かにテナジーFXの感想を書いていた。
しかしテナジーの感想よりも驚いたのは、この人の用具に対する並々ならぬこだわりだ。テナジーは50枚以上使っていて、パッケージ込みの重量とラバーカット後の重量の関係まで頭に入っているという(つまり、店頭でパッケージごと計ればラケットに貼ったときの重量が予想できるということだ)。「05、64、25全ての特性に熟知して」いるらしいので、まるでメーカーの人のようだ。

遠くアメリカにこういうマニアの人がいると思うと嬉しくなる。

ちなみに、私はMAXさんとは試合をしなかったが、見る限りでは、投げ上げしゃがみこみサービスを初めとして、なに一つ普通のサービスを出さない超個性的な卓球で、いかにも試合をしたくないと思わせる卓球だった。この特殊な選手のモニター結果が一般人の参考になるのかと心配になったほどであった。

残念ながら記念写真を撮るのは忘れた。マークに負けたショックで、その後の写真撮影をすべて忘れてしまい、マークもMAXさんもコーチの王さんも写真は載せられないのだ。

小日向文世

ロサンゼルスのレンタルビデオ屋で買った7作の映画DVDのうち、実に3作に出演していた男がいる。小日向文世だ。コミカルな役から冷酷な役までなんと存在感のある俳優だろう。『20世紀少年』『それでもボクはやってない』『ザ・マジックアワー』に出ていた。まったくあきれた俳優だ。こういう人はもう最高に好きである。

ちなみに、買ったDVDで面白かったのは三谷幸喜の『ザ・マジックアワー』はもちろんだが、その他には周防正行の『それでもボクはやってない』と黒沢清の『トウキョウソナタ』が面白かった。さすがだ。この3人の作品には外れというものがない。

マークの卓球

足立さんが撮ってくれた試合のビデオの背景にマークの卓球が映っていた。

これを見てやっと彼の卓球の全容がわかってきた。なんと彼はバックサイドのボールはシーミラーグリップでちゃんとドライブをかけているのだ。かなりラケットを高く振り上げている。しかも、台上のフォアミドルのボールはあろうことかシーミラーグリップのバックハンドでチキータのような打ち方をしている。そのテイクバックが左の写真だ。どおりでどう打たれたのか記憶にないわけだ。ラリー中はボールばかり見ているので、あんまり珍しい打ち方をされると、何をされたのかよくわからないものなのだ。

さらに、マークのフォアドライブの異常さも判明した。一応、テイクバックは体も回しているようだ(中央の写真)。腕を思いっきり背中に引いているのはいいのだが、フォロースルーが凄い。インパクトで極端にラケットヘッドを回して直後に腕の振りを止め、肩の下あたりまでしかラケットを振らないのだ(右の写真)。顔の下あたりに赤く見えるのがラケットで、これがフィニッシュの位置なのだ。これでちゃんと回転がかかっていて両サイドに入れられるのだからたまらない。こんなんだから、いったいどんなボールを打たれてどうやって点を取られたのかよくわからなかったのだ。

これでボールが入るから凄いと思うが、入らなければ間違いなく「だからヘタなんだな」と思うだろう。彼の打ち方を見て実力を判断できる人が果たしているのか、興味深いところだ。村上力さんなら分かるかも知れない。彼は”正しいフォーム”という卓球の常識の外で卓球をしてきた人のためか、日本にもときどきいるこういう変な格好で強い人を初見でちゃんと「これは手ごわい」と判断できるのだ。

マークとの試合で地獄を見る

リーグ戦の結果は2勝1敗で、1敗は王さんの一番弟子という20代と思われる青年に2-3で負けた。取ったゲームもサービスのごまかしとネットやエッジの幸運であり、もう一度やったら1-3か0-3で負けるだろう。悔しかったがまあこんなものだ。

その後、リーグ戦の結果に応じてトーナメントが始まり、そこで1度勝った後、恐ろしい目にあった。

試合をした相手は見たところ大変なおじいさんで、文字通り歩くのがやっとの人だった。ボールを拾うのにも辛そうにゆっくり拾うし、ラリーをするとまるっきりの初心者に見える。フォアはラケットヘッドを立てて押すだけだし、バックにいたってはヘッドを立てたまま腕をひねってそのままフォア面で打つのだ。アメリカの70年代の名選手、ダニー・シーミラーの卓球だ。冗談じゃない。しかも片面はアンチ。この辺りで気づくべきだったのだが、不覚にも私は油断どころか、試合をするのが申し訳ない気持ちで一杯であった。

試合を始めると、サービスの回転が微妙にわからず、ちょっと浮く。なにしろバックサーブもフォア面で出すのだ。すると、ボールも拾えなかったはずなのに3球目をフォアで回って打つではないか。しかもバックの思いっきり厳しいところだ。さすがに球威はないので「あんな打ち方でよく入ったもんだな」などと思いながらブロックをすると次のボールは目も当てられない逆モーションでバックサイドをぶち抜かれた。初心者によくあるわけのわからないバカ当たりだろうと、まだ私は思っていた。

私のサーブの番になったが全然効かない。アンチ面で受けているわけでもないのに全部取られるのだ。腕と手首だけの奇妙なドライブが回転がちゃんとかかっていて、それが嫌なところに入りしかもミスがない。フォームが奇妙なのでいつ打たれてもまるで不意打ちをされたようで反応できない。打たれた後も、どう打たれたのかよく思い出せないのだ。さらに要所でなんとも不快なアンチ。それであれよと言う間に2ゲームを取られてしまった。

こりゃいかんと思って全攻撃モードで必死にやってやっと1ゲームを返したが、その過程でバックからクロスやミドルを狙った全力スマッシュを前陣でフォアに3本ぐらい抜かれる。シーミラーグリップなので、ミドルのボールまで当たり前のようにビッチリ前陣でブロックするのだ。「まいったな」とちょっと照れ隠しをした笑みを浮かべながら球を拾いに行き、内心は「なんだこれは」と動揺を隠せない。

結局1-3で負けてしまった。負けてもなお私はこのおじいさんが強いことを認められず、これは何かの間違いで、自分が不甲斐ない卓球をしたのだろうと思っていた。ところが試合の後でこのマークという人にレーティングを聞くと2080だというではないか。私より強かったのだ。しかも彼はこの日来ていた全メンバーの中でもっとも強く、私がリーグ戦で負けた若者にも勝ち越すほどの強者だったのだ。年を聞くと61歳だという。ガーンと頭を殴られたようなショックだった。

私が驚いていると周りの人は「知らなかったの?」と言うではないか。誰も教えてくれなかったのだから知るわけがない。そうとわかっていればもう少しやりようがあったかもしれないと思うと、悔しさがつのる。それにしても卓球は奥深い。歩くのもやっとの人に、やり方によっては若者が負けてしまうのだ。

足立さんによると、彼がボールを拾うときに辛そうにするのは作戦だという。本当だろうか。さらに足立さんが「老人っぽい長めの半ズボンを履いているのも作戦だと思う」と言ったのが妙に可笑しかった。一体、そんな作戦があるんだろうか。

足立さんの卓球

卓球台が10台ほど置いてある部屋に行き、いよいよ足立さんと初手合わせとなった。足立さんは長年、平均寿命が58歳という激務の商社に勤めていて、それを辞めて、今は別の日本の貿易関係の会社の米国支部を一人でやっている。卓球は中学生のときにやって以来ずっとやっていなくて、つい4年ほど前に再開したという。足立さんが中学生のときは長谷川信彦と伊藤繁雄が現役のときで、地元の北九州に来て模範試合をするのを見たという。それがもっとも新しい記憶だというのだから驚く。当然、郭躍華も知らなければ孔令輝も知らないのだ。さすがにワルドナーは今でもたびたび話題になるので最近知ったという。

それで、話をしていると、ちょっとしたタイムマシンを経験するような面白さがある。河野満やベンクソンあたりまでも話はできるのだが、ちょっと油断をするとすぐに荘則棟とか木村興治の話になるのだ。

足立さんの戦型は右ペン裏ソフト攻撃型で、もうひとつ通っているクラブを含めると週に3日は練習しているという。王さんの個人コーチも受けているだけあって、まったく古さを感じさせない卓球だった。特にバックのショートは金擇洙ばりの”フォアハンドと同じ腰の回転を使った弾くようなショート”で、足立さんが中学生のときにはまだ世界のどこにも存在していなかった技術だ。

試合は私の勝ちだったが、サービスの回転でごまかしただけであり、基本技術ではまったく対等に思われた。

ウエストサイド卓球クラブ

いよいよ足立さんの通っているというウエストサイド卓球クラブに到着した。ちょっと通りから奥に入ったところにあったので専用の卓球場かと思ったが、そうではなくてもともとはフェンシングの練習場で、時間によって卓球クラブが借りているということだった。なので、会場の看板にはtable tennisの文字はない。

中はかなり広く、二つの部屋に分かれていて、片方の部屋には卓球台が一台だけ出してあり、そこでこのクラブのコーチである、王巍(Wang Wei)さんという女性が時間性で個人コーチをしていた。王さんは中国のナショナルチームにいた人で、それほど有名ではないが、千葉やエーテボリにも出場していた。引退後は96年アトランタ五輪にアメリカ代表で出場している。足立さんの言うとおり、ものすごく優しそうで感じの良い人だった。私は中国の指導に興味があったので、さっそく素振りの重要性について聞いてみた。すると、中国でも素振りは大切な練習で、フォームができあがる最初の2年ほどは毎日させるという。日本では国の代表クラスの選手にとっても素振りが重要だと考える人がいるが、中国ではどうかと聞くとそれはなく、素振りをさせるのはあくまで初心者の段階だけだという。思ったとおりだ。

写真は王さんの個人コーチの方の部屋だ。肝心の王さんの写真を撮り損ねた。