卓球王国 2021年3月19日 発売 vol.288
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本人が語る丹羽的卓球論【後編】

丹羽的卓球論②

独創スタイルの研ぎ澄ませ方

世界を驚かす、丹羽孝希の独創スタイル。

多彩なテクニックをどのように習得したのか。

そしてそれを試合でどう発揮していくのか。天才の技術と戦術に迫る。

 

チキータの習得ターニングポイント

ぼくが世界で戦っていくうえで、大きなターニングポイントとなったのは、高校2年でチキータを覚えたこと。2011年に張継科(中国)がチキータを武器に世界選手権で優勝し、彼を参考にしてすぐに取り入れましたが、比較的すぐに試合で使えるようになりました。

チキータを使うようになってから、世界ランキングも一気に15位くらいまで上がり、2012年のロンドン五輪にも出場できました。そこから世界ランクを大きく下げることなく、現在までトップでプレーできているので、チキータを覚えたことがひとつの契機になったと感じます。

高校2年時の丹羽。チキータを習得して 飛躍を果たしたこの年に、世界ジュニアでも優勝

 

技術・プレーのヒントは中国選手から

張継科のチキータもそうですが、中学・高校時代は中国選手のプレーや技術からヒントを得ることが多かったです。たとえば巻き込みサービスは王皓から、カットブロックは馬琳を見て取り入れました。中国選手のプレーや試合は迫力があるので見ていて楽しいし、学ぶことが多いです。

中国以外の選手ではティモ(・ボル/ドイツ)の回転の使い方やミスの誘い方、緩急などを参考にしました。ティモのプレーを見ていると、やっぱり「巧いな」と思いますね。

技術のヒントとなった中国選手たち。シェーク、ペン関係なく技術を取り入れていった

 

ラリーにせず得点するのが理想。好調時は読みも冴える

理想的な試合展開は、究極を言えばサービス・レシーブだけで勝つこと。それは無理だとしても、あまりラリーにせず、3球目、4球目で決めたいと考えています。でも、Tリーグのような試合なら、大きなラリー展開で会場を盛り上げて、お客さんに喜んでもらって勝つのがベストですね。

リオ五輪(2016年)以降のベストゲームは、2017年アジア選手権の男子シングルス準々決勝で許昕(中国)に勝った試合と、同じ年の世界選手権男子シングルス4回戦でオフチャロフ(ドイツ)に勝った試合。この2試合はフォアのカウンターの調子が良く、バックに打って来ると読んで回り込んだ時には、ほとんどバックにボールが来ました。調子が良い時には、読みや予測もすごく冴えている感じがします。

オフチャロフを下した2017年世界選手権。
オフチャロフも「丹羽はリスクのある攻撃をしてきてもミスがなかった」と脱帽

 

備え:世界の選手のプレーはある程度インプット済み

ワールドツアーや世界選手権だと、試合前日に対戦相手が決まることが多いので、夜に対戦相手の動画を見たりして対策を練ります。世界トップにいる選手とはほとんど対戦経験があるので、ある程度プレーの情報というのは頭に入っている感じです。自分が初対戦の選手でも誰かは試合をしたことがあるはずなので、その選手から情報を収集しておきます。

昔も今も、試合の動画はよく観ます。海外の選手がどんなプレーをしているのか、調子はどうなのかなどは常にチェックするようにしています。8月の中国代表のエキシビションマッチ(備戦東京)も観ていました。

 

戦術:試合の序盤は相手よりも自分のプレーを優先

「1ゲーム目は相手を探る」という選手もいますが、ぼくは序盤から自分のプレーを優先します。相手がどうこうよりも、自分の調子を上げていきたいからです。

初対戦の選手に対し、サービスがわからない時はとりあえずチキータ。サービスの回転に関係なく、一番レシーブしやすいのがチキータだと思います。ストップはやり慣れている相手でないと難しいですね。サービスも最初から自分の得意なサービスをどんどん使っていきます。その中で、自分のサービスの調子によって種類や出す位置を変えたり、チキータが得意な相手ならロングサービスを多く使うようにします。

 

  Question 「丹羽コーチ」が小学生を指導するなら?

小学時代の結果よりも将来の伸びしろを重視

ぼくが指導するとしたら、小学生の時にはあまり練習をさせないのが理想。張本(智和/木下グループ)も小学生の時は練習量はそれほど多くなかったと聞いていますし、練習をやり込ませて強くする方法は取りたくないですね。

また、卓球と並行して他のスポーツもさせたいです。ぼくは卓球だけでしたが、大島くん(祐哉/木下グループ)やカルデラノ(ブラジル)は子どもの頃に陸上やバレーボールもやっていて、そのおかげもあってか、身体能力がすごいじゃないですか。卓球以外のスポーツにも取り組んだほうがフィジカル的にも強くなり、体のバネができるし、身体能力も高まって、将来強い選手になると思います。

小学生での結果だけを重視するのではなく、中学や高校での伸びしろを大事にして、長い目で見て指導したいです。

教えるうえで、どんなプレースタイルがベストかはわからないです。勝てないプレースタイルというのはないわけですから。フォームに関しても、すごくこだわる指導者もいますが、ぼくはどんなフォームでも入れば良いというタイプ。最初から型にはめて、すぐにフォームやプレーを修正するような指導はしたくないですね。

―卓球王国2020年12月号掲載から引用―