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「自分が一番の味方であり、一番の敵」。中国の壁を破るため、張本智和が語ること

男子準々決勝の中国戦、2番で王楚欽から1ゲームを先取するも、2ゲーム目から3ゲーム連取を喫して敗れた張本智和。前回の成都大会では同じく2番で張本が王楚欽を破り、伝説の一戦の幕が開けたが、「2年前と違って、1ゲーム目を取っても相手はまったく崩れなかった」と張本は試合を振り返った。

「一撃で決められてブロックすらさせてもらえない。さわることすらできないくらい速いボール、強いボールが来た。パワーの違いも感じました。ラリーになれば勝負ができても、前半のサービス・レシーブからの展開をもっと練習したい」(張本)

試合を通じて印象に残ったのは、王楚欽のミドル攻めのうまさ。要所で張本のフォアミドル、絶妙なコースへボールを打ち込んできた。張本のミドル処理も確実に強化されており、「今までブロックやロビングになってしまったところも打てるようになってきた」と語るが、試合が進むに連れてより厳しくミドルを攻められた感がある。

「2ゲーム目以降、どんどんミドルに詰められて苦しくなった。あそこに強いボールを打ってくるのは王楚欽と林昀儒くらいですけど、ラリーの中で唯一そこがまだ弱点なのかなと思います。そういう選手にちゃんと勝つには練習が必要ですね」(張本)

懐をえぐられるような、王楚欽のミドル攻めは厳しかった

そして3ゲーム目に張本が7−10とゲームポイントを握られた場面で、王楚欽が初めて巻き込みサービスを出し、張本がレシーブをネットミス。4ゲーム目に2−4で張本がリードされた場面でも、巻き込みサービスに2本続けてネットミスが出た。そのサービスにも、王楚欽の智略が隠されていた。

「あのミスだけを見れば凡ミスに見えるかもしれないですけど、WTT(男子ファイナルズ)ドーハで対戦した時に1球、伸びる巻き込みサービスを出された。今回それをずっと警戒していたんですが、1球も出されなかった。あの下回転の巻き込みが取れなかったというより、伸びるのを待ちすぎた結果ですね。それも相手の引き出しの多さ。『次来るかな』と思ったらずっと来なかったので、そこは組み立てがうまいなと思いました」(張本)

成都大会で届かなかった中国戦の勝利はならなかったが、今大会の張本の安定感はまさしくエース。攻撃だけでなく台上でも守備でも点を取ることができ、得点パターンはさらに多彩になった。「今大会はフォア側に来たボールをブロックするところ、1本も見てないですよね」と田㔟監督。バック対バックやミドル攻めからフォアに送られたボールに対しても、確実にフォアドライブで打ち返すことができていた。

とっさにフォアを突かれたボールにも、しっかりドライブで引き返していた今大会の張本

「今回は中国と早いラウンドで当たってしまいましたけど、それ以外の試合ではほぼ完璧にプレーできた。韓国やフランス、ドイツあたりとやってみたかったですけど、今回でいえば合格点かなと思います。ラリー力はついていると思うので、ラリーにつなげるサービス・レシーブの部分を練習すればもっと強くなれるんじゃないかと思います」(張本)

7月のパリオリンピックまでは半年を切った。オリンピックで勝つために超えられない壁、それはシンプルに「中国という壁」だと張本は語った。

「メダルを獲るのもひとつの目標ですけど、金を取りたいなら中国に勝たないといけない。中国に勝つには、自分自身が一番の味方でもあり、一番の敵でもある。自分が練習を頑張れば結果はついてきますし、頑張らなければ強くなれない。毎日、一日一日、自分に勝てるかどうか、苦しい練習ができるかどうかが大事なのかなと思います」(張本)。

自分自身が一番の味方であり、一番の敵。またしても「名言」は出た。それは妹・美和が語った、「1球1球全力でしっかり取り組んで、無駄な1球にしないように練習することが大事」という言葉にも通じるものだ。張本智和、20歳。その成長はまだまだ止まらない。

20歳の張本と篠塚、そして16歳の松島。若い日本男子チームの未来は明るい

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