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インタビュー

卓球を知り、卓球を描き続ける男。肌で感じたインターハイの迫力

8月に北海道札幌市で行われたインターハイ・卓球競技。競技初日の会場の片隅で、選手たちのプレーに真剣な眼差しを向ける加治佐修の姿があった。

 加治佐の職業は漫画家。現在、高校卓球を舞台にした卓球漫画『スリースター』をマンガ配信サービス『サイコミ』で連載中だ。今年12月で連載開始から5年を迎え、発売された単行本もすでに12巻を数える。これまでも数多くの卓球漫画が発表されてきたが、その中でも広く支持される、息の長い連載になっている。

 

★マンガ配信サービス『サイコミ』で『スリースター』を読む

 

現在連載中の『スリースター』では、主人公の水野司が在学する都立千星高校がインターハイの東京都予選に挑む姿を描いている加治佐。彼らが目指すインターハイの本選の雰囲気をまず知っておきたいと、仕事の合間を縫って札幌を訪れた。

会場で取材した大会1日目は、学校対抗1・2回戦が進行する。序盤とはいえ、厳しい予選を通過して出場権を手にした全国の代表校が、1日でおよそ3分の1の16校まで絞られる。悔し涙と歓喜のガッツポーズが交錯する、大会のひとつのハイライトだ。

「やっぱり迫力がすごいです。今、この一瞬にかける選手たちのエネルギーは本当にとんでもないですね。応援も全力で声を出していて、まるで音が降ってくるみたいです」。初めて訪れたインターハイ会場の雰囲気について、そう語る加治佐。フロアから沸き上がる声、観客席から降り注ぐ声に全身を掴まれるようなあの感覚は、会場のフロアに立った者しかわからないかもしれない。

 

ベンチや観客席から大声援が送られるインターハイの学校対抗(写真は熊本・慶誠高のベンチ)

 

そして漫画家としての加治佐の眼差しは、テレビでの中継や動画では映らない、会場のさまざまなディテール(細部)にも注がれていく。審判の動きや、審判が使っている得点板などの道具、大会本部にはどのような人が座っているか。ベンチの選手や監督はどのように動いているか。

「たとえばゲーム間には、ドリンクを用意する選手もいれば、団扇(うちわ)であおぐ選手もいる。監督さんもベンチの端に座る方もいれば、真ん中に座る方もいる。チームによって違いますね。次に試合に出る選手が、どのあたりでアップをしているのかも見ることができました」(加治佐)

これまでTリーグや社会人の大会は取材してきたが、改めて「今この時」に懸ける高校生たちのプレーに魅力を感じたという加治佐。ちなみに最も印象に残ったのは、学校対抗2回戦で全日本ジュニア王者の萩原啓至とゲームオールの熱戦を展開した、専大北上高のカット型・佐藤颯太。「私もカット型だったので、萩原くんを追い詰めた佐藤くんのプレーは見ていて興奮しましたね。そして初戦でまだ調子が上がらない中でも、最後に勝ち切った萩原くんは、さすが王者の風格だなと思います」。

 

インターハイ男子学校対抗の2回戦で、苦戦しながらも勝ち切る強さを見せた全日本ジュニア王者・萩原啓至(愛工大名電高)

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