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今野の眼

【卓球】異例の代表決定。公平性を示した選考会は、「最強メンバー」を選んだのだろうか

 

3月5日、LIONカップの1日目、世界選手権団体(中国・成都)の日本代表はある意味あっけなく決まった。
世界選手権日本代表選考会は「2022 LIONカップ トップ32」という名前になっていた。日本のほとんどのトップクラスが参戦したのは、この大会が世界選手権だけでなく、今年3回、来年3回行われる2024年パリ五輪に向けての重要な選考大会になるからだ。そして今回の「LIONカップ トップ32」は五輪に向けての1回目の選考会だった。

 

日本卓球協会は、当初4月に開催予定だった世界選手権団体の日本代表5名の選考方法を昨年12月に発表していた。東京五輪のシングルスメダリスト(伊藤美誠)と全日本チャンピオン(戸上隼輔・伊藤美誠)はすでに日本代表だが、残りの4人を「LIONカップ トップ32」で選ぶというものだった。コロナ禍で、以前のようにワールドツアー(現在はWTT)が行われず、世界ランキングの精度が落ちているので、選考方法が内向きになるのは理解できる。

 

しかし、今までのような強化本部推薦はなく、すべてを1回のトーナメントで決めるのは強化本部にとってもリスキーではないのだろうか。たとえば、この選考方法では世界ランキング4位の張本智和(木下グループ)がLIONカップで上位4人に入らなければ、日本チームは世界4位を欠いたまま世界選手権を戦うことになっていた。(結果として張本は優勝を飾ったのだが)

 

女子は東京五輪で活躍した石川佳純(全農・世界8位)、平野美宇(日本生命・世界14位)が準々決勝で敗れ、石川は2007年から続いた世界選手権の連続出場が切れた。しかも、代表決定戦が同じく世界のトップクラスに駆け上がっている早田ひな(日本生命)との対戦というのは酷な組み合わせだった。

 

日本卓球協会が発表していた世界選手権選考基準では、WTTが開催されないために過去の日本代表のように世界ランキングは参考にされず、今回「一発勝負」のトーナメントで代表が決まるという異例の代表決定となった。
このやり方は、すでに代表を経験した選手にとっては厳しいが、若手や初の代表を狙う選手にとっては好機となる。挑戦していく若手にとっては失うものはなく、すでに実績を残している選手たちにとってはどこか釈然としない苦難の代表選考会になった。

 

半年先に延期された世界選手権の代表がこの時点で決まったのも極めて早い。強化本部も国際卓球連盟とWTTに翻弄されたと言える。
今回の日本代表決定は一発勝負ではあっても公平な選考だったと言えるだろうか。選ばれた代表が「最強メンバー」と言えるのだろうか。

 

東京五輪の代表選考に関しても協会は「3番目の選手はダブルスも考慮しながら最強のメンバーを選び、メダルを狙う」と言ってきた。
国際大会が少なく、世界ランキングが正確なものでないなら、複数の選考会を経て代表を決め、世界選手権に近いタイミングでの選考会を重視する、というやり方が今までの協会の方針と矛盾しない代表選考ではなかったか。

 

新旧交代と言うにはまだ早い。選ばれた選手がこれからの半年間、さらに実力を上げ、世界の大舞台で活躍し、「最強メンバーだった」と言われるように努力するしかないだろう。
東京五輪では男女チームともメダルを獲得した日本チーム。男子の水谷隼、女子の石川・平野を欠いた日本卓球の強さの真価が問われることになる。(今野)

 

*写真は2022LION CUP TOP32から

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