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今野の眼

【WTTスマッシュ】日本勢、シングルスでベスト8に入らず。されど日本選手の強行スケジュールは続く

一番怖いのは選手の怪我と故障。
WTTとWRが通常に戻っても
日本の選考方式は変わらず

 

WTTシンガポールスマッシュ2023で混合複2位、男女ダブルスで2ペアが準決勝へ進むも、シングルスはベスト8に入れなかった。日本選手が急激に力を落としているわけではない。しかし、上位に進まない理由が存在することは否定できない。

シンガポールで開催されているWTTスマッシュ。コロナ直前に始まったWTTという新しい世界卓球ツアーが始まり、年間4大会の予定だったグランドスマッシュは今年は2大会のみ。しかし、パンデミックによって中断されたWTTツアーはまさに今年から本格的に動き始めている。

その中でTリーグがパリ五輪代表の選考対象となり、WTTの合間に選考会も控えている日本選手にとってはまさに受難のスケジュールとなっている。パンデミックでWTTは機能していない、世界ランキングは公平さを欠くので、五輪国内選考会とTリーグを選考対象にした日本卓球協会だが、WTTが以前のワールドツアーと同じように行われ、WTTユース大会やWTTフィーダー、コンテンダーによってランキングポイントを積み重ねた篠塚大登(愛知工大)、張本美和(木下アカデミー)などがしっかりと世界ランキングを上げている現状では、それなりの「公平さ」を世界ランキングが反映しているようにも見える。だが、五輪代表選考方法が変わる気配はない。残ったのは、選手へ突きつけている過酷なスケジュールだけだ。

WTTのインド大会からの長い遠征に「なんとか切らさずにやろうと頑張ったが、集中力と粘り強さに欠けたかも」と反省のコメントを残した張本は、帰国後にTリーグのファイナルを控え、4月にもWTTチャンピオンズが待っている

 

1月末に全日本選手権が終わり、その後にTリーグに選手たちはフル参戦し、その後、WTTコンテンダー、スターコンテンダーを終え、4月には中国での2大会がキャンセルとなったものの、その後、3大会(中国・マカオ・バンコク)が追加された。日本選手はその後、パリ五輪選考会が5月上旬にあり、5月下旬には世界選手権という強行スケージュールを強いられる。

選考会やTリーグのある日本選手は特別だが、世界5位のカルデラノ(ブラジル)の専任コーチのJR・モウニー氏は「このスケジュールによって、選手のオフはなくなり、強化練習が難しくなっている。選手たちはツアーだけでは生活できない。プロリーグ(ブンデスリーガやTリーグ)が生活の中心なのだ。ぼく自身、アジアへの移動距離が大きく、常に時差と戦い、ホテルのベッドで目を覚ますと、今自分がどこにいるのかわからなくなることがある。WTTには成功してほしいが、改善方法も話し合っていきたい。一番怖いのは選手の怪我と故障だ」と説明する。

エンターテイメントとしてのWTTの成功は卓球関係者の誰もが期待している。

一方、日本のパリ五輪代表が決まるのは来年の1月末だ。残り10カ月、国内選考会、Tリーグ、WTT、アジア競技大会などの試合がぎっしりと詰まっている。選手たちが故障せずにこの期間を乗り切ることを祈るばかりだ。(今野)

昨年からのWTT、選考会、Tリーグ、全日本選手権と休むまもなく続く試合。早田/伊藤のダブルスも相手と戦う前に、自分との戦いになっている

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