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卓球部の飲み会

昨夜は、会社を辞める人を卓球部として送る送別会だった。

当然、卓球の話ばかりだったのだが、例によって3番弟子の小室が卓球狂ぶりを発揮していた。一人暮らしをしている後輩を気遣って「飯はどうしてるの?」と質問をしたのだが、その時の彼の手はしっかりとペンのバックショートの形をしており、話の内容とまったく一致していないのであった。あまりに面白かったので、その場で再現をしてもらった。とても食事の用意について質問をしているようには見えない。

他に面白かった話題は、他のチームの選手で、サービスの時に奇妙な儀式をする人がいるという話だ。私もその人は見たことがないのだが、聞いたところによるとその儀式はざっと次のようなものだ。

まずボールを拾ってくるのだが、一度そのボールは短パンの左ポケットに入れるらしい。そしてコートにつくとまず左手を台の表面にこすって汗をぬぐう。このためにボールはポケットに入れてあるのだ。それでボールをポケットから取り出して構えに入るのだが、ボールを手に乗せたままなぜか手を体に近づけたり遠ざけたりを何往復かするのだという。次に手を顔の高さまで上げていよいよトスするのかと思いきや、また台の高さにまで下げてそこからトスをしてやっと打球するのだという。これを一度や二度ではなく1ゲームに10回、それを5ゲームも続けられた日にはたまらなくイライラして、それだけで精神が乱されて負けてしまうこともしばしばだという。最初は「奇妙だな」と思うだけなのだが、試合が進行するにつれてその動作は念入りに遅くなっていくように感じられ、とても我慢できるものではないそうだ。しかもレシーブの構えの時にはお尻をクイックイッと左右に振るのだそうだから、その不愉快さたるや想像するに余りある。

あまりに面白い話なので、今度試合を見に行こうと思っている。

ちなみにその人はわざと相手をイライラさせようとしてそんな儀式をやっているのではないそうだ。そんなことをしなさそうな、とっても良い人なのだそうな。卓球界は広い。

子供たちの驚き

この春、大学生になった子供たちが朝から「お父さん、すごい!」と歓声を上げた。

「こんなに髪が短いのに寝ぐせがついてる!」

余計なお世話である。他に驚くことはないのだろうか。こっちはあと2週間ちょっとに迫った世界選手権の取材の準備態勢に入っているのだ(気持ちだけだが)。

「わっかりました」

私は他人の話し方の癖が気になるので、なるべく自分は癖を持たないように努力しているのだが、そのせいか、いつも話し方に抑揚がないと言われる。その抑揚がないところが癖になってしまっているという皮肉な結果だ。自分ではどこがそうなのかさっぱりわからないが「面白いですね」と言うときも全然面白くなさそうだというのだ。とくに今野編集長からはいつも「無感動な感じで話していても暖簾に腕押し、糠に釘」と言われる。まあ、今野さんのギャグは本当に面白くない場合もしばしばなので仕方がないのだが、ともかくそのように聞こえるらしい。

癖を持たないようにするだけではなく、流行りの言葉や言い回しも身に着けないようにしている。軽薄に聞こえるからだ。そんな私もかつて一度だけ、知らぬ間に流行りの影響を受けてしまっていたことがある。仕事で返事をするときの「わっかりました」だ。若干の心の迷い、逡巡を持ちながらもそれらを飲み込んでとりあえず承諾するニュアンスをもつ言い方で、難しい判断をしたふりというか何かを犠牲にして承諾している雰囲気を醸し出すというか、まあ、要するにカッコつけた言い方なのだ。私は世の中にはびこっているこの流行りに気づかずに使っていて、あるとき会社の先輩に返事をしたとき「何その”わっかりました”っていうの。どういうつもりでそんな言い方してるの?」と問い詰められたのだ。その先輩も流行りの影響を受けるのが嫌いな人で、周りの誰もが私のことを条太と呼ぶのに一人だけ何年も伊藤と呼び続けるつわものだったから、その道では秘かに尊敬をしていたのだった。

その先輩に指摘されたことを私は深く恥じ、それ以来、一度も使ったことはないが、他人の「わっかりました」が気になって仕方がなくなったことは言うまでもない。このブログの読者にもその気持ちをおすそ分けというか道連れにしてやろうと思う。

しょっぱなから聞き返す人

そんな人がいると言っても信じてもらえないかもしれないが、こちらが何か話しかけると、最初の1、2音で「えっ?」と聞き返す人がいるのだ。そのタイミングでは聞こえていても意味がわからないはずである。なんたる反射神経と判断の速さだろうか。

たとえば「小林さん、この前の件ですけど・・」と話しかけたとすると「こば」ぐらいで「えっ?」と言われるのだ。

「話聞けよ」と内心カリカリしてしまうのは言うまでもない。

聞き返す人

ロダンの「考える人」ではなく「聞き返す人」である(彫刻にもならない)。

以前、アメリカにいたときに銀行の日本語の電話案内で、こちらが何を言っても「はいっ?」と返事をする人のことを書いた。英語と日本語の混乱と無駄なヤル気が入り混じって、結果的に奇妙なアクセントが身についてしまった人である(最初はそれがわからず、名前から要件からすべて3回づつくらい説明をする羽目になった)。

この人よりはマシだが、日本に帰ってからも、何を話しかけても第一声は必ず「えっ?」「んっ?」「はいっ?」などと聞き返す知人を二人発見した。最初は耳が聞こえないのかと思ったが、その後の会話の様子から、どう考えても正常に聞こえている。それがわかってからは私は聞き返されても言い直さずに黙ることにしているのだが、会話に支障が出たことは一度もない。こちらが言ったことは聞こえていて待っているとちゃんと正しく答えるのだ。つまり、誰かに話しかけられたらとりあえず聞き返すことが癖になっているだけなのだ。

私は「聞こえているくせに聞き返す」という行為を見るのが嫌で仕方がないので、最近ではこの二人に話しかける際には細心の注意を払い、絶対に聞き返されないように、極めて明瞭にゆーっくりと話しかけることで、聞き返されることを逃れている。この技術については私の右に出る者はいないと思う(それでも会話中に聞き返されるので油断は禁物である)。というか、他の人たちは気にならないらしく、何度も何度も聞き返されては言い直している。

さて、みなさんの周りにもこういう人はいないだろうか。

偽作曲家騒動

別人が作曲をしていたという騒動が世間を賑わせている。

この騒動を通して私が思ったことは、クラシックという音楽の置かれた状況についてだ。それは、今やクラシックは、音楽そのものの魅力だけではなくて、その他の物語がなくては売れない物であるということだ。確かに、今まで佐村河内氏の音楽がよいと思って感動をしていた人たちは裏切られたと思っているだろう。しかしそれはもちろん、音楽のクオリティそのものにはなんら関係のないことである。今回の事件で佐村河内氏の「音楽」に対する評価が変わった人は、結局、音楽の良し悪しがわかって聴いていたわけではないということなのだ。

そうでないのなら「作品そのものにはなんら罪はない。経緯はどうあれ、新垣氏の生み出した音楽の魅力は永遠に輝き続ける。自分はあの楽曲群をずっと聴き続ける」とでもいう論陣を張る者が出てこなくてはおかしい。

クラシックとは、ごく一部の鑑賞能力のある人にしかわからず、その他大勢の人たちは彼らの評価をうのみにするかまたは付随する物語やステイタスによってしかその音楽性を評価できない「芸術」だということなのだ。

オペラについても似たようなことがいえる。スター番組で一夜にして有名になったスーザン・ボイル、ポール・ポッツといった人たちが歌ったのがポップスではなかったことは偶然ではない。オペラならポップスと違って外見の影響を受けずに歌唱力だけで評価をされるからだろうか。それだけではない。オペラは、現代ではそれほどポピュラーではないために、一定以上の歌唱力があればその良し悪しは大衆にはわからない音楽だから「一夜にして無名からスターダムになった」という感動的な物語が効率よく作用したのだ。確かに私もスーザンとポールの声は良いと思う。しかし、その他のオペラ歌手より特別良いかどうかはまったくわからない。聴いたことがないし、聞いてもわからないだろう。

こういうことがあるのは音楽だけではない。味だけではなく、その値段やステイタスで選択されることが多いワイン、酒、高級料理もそうだ。わかる人が少ないからこそ利き酒大会があり、芸能人が高いものと安いものを判別できるかどうかの番組も成り立つ。本当に味だけで価値を判断される大衆料理やジャンクフードではそれらは成り立たないし「専門家」の意見がどうあれ、誰でも自分が好きなものを選ぶだろう。「天然物を使っているこのカップラーメンこそ本当に旨いのだ」という専門家の意見は、最初に買うときこそ参考にしたとしても、食べてみて旨くなければ二度と買うことはない。これらは味だけで自分で判断するべきものと認識されているからだ。

世の中に値段が高くておいしいものは数あるが、それらのなかで「高い」「貴重だ」という付加価値を外してなお、ラーメンやソース焼きそば、カレーライス、餃子と戦える料理がどれだけあるだろうか。私にはそのような料理はとうてい思いつかない。こんなに旨いものを安く食べられる我々はなんと幸せなのだろうか。

いやすっかり話がそれたが、物事の価値というものについて、そんなことをあらためて思い起こさせられた偽作曲家事件であった。

同様の考察をラケットやラバーについてもしてみると面白そうだが、ちょっと怖くもあるから止めておこう。

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