卓球王国 2024年9月20日 発売
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トピックス

「ドイツラバーがなかったら、卓球メーカーも卓球ショップも存続できていなかったかもしれない」(正海)

「卓球家840」を経営する正海(しょうかい)さん

 

「840」にあるラバーの硬度計

 

別冊「卓球グッズ2023」でベールを脱いだドイツラバーのサプライヤー「ESN」。
日本のラバー製造会社で7年務め、現在、卓球ショップ「卓球家840」を経営している正海三弘さん。
ドイツラバーとバタフライのラバーに思うことは多い。
卓球ラバーのエキスパートが見るラバー市場を伺ってみた。
インタビュー=今野昇
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正海三弘
しょうかい・みつひろ
埼玉県の八潮店と草加卓球場で「卓球家840」として卓球ショップ、卓球場を経営している。日本のラバー製造会社で7年務め、その後、卓球ショップ「840」をオープンした。ラバーに詳しいエキスパート
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ドイツラバーを供給するESNの工場と本社

 

今自分が使っているドイツラバーで
良いという人も一定数いるような気がします。
そこはブランドを確立していて、
ぼくはみんなタマスに行くのではないかと
思ったら、実際はそうでもない

 

●−今回別冊「卓球グッズ2023」でドイツラバーのサプライヤーESNを記事にしました。次の卓球王国でもESNを紹介しています。ドイツラバーがある程度認知され、バタフライのラバーと比較されているこの10年、15年というのは正海さんにはどう見えていましたか?
「OEM(相手先ブランドでの製造)の会社というのは表には出れないし、メーカーも出したがらないものですが、これだけドイツラバーが売れていると力加減がひっくり返っている。ずいぶんドイツが強くなっているイメージはあります。それは新作の発売や、仕入れ値が上がっていることをメーカーさんから聞いて、それを感じていました。(ESNが)力を持っていますね」

●−今回、別冊で記事を作る時に、バタフライとの対立軸で記事を書いたのですが、通常はバタフライは他社と比較するのを嫌がります。実際には試打をしても中級者レベルではドイツとバタフライの差がわかりにくくなっていると感じています。
「以前は確かにタマス(バタフライ)が一番でしたが、今はドイツラバーでも遜色ないですね。ドイツラバーの性能はどんどん上がっています。ミドルクラスではドイツラバーのほうがむしろ売れている。『G-1』(ニッタク)、『ラクザ』シリーズ(ヤサカ)も売れています」

●−どの辺から市場の潮目が変わったのでしょうか?
「アンドロの『ヘキサーHD』が出たあたりから、えらい弾むラバーが出てきて、『V>15』(VICTAS)が出てきたり、飛距離としては『テナジー』と遜色がない。それに最近はボールの引っかかりも良くなっています」

●−ただバタフライのものは「バラツキ」はほとんどないと言われますね。
「品質管理はいまだにタマスがリードしていますね。他社ではラバーの真ん中がズレているというのはたまにありますが、タマスはそれがない。スポンジもきれいだし、スポンジの漉(す)きもきれいです。うちはラバーの硬度も測っていますが、硬度はずれていない。そこはドイツとは違う」

●−春にバタフライが『グレイザー』を発売した時に、バタフライ・フェアでショップの方々が「これをバタフライが出したら、他のメーカーは大変だ」と口々に言ってましたが、あれから3カ月ほど経って、実際の市場はどう動いていますか。
「確かに大澤さんに社長が変わってから、高級路線だけでなく、やや廉価版のものを出してきているので、他のメーカーは大変だとは思います。ただ、これだけドイツラバーが良くなっていると、今自分が使っているドイツラバーで良いという人も一定数いるような気がします。そこはブランドを確立していて、ぼくはみんなタマスに行くのではないかと思ったら、実際はそうでもない。ぼくもあの後、『G-1』と比べたら、『G-1』のほうが弾むんですよ。ドイツに慣れている、ドイツが好きという人はあまり動かない。『グレイザー』は球持ちとか、どう当ててもしっかり弧線を描くのはさすがです。『G-1』を使っていて、あのはずみが好きな人は移行しないと思います」

●−ラバーのエキスパートが見た時に、バタフライラバーの共通性と、ドイツラバーの共通性というのは何ですか。
「タマスのラバーのあの球持ち感は他にはない。硬度が軟らかく球持ちが良いラバーはあるけど、タマスのラバーは測るとそれなりに硬くて、軟らかくないのに、球持ちが良いように感じるのは、シートとスポンジのバランスなんでしょうかね。
記事を見れば、ドイツラバーはメーカーによって全然違うと書かれているけど、実際にはそれほどは違うものはない。唯一ティバーは少し違う気はしますけどね」

●−正海さんはSNSで日本の他のOEM工場が第三基軸になるかもと言っていますが。
「私がその会社で働いていた時にはスピードグルー全盛時代でした。グルーがなくなった時からは遅れていったと思うけど、日本独自の柔らかさ、球持ちの良さは中級者には良いと思います。ドイツラバーが高価になっていくと、そのラバーは選択肢のひとつになりますね。それに円安(為替)の影響も受けづらいですね。お客さん目線からすれば、魅力を感じます。今、4千円、5千円のラバーはドイツラバーが相当多いですが、日本製ラバーもそこには十分食い込めると思います」

●−キャパ(キャパシティ・生産量)の問題はありますね。
「製造が全然追いついていないですね」

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