なぜ石川佳純(全農)のインタビューが面白くなったのだろう。
全日本選手権で感動的な優勝を果たし、日本中の人を熱くした石川佳純。ジュニア時代を含め過去に幾度となくインタビューをしてきた。
常に優等生的なコメントが多く、よくも悪くも安心感のあるインタビューだった。ところが、昨年7月に久しぶりにインタビューをしたときから「あれ?」と感じるほど、本音での語りが多くなり、今回の卓球王国最新号「チャンピオン・インタビュー」では、本音プラス、アスリートとしての言葉の重みと深みを感じた。
「毎回毎回『絶対あきらめない』という戦いができるわけではないんですよ。今回は簡単に勝つことは難しいと思っていました。苦しい試合になると思っていました。いくらリードされても、いくら苦しくてもあきらめないでやろうと試合前に自分に誓ったから、途中であきらめて負けたくなかったし、簡単に負けたくなかった。だから自分の力を証明したい気持ちでやりました」
決勝に進むも、最近の伊藤美誠(スターツ)の強さを考えると、多くの人が「伊藤有利」と試合前に予想した。実際に、決勝では1-3と石川はゲームをリードされ、後がない状態で5ゲーム目に臨んだ。
「このゲームを取ればチャンスがある、試合を盛り返せる気がしていました」
その言葉通りに見事な逆転勝ちを見せた石川。
「昔のチャンピオン、古い選手という扱いを受けることもあるのかな」という質問をぶつけた。
以前、全日本10度の優勝を誇る水谷隼が「連覇していても一度負けると、水谷は昔の選手だ、プレーも古いと言われるのが辛い」というような話をしていたことが頭に浮かんだからだ。
「ありますよ。それは自分でも気になっていました。でも、この自粛期間に考える時間がたくさんあって、『別に人に認めてもらわなくても大丈夫。わかる人がわかればいいか』と思えた」と石川は答えている。
石川の中で何かが変わったのだ。
「大会のガイドラインで、今までできたことが今回できないこともあったね」と問えば、「それは試合ができるかどうかということと比べたら、小さなこと。ルールだから受け入れるしかない。本当に全日本を開催してくれた方々には感謝しかないです。いろんな規制が入っても受け入れたうえで、東京オリンピックでプレーがしたい。お願いします」という答え。
石川の「お願いします」には活字以上に切実な願いが込められていた。
最新号でのインタビューの予定時間は1時間だったが、石川の熱いトークは2時間近く続いた。もともとクレバーで、勝ち気な性格のアスリート。礼儀正しいけれども、強烈な自我を持つアスリート、石川佳純史上、最高のインタビューだった。
→最新号はこちら https://world-tt.com/ps_book/newdetail.php
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