卓球王国 2024年3月21日 発売
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世界卓球準優勝の「モーレゴード・ラケット」、『サイバーシェイプ カーボン』が発売開始

世界卓球準優勝の

「モーレゴード・ラケット」、

『サイバーシェイプ カーボン』が発売開始

 

 

世界2位、19歳のモーレゴードの躍進と六角形ラケットの偶然

世界選手権ヒューストン大会で大暴れして大会を盛り上げたのはトゥルルス・モーレゴード。

かつて世界の王者に君臨し、強い卓球の伝統を持つスウェーデンが生んだ異能の選手だ。ジュニア時代から注目されていた選手だが、19歳にして見事に才能を開花させ、アメリカの卓球ファンを熱狂させた。

フルスイングで放つフォアドライブがエースボールだが、細やかな台上プレーのうまさ、そしてバックのカウンタースマッシュが特徴的な選手だ。ボールタッチ素晴らしさ、創造的なプレーはあのレジェンド、100年にひとりの選手と言われたヤン-オベ・ワルドナー(スウェーデン)を彷彿とさせる。

今回、彼が脚光を浴びた理由はもうひとつ。それは独特の形状をしたラケット『サイバーシェイプ』だ。ブレード面が六角形をしており、「卓球のラケットは円形か楕円形」という常識を覆した形状だ。台上プレーのやりやすさ、広くなったスイートスポットと振り抜きの良さが、今回のモーレゴードの活躍とオーバーラップする。

世界選手権期間中、そして大会直後からスティガの『サイバーシェイプ』に注目が集まり、スティガジャパンでも異例の再々発注を本社にかけているとのこと。

その『サイバーシェイプ』は本日、12月1日から発売を開始した。売り切れは必至だ。強い選手モデルのラケットが売れるのは市場の常だが、今回の『サイバーシェイプ』ほどのインパクトのある商品は過去になかった。

大会直前にスティガ社のプロダクトマネージャーのフィリップ・ヴィストロム氏に取材し、『サイバーシェイプ』について語ってもらった。

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「いろいろな形を作ったし、

六角形でも角をもっと鋭くしてみたり、

丸くしてみたりと、

100本以上の試作品を作った」

 

■スティガ社のフィリップ・ヴィストロム(プロダクトマネージャー)へのインタビュー

●なぜこのような形のラケットを開発しようとしたのでしょうか。

フィリップ・ヴィストロム(以下FW) 実は2、3年前から新しい形のラケットを作ろうという動きがあって、トップ選手と開発チームのコラボレーション(共同作業)が行われていた。今まで卓球メーカーというのはラケットのマテリアル(素材)ばかりに目を奪われ、どういうカーボンを使おうかと考えていた。また、ラケットの形は楕円形のものしか考えてなくて、卓球メーカーはみんなが同じような形のラケットを作っていたが、スティガは違う形を求めることで利点を作れないかと考えていたんだ。そして我々のデザイナーは様々な形のラケットを作っていった。それがこのラケットの開発のスタートだった。

 

●卓球が始まって100年以上経っています。大昔のシェークや日本式のペンホルダーは角型のものがあったり、以前、フランスのエロワという選手は珍しい形(行司の軍配のような形状)のラケットを使っていたけど、あのラケットは他の選手たちは使わなかった。 

FW エロワのラケットは知っているよ。彼は世界的にも有名な選手だった。だけども、今回の『サイバーシェイプ』は全く違う形になっている。

 

●開発のスタートからこの形が出てきたのだろうか。『サイバーシェイプ』は六角形だけども、他にもいろいろな形を試したのだろうか?

FW いろいろな形を作ったし、六角形でも角をもっと鋭くしてみたり、丸くしてみたりと、100本以上の試作品を作った。

 

●最終的にこの形にしたのはどこがポイントだったのか。

FW まず今までのラケットでは打球ポイント(エリア)はラケットの先端寄りだった、だから『サイバーシェイプ』の形では先端寄りの上の部分を大きくして、グリップに近い下の部分を小さくしたんだ。たしかに今までの楕円形の形とは違うし、卓球選手は楕円形のラケットを見たり、使うのに慣れている。ところが、この『サイバーシェイプ』の形は独特だけども、最初に打った時にこのラケットの利点を感じることができる。

まずレシーブなどの台上技術で、楕円形ラケットよりも、『サイバーシェイプ』のほうが台にラケットを近づけることができるためにボールの操作性が増している。2、3週間前から『サイバーシェイプ』を使っている選手と話をしたけど、彼は台上処理やレシーブがやりやすくなって、ボールに対して自分のラケットがどういう角度で入っていくのかがわかりやすくなったと言っていた。

 

●『サイバーシェイプ』の形を開発してから合板構成や素材を考えたのだろうか。それとも形状と素材を並行して考えていったのだろうか?

FW もちろん、形と素材はコンビネーション(組み合わせ)として開発してきた。もともとはプロ選手用に開発しようとして、開発にあたってはモーレゴードやルンクイスト(元世界メダリスト)と営業サイドの人間も関わり合いながら製作してきたんだ。もちろん、その過程で、どういう木材とカーボンで、どういう構成をすればこの形に合うかを何度も議論してきた。

 

●形を変えることでの利点は?

FW ラケット全体でも少し大きくなり、特にラケットの先端、上部にある打球エリアとスイートスポットが大きくなっている。それこそが『サイバーシェイプ』の利点だ。

 

●ラケット全体はやや大きくなっているにも関わらず、ラケット重量は重くなっていない。

FW まさに木材を研究し、カーボンファイバーを軽くすることがポイントだった。ブレード面が大きくなることは、ラバーを貼った時にも重くなりがちなので、それを従来のラケットの重さに抑えたかった。ラケットは90g以下にしたかった(卓球王国編集部に届いた商品3本は82から86gの間だった)。

 

●実際に開発し、作っていく過程で最も難しいプロセスは何だったのか?

FW 新しい試みだったかから完成させるまでにはまず時間が必要だった。それに新型コロナのパンデミック(世界的流行)の影響も受けた。通常は、スウェーデンだけでなく、他のヨーロッパや中国、日本で大きなテストグループを作り、試打を繰り返し、それを開発にフィードバックさせるんだけど、それができなかった。それにもう一つ苦労したのは、完全に超極秘のプロジェクトとして、写真も情報も外に出さないこと。外に漏れたらコピーを作られるので、スウェーデンでテストをする時にも、試打のところは関係者以外は誰も入れないようにした。

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