卓球王国 2024年12月20日 発売
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今野の眼

欧州卓球の王者オフチャロフ「情報があまりに少なすぎて、選手は大変な状況になっている」

 

ボルシア・デュッセルドルフで活躍するスウェーデンのシェルベリ。自国のスウェーデンリーグではなく、収入の多いブンデスリーガでプレーする

 

「WTTがもっと各協会や各選手に

ヒアリングをしてほしかった。

クラブリーグとWTTの両立は

とても難しい問題だよね」(オフチャロフ)

 

日本ではテレビでの露出も増え、トップ選手の知名度も上がっている卓球だが、国際的な観点で言えば、東京五輪後に大きな岐路に立たされることになるだろう。

ITTF(国際卓球連盟)が後押しして、東京五輪後から本格的に始まると言われているWTT(ワールドテーブルテニス)に対して、批判的な日本卓球協会の宮崎義仁・強化本部長。「彼ら(WTT関係者)は金儲けしか考えてなくて、普及・発展を考えていない」「金儲けのために大会を作り、オリンピックと世界選手権の価値を下げた」と卓球王国最新号で厳しく批判している。

 

それは新たに3月(カタール)から始動したWTTイベントに含まれるグランドスマッシュ(4大会)と、世界選手権、オリンピックが同じ獲得ポイントで世界ランキングに反映されることを意味している。

1年間の大会での上位8大会の獲得ポイントが合算されたもので卓球の世界ランキングは決まるのだが、大会の獲得ポイントは「大会の格付け」とも言える。今まで最大の獲得ポイントがあった五輪、次にポイントが多かった世界選手権と、このWTTグランドスマッシュが同じ獲得ポイントになり、同列という位置づけになっている。

まだ始まってもいないグランドスマッシュと、伝統と威厳のある五輪と世界選手権を同じに扱うのはけしからんというのが宮崎氏の主張である。

一方で、賞金額も高く、ポイントの多いグランドスマッシュとは別に、WTTカップファイナルズ(男女1大会ずつ)、WTTチャンピオンズ(男女4大会ずつ)という世界ランキング上位者が出場する大会、それに加え、ワールドカップ、世界選手権もあるので、世界のトップクラスは10大会前後、それにランキングが低い選手はWTTスターコンテンダー、WTTコンテンダー、WTTフィーダーという大会に参戦し、獲得ポイントを積み重ねないと世界ランキングは上がっていかない。

選手の過密日程も懸念される中、ほとんどのヨーロッパ選手はドイツのブンデスリーガ、フランスリーグ、ロシアリーグというプロリーグに所属していて、WTTのイベントとプロリーグの両立に苦しむことになる。もちろん、日本のTリーグに所属している日本代表クラスも同様の悩みを抱えるようになるだろう。

WTTの試合に出なければ世界ランキングは獲得できないので、「世界ランキングが人質になっている」と言われる理由はここにある。

 

またWTTだけで十分な生活を得られるかどうかがまだわからない状態で、特にヨーロッパ選手のプロ活動がWTTによって壊されないだろうかという疑問を卓球関係者は抱いている。これらの疑問に対して、ITTFのスティーブ・デイントンCEOは説明する。

「WTTの仕組みを作る時に、今までよりも長い日数を使うのは10日間のグランドスマッシュで、ワールドツアーの5日間よりは長い。選手に20、30大会に出てくれとは頼まない。世界ランキングも上位8大会で計算されるので、トップ選手でも10大会くらいに参戦するだろうから、今までと比べても少しだけ長い期間は要するけど、(各国の)リーグ戦から引き離すことはないと思っている」(デイントン)。

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