卓球王国 2021年3月19日 発売 vol.288
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「変えて」強くなる カリスマのカットマン高島規郎

<卓球王国2011年10月号より>

あなたの潜在力は眠っている

「変えて」強くなる

 

高島規郎

元全日本チャンピオン・世界3位

Norio Takashima

 

目標を「日本」から「世界」に変えた瞬間

現役時代にプレースタイルを大きく変えたことがある。

 

攻撃を多く取り入れ、プレースタイルの改革に取り組んだ高島規郞。写真は優勝した大学4年時の全日本学生選手権

 

きっかけは1971年の世界選手権名古屋大会だった。私は当時、大学2年で、日本代表に選ばれて出場したが、その時に中国の梁戈亮という選手のプレーを見て衝撃を受けた。私と同じカットスタイルでありながら、梁戈亮は変化サービスからの攻撃もあり、カットをしながらすぐに攻撃に移るなど、カット主体のオールラウンドプレーヤーだった。

私はカット主戦のいわゆるオーソドックスなスタイルだったが、これからの世界の卓球を考えたら、攻撃力のあるカットマンにならなければいけないと痛感した。相手のミスを待つだけのカットマンではなく、カットにも変化をつけ、自ら得点を狙うようなカットマンになる決意をした。そのために用具も変えた。

名古屋大会が終わってからは1年間徹底的に攻撃練習を行った。カットをしながら反撃をするパターンは昔のカットマンにもあったが、攻撃選手のようにサービスを持ったら3球目を狙う、連続攻撃につなげていくという練習や試合をするように努めた。

世界選手権に出て、そこで世界の卓球に触れて、同年代の中国の選手のプレーを見て、自分の卓球が大きく変わった瞬間だった。

 

「頭がおかしくなったんじゃ

ないか」と言われるほどの

練習をこなしたら

全日本選手権で

勝てると信じていた

 

名古屋大会後に精神面で「変えた」のは目標設定だ。目標を「日本」から「世界」に変えた。世界選手権前の全日本合宿に呼ばれた時に、当時世界のトップクラスだった長谷川信彦さん、伊藤繁雄さん、河野満さんという先輩たちと練習した。彼らの「世界のボール」を実際に受けて、そのすごさを体感した。彼らのボールをしっかりと返していくためには、肉体改造をしなければいけないと感じ、プレースタイルを変えた時と同じように、体力トレーニングによる肉体改造に1年間かけて取り組んだ。当時の体重は57㎏しかなかったのに、トレーニングを続けていくことによって、ベンチプレスで85㎏を挙げ、スクワットでは130㎏を挙げることができるようになった。

ただし、練習拠点は関西だったので、世界クラスのボールを打てる選手が周りにいなかった。そこで考えたのは、スティガ社の2ローラーの卓球マシンを買い込み、そのドライブの回転をMAXにして、それを返球する練習だった。ある日、近畿大へ入学する予定だった高校3年のカットマン、五藤ひで男君が練習場に来て、ボール拾いをしていた。私が普段打っているマシンのボールを彼に打たせたら、ボールが何本も天井を直撃した。それほどの回転量のドライブボールを返す練習を日々繰り返していた。

努力3倍──自分の卓球への自信を裏付けるのは、練習量を増やすことしかなかった。自分の中では、「高島は頭がおかしくなったんじゃないか」という声が耳に入ってくるようになったら、全日本選手権でも勝てると信じていた。朝から晩までランニングをしたり、練習をしている自分を見て、実際に周りが心配し始めた。それはプラス効果もあり、「高島は相当に練習をやっている」という噂が流れ、関西で試合があると、相手が試合前から萎縮しているのがわかるほどだった。

世界を見たら1日3時間、4時間の練習では対抗できないと思い、大学3年の時には毎日10時間は卓球場にいた。当時の大学の練習場は24時間使用することができ、夜中に練習するのも平気だった。また、周りに手本にするカットマンがいなかったために、自分独自のスタイルを作ることができたのも結果的にはプラスだった。

具体的な目標は世界で活躍する長谷川さんであり、伊藤さんであり、河野さんだった。特に、当時国内で勝ち続けていた長谷川さんに勝たないと全日本選手権で優勝できなかった。だから、長谷川さんの重くて回転量の多いドライブをどうやって返すか、また長谷川さんのロビングを打ち抜くだけの攻撃力をどのように身につけるかを考えた。左右に打っては長谷川さんに追いつかれるから、彼の頭の上を越すような飛距離のあるスマッシュを打とうと考えた。当時は、朝から晩まで、頭の中は「対長谷川」でいっぱいだった。

そして、尋常ではない練習の結果、大学3年の時に長谷川さんに勝って、全日本初優勝を果たした。日本で勝つことによって、長谷川さんに勝つことによって、世界への扉は開かれていった。