卓球王国最新号(6月21日発売)では宮崎義仁強化本部長(6月19日に専務理事に就任)にインタビューを行っている。
「最近、WTTの試合が行われるようになり、毎週のように世界ランキングが発表されていますが、これだけWTTの試合をやったら、選考会ではなく、以前のように世界ランキングによって代表を選ぼうということはないのですか?」という問いに、宮崎本部長は「今のところ、世界ランキングで決めることはないです」と即答している。
WTTはテニスのグランドスラムと言える4大会(グランドスマッシュ)を頂点にして、その次のWTTカップファイナル(2大会)、WTTチャンピオン(8大会)、WTTスターコンテンダー(6大会)、WTTコンテンダー(14大会以内)をWTTイベントとして行っていこうとしている。年内に開催が決まっているのは現時点でコンテンダー(2大会)と7月のグランドスマッシュ(ハンガリー・ブダペスト)だったが、ブダペストのグランドスマッシュは大会開催の3週間前にして、WTTチャンピオンとWTTスターコンテンダーに格下げされることが発表された。
それまでITTFの「ワールドツアープラチナ」「ワールドツアー」は年間十数大会ほど開催されていたが、現在は国際大会を大きく変えるはずのWTTがまだ機能していない状態だ。日本卓球協会の強化本部が大会が少ない中での世界ランキングに不信感を抱いたのも理解できる。また、WTTイベントは出場エントリーの条件が厳しいために若手を送り込むことが難しい仕組みになっていて、若い選手はポイントの低いWTTフィーダーやWTTユースに出ていくしかない。
ただし、これらのWTTイベントが開催され、国内選考会も実施されるとなると日本代表クラスの選手にとっては相当タフなスケジュールになる。しかし、スケジュールがタフになるから、WTTに出場しないで国内選考会だけに絞ろうという選手はいない。本気で五輪を狙う選手たちは例外なく、世界ランキングを上げて本戦でメダルを狙うため、選考会に出ながら出場資格のあるWTTに挑戦することになる。
パリ五輪の本大会でのシードはチームランキングやシングルスの世界ランキングで決まる。国内選考会重視の選手選考により、世界ランキングと食い違う選手が五輪に出るようになると、シード権への影響が予想できる。その点を宮﨑本部長に聞いてみた。
「それは覚悟しています。2年間かけて国際大会に出ていたら本当に、強い選手はトップ選手に値するし、選考基準にはアジア競技大会、アジア選手権、世界選手権のポイントも加味されるので、ランキング100位以下の選手が代表になるとは考えられない。結局、実力のある選手が代表になると思っています」。(卓球王国8月号より・6月21日発売)
合計6回の選考会とビッグゲームでのポイントを積算していけば、宮崎氏が言うように強い選手に淘汰されていく可能性は高いだろう。とは言え、世界ランキングの上位の日本選手と違う五輪代表が決定する可能性も出てくる。
それが本大会のシードに関係してくるとなると、現場で指揮を執る監督やコーチとしてはやきもきするだろう。今までのように世界ランキング上位2名という選考方法であれば、それは団体のシードに直結する。逆に日本男子で世界ランキング上位者でない選手が五輪代表に選ばれ、チームランキング4位以内に入らなければ(現時点でも5位)、五輪本戦で準々決勝で中国と対戦する確率は25%あるし、メダルに絡む準決勝進出のハードルは高くなる。
宮崎氏も卓球王国のインタビューで指摘しているように、WTTがもっと計画的に大会を開催していれば、このような混乱は生まれなかった。WTTの不確実な試合日程、不安定な組織と世界ランキング。一方で、世界ランキングが関係しない国内選考会。
その狭間(はざま)で選手たちは揺れ動いている。いつの時代でも五輪の日本代表の選出方法に正解はなく、完璧なやり方は存在しないことが今回の選考方法からも見てとれる。
卓球王国最新号6月21日発売号
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