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「ドイツラバーがなかったら、卓球メーカーも卓球ショップも存続できていなかったかもしれない」(正海)

バタフライとドイツラバー

競争があることで、タマスも
『グレイザー』を出しただろうし、
競争があるからドイツラバーも
良くなって来たと思います

 

●−正海さんから見て、卓球のラバーはどう進んでいくと予想しますか。
「ぼくは競争があることで、タマスも『グレイザー』を出しただろうし、競争があるからドイツラバーも良くなって来たと思います」

●−記事にも書きましたが、ドイツでニクラスがESNをスタートさせていなかったら、世界の卓球市場は全く違ったものになったでしょうね。

「大変なことになっていますね。卓球メーカーも卓球ショップも存続できていなかったかもしれない」

●−卓球ショップも影響を受けますか。
「昔ながらに『スレイバー』『マークV』しかない時代だったら卓球ショップは生き残っていけない。選択肢が少ないから」

●−選択肢が少ないとユーザーも動かないということですか。
「そうです。この多様性、この競争は大事で、タマスとドイツだけでなく、他の日本の工場や卓球メーカーにも頑張って欲しい。メーカーもドイツだけではなく、選択肢が多いほうが良い。おそらく『グレイザー』もドイツラバーがなかったら出さないんじゃないですか。出す必要はないでしょうね」

●−正海さんは卓球ショップをやって何年ですか?
「12年ですね」

●−市場が『テナジー』全盛の時ですね。
「『テナジー』一色でしたね。ただドイツ製はたくさんありましたよ、すでに」

●−それで当時定価6千円の『テナジー』が2015年に値上げしましたね。
「あれも大反対でしたね。ぼくも『ふざけるな』と思ってました」

●−その前にタマスは出荷価格を上げていますね。
「その時、ぼくはお店をやっていないですね。ただ、今となっては『テナジー』が値上げして、それによってドイツラバーも上がって、そのお陰で助かっています。売上も上がりました。あれがないと他のメーカーもきつかったと思います」

●−さかのぼると、1997年に『ブライス』を定価5千円にしたことが大きかった。
「そうです、タマスの久保彰太郎(元専務・故人)さんのお陰ですね。『テナジー』が6千円定価だったらお店は成り立たないですね。『G-1』も6千円以上にはできない。ESNだって苦しいと思います。だけど、当時は大反対でした(笑)。タマスの自社生産の強さだと思います」

 

●−一時、ドイツラバーはだいぶ欠品していましたが。
「今はだいぶ落ち着きました。一時は欠品が多かったですね。コロナの時はメーカーも在庫を絞っていたでしょうから。一度欠品すると、ドイツラバーだと違うブランドの似たラバーに移行しますが、同じドイツラバーでも『G-1』や『ラクザ7』とかの日本ブランドのお客さんは不思議と動かないですね。同じようなドイツラバーでも日本メーカーが売れますね。なぜでしょうか。日本人ユーザーは日本ブランドが好きなんでしょうか。特に年配のユーザーはその傾向が強いですね。ティバーやXIOMは相当良いラバーを出しているのに、それになびかないユーザーが一定数います。いまだにまだ『マークV』は売れます。日本人独特の保守的な面があるのかもしれません。そういう人たちは他のメーカーのラバーを見もしません」

●−年齢層でも違うということですね。
「やはりSNSをやっている若い人はどんどん海外ブランドを受け入れています。そうじゃない方々はまだ『スレイバー』『マークV』が多いです」

●−最近、正海さんが注目しているものは何ですか。
「粘着テンションには注目しています。弾みや弧線というのは限界を迎えていると感じている中で、粘着は別ですね。『キョウヒョウ』(紅双喜)、中国選手が使っているからというのがスタートで、次に『K1J』(ティバー)でしょうか。あの辺から粘着が増えてきました。ユーザーも飛びだけではなく、引っ掛かりを気にするようになってきました。昔の粘着と違って、使いやすくなっています。新しい市場として注目しています。タマスよりもドイツのほうが圧倒的に種類が多いですね」

●−最後の質問ですが、今後バタフライとドイツラバーというのはどういう進み方をすると予想していますか。
「近年、『ブライス』までは飛距離を求めて、『テナジー』は球持ちや弧線を求めていましたね。求めるものを変わっていますし、最近粘着テンションも出てきました。この辺が限界かなと思っていて、あとはラバーの寿命かなと」

●−試打してもラバーの寿命はわからないですからね。
「わからないです。だから長寿命のラバーとかに行くんじゃないですか。性能での大きな差は出ない気がします。ただ記事に書いているようにラケットの素材が自由化になったら大きく変わりますね。そうなるとラバーの面白みはなくなってしまいます。卓球自体も変わるでしょうね。そうなると卓球ショップが生き残っていくのも難しくなります。ショップが生き残るためにはラバーを売るしかないので、ラバーの回転率が落ちるとショップはやっていけない。卓球ショップは売るために学校に行ったり、地域に行ったり、障害者卓球も回ったりしているので、ショップが地域の卓球に貢献していると思います」
ーーお答えいただきありがとうございました。

 

別冊「卓球グッズ2023」のメイン特集は「バタフライvs.ドイツ」で、過去のバタフライの影響力や、ベールを脱いだESNの取材を行っている

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