●男子決勝トーナメント2回戦(ベスト8決定戦)
〈チャイニーズタイペイ 3−2 スウェーデン〉
高承睿 −6、5、−7、−7 モーレゴード◯
◯林昀儒 8、5、8 ファルク
馮翊新 −9、7、8、−5、−7 シェルベリ◯
◯林昀儒 9、11、7 モーレゴード
◯高承睿 1、2、9 ファルク
パリ五輪団体戦出場がかかるベスト8進出をかけて行われた2回戦。第1ステージで日本に敗れたチャイニーズタイペイは、ヨーロッパチャンピオンチームのスウェーデンと対戦。エースの林昀儒が2得点をあげ、最後は19歳の高承睿が元世界2位の実績を持つファルクに快勝し、ベスト8に進出。今夏のパリ五輪団体戦の切符を手にした。
前述したようにパリ五輪団体戦の出場を確定させるためにチャイニーズタイペイにとっては絶対に負けられない一戦だった。
一方のスウェーデンは、ファルクに続いてチームのエースに成長したモーレゴードも元世界2位で現在も世界トップクラスの選手。シェルベリもブンデスリーガの名門・デュッセルドルフでエース格の活躍を見せて各国の強豪選手をなぎ倒すなど戦力は充実しており、今大会でメダルが有力視されていたチームだ。パリ五輪団体戦の出場権は、大陸予選を兼ねたヨーロッパ選手権で優勝しているためすでに獲得しているが、五輪うんぬんではなくメダル獲得のためにこのラウンドでは負けられない。
この試合、両チームともオーダーに手を入れてきた。チャイニーズタイペイはエースの林昀儒と高承睿を2点使いし、3番には42歳のベテラン・荘智淵ではなく、21歳の馮翊新を起用。スウェーデンはモーレゴードをエースに起用し、2点起用が多かったシェルベリを3番に起き、ここまであまり出番がなかったファルクを2点起用という奇襲に出た。
しかし、結果的にこの奇襲が裏目に出てファルクは2番と5番で2失点。林昀儒戦での失点は想定内だったかもしれないが、5番で高承睿によもやのストレート負け。それも1ゲーム目は1点、2ゲーム目も2点しか取ることができないほどの完敗で、これには監督のパーソンも、われわれメディアも想像していなかった。
チャイニーズタイペイの5番を任された高承睿は、荘智淵が2008年に私財を投じて開校した「智淵卓球運動館」の出身選手。ベンチでも荘智淵がアドバイスをするなど師弟関係にあり、高承睿のプレースタイルも全盛期の荘智淵を彷彿させるフォアハンドの強さと安定したバックハンド、フットワークの良さがある。なにより遊びのプレーは一切なく、質実剛健な戦い方は師匠譲り。
ファルク戦では、徹底して表ソフトを使用するファルクのフォア側にボールを集めてミスを誘った。特に効果的だったのが質の高いループドライブと唸るようなスピードドライブ。フォア面に中国ラバーを使う高承睿は、表ソフトが苦手にする薄くボールをとらえる「ちょりドラ」をファルクのフォア側に送り、ファルクはそれを最後まで芯をとらえたスマッシュができず、ミスを連発。「ガラスのフォアハンド」になってしまった。
19歳の高承睿にかけたチャイニーズタイペイと、32歳で豊富な経験を持つファルクにかけたスウェーデン。若手がベテランを押し切り、明暗が分かれる結果となった。
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