31歳の上田仁がT.T彩たまを退団し、ドイツのブンデスリーガ1部の「ケーニヒスホーフェン」と来季の契約を交わした。このチームは今シーズンのレギュラーシーズンでは12チーム中、6位につけ、宇田幸矢(明治大)が所属。シュテガー(ドイツ・元五輪メダリスト)やオルト(ドイツ)がプレーしている。監督は青森山田学園当時の指導者、板垣孝司だ。
Tリーグでの出場機会が減っていた上田だが、昨年の全日本社会人選手権では決勝に進むなど実力は落ちていなかった。
彼の特筆すべき点は現役選手でありながら、将来の指導者として評価をされていたことだ。通常は現役後半にコーチの補佐をやるなどして、その後、コーチ、監督という道に進む。そういう道を歩みながらも「やはりあの人は指導者には向かない」などと評価されるものだ。現役の時の実績と指導者としての資質は別物だ。
上田は現役でありながら、昨年から「指導者としてきてくれないか」というオファーが多数あったと言う。明晰で冷静な試合分析、卓球への真摯な取り組みと真面目な人柄。日本代表として活躍した実績も申し分ないだろう。一方、まだプレーしている選手なのに、現役引退を前提にコーチのオファーをされることで彼自身がもがいていたことも想像できる。
京都の舞鶴で生まれ育ち、中学から青森山田学園に進み、青森大に進んだ。協和発酵キリン(現協和キリン)に入社後は、日本リーグでも活躍、全日本社会人選手権では3連覇を果たした。
2018年、日本にTリーグが創設された年に、26歳で大企業をやめて、企業スポーツからプロ卓球選手になり、Tリーグに飛び込んだ。しかし、チーム数も少なく、レベルの高いリーグでの自分の居場所は決して満足できるものではなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2018年の春、上田仁がプロになる「覚悟」を見せた。そして5年後の春、彼は指導者としての誘いを断り、その「保険」をかたわらに置き、ドイツへ向かう決断をした。東京にあった家を売り、家族でドイツに移り住むという決断と覚悟を見せた。
上田仁のインタビューを2回に分けて掲載する。
インタビュー=今野昇
ツイート