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インタビュー

「試合に出られるチームに行き、思い切って挑戦したい。30を超えても強くなるヒントがドイツにある」31歳、上田仁の決意

昨年の全日本社会人選手権は準優勝の上田

引退して次のステージに進んだほうが
いいんじゃないかという気持ちと、
ちょっと勝てなくなったからやめるのは
違うんじゃないか。その葛藤がありました

●−協和キリンをやめてプロになる時も卓球王国でインタビューした。
上田 2018年2月末に退社してますね。Tリーグがスタートする年だったので、5年前ですね。

●−プロとしては確かに戦う場がないと焦燥感を抱くだろうし、自分の存在感を出すためにはプレーする機会がないとプロとしての意味がないと感じたのが、この1、2年間だったのだろうか。
上田 両方ありますね。日本代表も外れ、Tリーグでやっていく中で、世界的に言えばぼくはベテランではないけれども、日本ではベテランと言われます。年齢的には上の立場ではあるので、そういうところでプロ選手ではあっても、日本では選手として以外の部分を求められてこともありました。

−それはコーチ的な立場ということ?
上田 ぼくの性格だと思うんですけど、卓球のプレー以外の分野での……。

●−それはチームのまとめ役だったり、精神的支柱のような役割なのかな。
上田 そうですね。それをやっているとどんどん選手としての気持ちが薄れていく。実業団チームで陰で支えてチームで勝つというのはやりがいはあるけれども、Tリーグのようなプロチームでは自分の成績で給料が変わるので、そういった中で、自分がサポート役をやるのは嫌ではないけれども、自分が選手なのか、サポート役、指導者寄りになっているのかわからなくなることはありますね。
こういう感覚なら引退して次のステージに進んだほうがいいんじゃないかという気持ちと、自分がプロになった経緯(いきさつ)を考えると、ちょっと勝てなくなったからやめるということは違うんじゃないか。その葛藤がありました。
もうひとつは、単純に選手としてブンデスリーガで活躍するのは大前提ですけど、今年32歳になるんですが、20歳でブンデスに挑戦するのと、32歳で家族を連れてブンデスで挑戦するのでは気持ちが全然違う。家族と一緒に行って、実際にドイツに行き、その文化や国に触れ、生活をすることの興味があります。
自分の中では、Tリーグがうまくいってほしいし、自分が何かを持ち帰りたい部分も正直あります。自分の頭の中で、「ブンデスはこうだ」と言うのではなく、自分のこの年齢で飛び込んでいき、自分の目にどう映るのかが大事なんじゃないかな。日本では30歳になると、もうベテランで終わりに近づいていくと言われます。若手と比べたら伸びしろはないけれども、ドイツは20代後半や30代でもグンと伸びていく選手が多い。それがなぜなんだろうと単純に疑問でした。
これからTリーグは若手だけじゃなく、30代とか、あるいは40代の選手が活躍していかないと発展性がないとぼくは思っていて、その中で、30代は30の立ち居振る舞い、40代は40の立ち居振る舞いではなく、30でもここからどうやったら強くなれるのか。それがぼくはちょっとわからなかった。若い時には吸収することがたくさんあって、強くなるチャンスもいっぱいあった。日本で30を超えると、経験があるベテランという見方をされて、そこからどう伸びていくのは未知の世界で、そういう意味でそのヒントがドイツにあるんじゃないかと漠然に思っていました。それならドイツに住まないとダメだなと思いました。

−今までドイツ、ヨーロッパに行き、プレーする選手は多くいたけど、上田君のように家族で行った選手はいない
上田 初めてと言われましたね。3、4年前にも家族でドイツの板垣さんのところに行ったんです。妻もその時に「ドイツという選択肢もあるかも」と言ってました。子どもは今は5歳と2歳で、家族は前向きでした。選手をやっていて、妻も働いていますが、ドイツでは卓球を仕事としながら、家族との時間も取れるのが魅力でした。ぼくも妻も12歳で親元を離れて、卓球で進学しているので、親と一緒に過ごしたのは12年しかない。そう考えると、今上の子は5歳なので、もし何かをやりたい、どこかへ行くとなったら、あと7年しか一緒にいられないと漠然と考えた時に、自分のやりたいことをやって家族が一緒に時間を共有できて、違った国や生活に触れるのはタイミングとして今しかないと思いました。
Tリーグではチームに残れる雰囲気があり、それだと逆に自分はやめたほうがいいのかという思いもありました。ドイツでは1年契約だし、ある意味、前半戦の成績で次のシーズンの行くチームが決まる感じです。そういう意味ではドイツのシビアなほうが良いのかもしれない。1年契約ですけど、2年、3年やれるように頑張りたいです。(後編に続く)

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