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今野の眼

Tリーグの灯を消すな。Tリーグの観客数に誰がどれだけ危機感を持っているのか

 

SNS上での炎上。本質的な問題は、
「Tリーグの観客数」であり、
「宣伝を含めた集客と運営の実体」

Tリーグの観客数や運営のことで、SNS上では激しいメッセージの応酬があった。そこに意見を述べる人たちは、もっと「Tリーグがよくなってほしい、多くの人に卓球を見てほしい」という純粋な思いにあふれている。その表現の違いによって摩擦が生まれたとも言える。
ここでの本質的な問題は、「Tリーグの観客数」であり、その「宣伝を含めた集客と運営の実体」である。今季の開幕戦では男子で1103人、女子では2333人で、その後は観客数が千人を超える試合はない。200人から400人の間の観客数になり、25日の男子の木下マイスター対T.T彩たまの試合では191人という観客数だった。

選手も頑張っている、試合のレベルも低くはない。各チームも観客動員のためにあの手この手を使っているように見えるが、一方、もともとチームを維持していくのにも手がかかるために手が回っていない、マンパワー不足は否めない。
Tリーグの試合を開催、運営する際には相当の経費がかかる。現在は(ホーム&アウェイ方式の)各ホームチームが費用を負担し、収入もホームチームに入ってくる。Tリーグが負担し、収益になるのはセントラル方式(男子3試合・女子4試合)と言われる試合のみ。
リーグの最初の2シーズンの運営、プロモーションはほとんどがTリーグが一括してやっていたが、3年目からは各チームが負担している。
一部のチーム(会社)事情もあり、「プロリーグ」と標榜できないTリーグだが、実質的にはプロの選手が試合に出る「プロリーグ」だ。もちろんそこにはエンターテイメント性も必要だし、「魅せる」ことを意識しなければいけない。チケットを購入して来場した人に楽しさを与える義務もあるだろう。

ただし、この「楽しさ」は個人的な差異があるために、音楽であったり、音量であったり、照明ひとつでも「楽しい」「快適」と感じる人もいれば、「不快」「うるさい」と感じる人もいる。
ドイツなどのブンデスリーガ経験者、観戦経験者からすれば「もっと鳴り物やビールを解禁すべきだ」という声も多く聞くし、一方で「もっと静かに試合そのものを見たい」という声もある。
「何がベストのプロリーグなのか、見せ方なのか」という答えはないが、「観客数」は突きつけられたひとつの答えでもある。ワクワクしながら会場に足を運ぼうとする人数が少ないのが現実的な問題である。

 

今季のTリーグ開幕戦、琉球アスティーダ対岡山リベッツの試合(東京・大田区総合体育館)

 

 

今のままではスポンサーも
離れてしまう。
これはTリーグの問題ではなく、
卓球界の問題として考えよう

今回のSNS上での一件は計らずも、Tリーグの問題点をあぶりだした結果になった。2018年、すべての卓球ファンの熱い思いを乗せて、Tリーグはスタートした。その結果、多くのトップ選手は「プロとして活躍する場」を手に入れることになった。それによってチームの監督・コーチもプロとしての場を確保でき、日本にプロ卓球の市場が醸成されるきっかけになった。
だが、観客が200人、300人という試合が続いたとして、各チームのスポンサーは長くチームを支援してくれるのだろうか。

スポンサーは純粋にチームの情熱に応える形で金銭的なサポートをする会社や個人もいれば、会社名、ブランド名を広く知ってもらうためにスポンサー料という形でお金を拠出する会社もある。
いろいろな形でスポンサー名が露出することでスポンサーは費用対効果として納得しているのだが、露出が少なく、観客が少ないリーグであれば、チームやリーグをサポートしようという理由付けが薄れることになる。
チーム数が思うように増えない理由は、日本リーグとの「合体リーグ」が進まないだけではなく、新たに参入しようとするチーム(会社)が1億円、2億円とも言われる参戦のための出費と、リーグの露出や宣伝効果が見合わないと考えているのかもしれない。もしこの観客数での試合が続いてしまうと、新規参入チームがそこに「参戦する意義」を見つけるのは難しい。チーム数が増えない、もしくは減少していくのは卓球ファンにとっても悲しいことで、卓球のプロを目指す子どもたちも増えてはいかないだろう。

 

正直に言えば、歴史のある最高峰プロリーグのドイツ・ブンデスリーガでも観客を集められるチームは少ない。チームがスポンサーやチケット収入で集められるお金もTリーグのチームが使う費用と比べたらはるかに小さい。しかし、その試合は熱い。それは単なる歴史という言葉では片付けられない。地域に根ざしたリーグ、「おらが町のチーム」への思いだ。
Tリーグの良さは、卓球人気を追い風に、一般の方、卓球をやったことのない人も会場に足を運んでいる点だろう。
リーグ発足の1年目、2年目はリーグは観客動員に動いた。もちろんチームの動員もあった。あるチームは母体の会社の社員にチケットを配り、応援団を形成していた。平均観客数も男女とも千人を超えていた。その後、コロナ禍によって観客の動員はなくなった。だが、今季、入場制限がなくなると同時に、チーム(会社)での観客動員もなくなっている。そうなると、今季が初めての「実質的なTリーグの観客」とも言える。

 

「コロナだから……」という言い訳はもはや意味がない。200人、300人という観客数を直視しなければいけない。我々メディアが「Tリーグに行こうぜ」と呼びかけるのも限界はあるだろう。
今、Tリーグの真価が問われている。これだけのハイレベルな卓球のプレーを見ることができるリーグ、その競技レベルはまさに世界最高峰なのだ。だからこそ、そのTリーグの灯を消してはいけない。
リーグ自体が、もしくはチーム自体がどういうプロモーションをやるのか。そこに子どもたちが夢を抱き、卓球を知らない人でも興奮させる空間があればTリーグは続いていける。リーグ関係者、チーム関係者がどこまで危機感を抱いているのだろう。見かけだけの議論ではなく、実質の議論を尽くすべきだ。
「非常に危機感を持っている」と宮﨑義仁氏(日本卓球協会専務理事・Tリーグ理事長補佐)は語った。
Tリーグの観客の問題はTリーグだけの問題ではない。卓球界の問題でもある。
*のちほど宮﨑氏のインタビューを掲載予定

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