卓球王国 2021年7月20日 発売 vol.292
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「メイド・イン・ジャパン」。 東京五輪の卓球台はモノづくりの粋を集めた傑作

 

卓球競技史上、もっとも美しい卓球台

 

 

 

7月24日に スタート予定の

東京2020オリンピック・パラリンピック

競技大会の卓球競技。

そこで使用される卓球台は

三英の『MOTIF』(モティーフ)。

鳥が翼を広げたような大胆なデザインで、

天板を支える脚には

輪島塗りが施されている。

卓球競技史上、

もっとも美しい卓球台と言えるだろう。

 

「日本の三英から世界の

三英として認知してもらう。

そして日本のモノづくりを

世界中の人に見てもらいたかった」

 

5年前の2016年リオデジャネイロ オリンピック・パラリンピック競技大会でサプライヤー(納品メーカー)として卓球台を提供した三英[SAN-EI]。1992年バルセロナオリンピック競技大会に続く、2度目の卓球台サプライヤーだった。

そして出来上がったのが『infinity(インフィニティー)』。天板の色はそれまで見たことのないレジュブルー。そこに「新しい生命」というメッセージを込め、開催国ブラジルの国旗、グリーンにも寄せていったカラーが「レジュブルー」。卓球発祥から120年の中で、全く新しい色を世界中に提示した。

『infinity』で起用したデザイナーはかつてソニーの「ウォークマン」などを手掛けた澄川伸一氏。2011年の東日本大震災からの復興への願いを込めて、岩手県宮古市のブナ材を使い、合板による複雑な曲線は、木の曲げの技術を持つ「天童木工」(山形)の成形技術により実現した。そして『infinity』に世界中の人が驚いた。それは卓球台というよりは「卓球工芸品」という域に達していたからだ。

3度目のサプライヤーとなった東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の卓球競技。

三英はなぜオリンピック・パラリンピック競技大会の卓球台にこだわるのか。三英の三浦慎社長はこう説明する。

「日本の三英から世界の三英として認知してもらう。そして日本のモノづくり、三英のモノづくりを世界中の人に見てもらいたかった」

 

2016年リオ五輪での卓球台

 

 

80年前に卓球台の木を提供し、

64年前に卓球台の

専門工場を建てた

 

三英は卓球台を専門に製造し、会社としては、公園施設、遊具などの製造・販売も手がけている。三英の前身は、1940年(昭和15年)に東京都台東区で立ち上げた松田材木店(創業者・松田英治郎=三浦慎の祖父)。卓球台メーカーに材木を卸していたが、戦後の卓球ブームもあり、1957年(昭和32年)に千葉県流山市に卓球台の専用工場を建設し、木の反りや狂いの少ない日本初の合板の卓球台の製造を始めた。松田は「日本の卓球台を創った男」と言われた。

そして、1962年に卓球台の販売会社として「三英」を設立し、三浦慎の父である三浦敏明が卓球台の製造、販売の会社として発展させた。

世界選手権で卓球台のサプライヤーを4度務めてきた三英は、『infinity』と同じ澄川氏にデザインを依頼した。数多くのデザイン案が出され、最初の原型ができたのが翌2017年4月だった。

今回も三英は東日本大震災の被災地の木にこだわり、岩手県岩泉市のウダイカンバというカバノキ科の広葉樹に行き着いた。三英は被災地の木を使うことを躊躇なく選んだ。

「前回の『infinity』は工芸品のような卓球台だったが、今回の『MOTIF』(モティーフ)はさらにモダンで洗練されたデザイン、そこにシンボリックな日本らしさを感じる卓球台に仕上がった。『MOTIF』には動機という意味がありますが、この卓球台がきっかけになり卓球が活性化し、さらなる高みへ向かう動機、つまり卓球の可能性や楽しさを多くの人が感じ、卓球をやりたいという動機づけになる願いを込めました」と三浦社長は熱く語る。

三英の三浦慎社長

 

三英がこだわる天板のバウンド、

そして音の響き

 

『MOTIF』は『infinity』の美しさを継承しつつも、全く違ったデザインに見える。

共通しているのは脚部に木材を使っている点だろう。横から見るとこの『MOTIF』は鳥が翼を広げたような「T」の字のように見える。天板から下に向かって緩やかな曲線を描いている。天板と脚部は一体となって見えるのだが、よく見ると、その曲線は木製のカバーのような天板と脚部の接合部から脚の下に流れるように降りていく。

天板の下のピンク色のラインから下の接合部は空洞状態になっている。

「脚部が木材ということで『infinity』で培った卓球台を振動させないノウハウが生かされることになった。しかし、正直に言えば、『infinity』の技術で、新しい『MOTIF』に生かされたのは2割程度。残りの8割は新たな挑戦でした。特に空洞状態になった接合部では、ボールがバウンドした時に音が接合部のケースの中で反響してしまう現象が出てしまったので、音の響きを防ぐ工夫をしました」と足寄工場長であり、エンジニアの吉澤今朝男は説明した。

卓球台の天板は乾燥や湿気で台が反り返ることも多く、ボールのバウンドを均一にするのは難しい。その問題を解決するために、三英の天板は小割の積層材の集合体になっていて、乾燥や湿気に強く、バウンドも均一。そして、何よりこの構造の天板は、脚部の影響を受けにくいことが特徴なのだ。トップ選手たちは、天板だけでなく、そのデザインによって天板を支える脚部の位置がボールのバウンドに影響することを嫌うが、三英の卓球台にはその心配がない。

三英の卓球台はバウンドの正確な天板ゆえにすでに世界で認められている。そして今回、2016年の『infinity』以上に、三英が挑み、葛藤したのは木製の脚部だった。

卓球競技史上、とうよりも120年前に卓球がピンポンとして生まれてから、これほど美しい卓球台があっただろうか。

 

三英のHP

https://www.sanei-net.co.jp/