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正解なき卓球の五輪選考方式。宮﨑専務理事「上位の選手が本大会に出る、日本で一番強い集団をオリンピックに送り込む」

7月11日にITTF(国際卓球連盟)が発表した「パリ五輪の選手の出場資格」。

日本卓球協会の宮﨑専務理事は「日本が団体出場枠を獲得した時に(日本であれば)JOC(日本オリンピック委員会)がシングルスの選手を決められると理解してもよいか、とITTFに質問をメールや電話でしてきた。『日本で決めても良い』と聞いたが、ITTFかIOC(国際オリンピック委員会)から正式な文書がほしいと要求してきたが、まだもらっていない」と8月10日の緊急会見で説明し、それに先立って9日には選手への説明会を行っていたことを明らかにした。

ITTFとのやり取りの経緯や、五輪代表の選考方式に関して改めてインタビューで伺った。

日本卓球協会・宮﨑義仁専務理事独占インタビュー後編

聞き手=今野昇

 

「今私たち協会がやっている

仕組みのほうがありがたい、

という声は聞こえています」

 

●以前の宮﨑さんへのインタビューで、去年の9月に五輪選考基準を打ち出した時に、コロナということもあったけど、実際にWTTの大会もない、今後どうなるかわからない、世界ランキングは正しい基準ではない、だから国内選考会、Tリーグでのポイントや他の主要大会のポイントで代表を決めますと言ってました。
 ところが、今年の2022年はある程度の選手が出場可能な大会として、WTTは8から10大会くらいを開催しようとしています。ユースの選手の大会もあります。見方によってはWTTはそれなりに大会をやっていて、世界ランキングも機能しているという見方もできます。もっと日本卓球協会が柔軟に対応すべきではないかという意見もあります。
宮﨑 そういう意見はぼくには聞こえてきません。私に聞こえてくるのは、今年WTTグランドスマッシュが中止になり、来年の2大会もひとつはアジア競技大会と重なるので、1大会は中止になるだろう。そうするとシンガポールのグランドスマッシュしかなくて、ポイントは大きいけど、そこに出るのは限られた選手だけなので、フェアじゃないということは何人かの選手が言ってきました。下の大会に世界ランク20位より上の選手が出られないけど、出られる選手もいる。その選手がなぜ出られるのかもわからない。こういう状態が公平かと言われるとそうではない。今私たち協会がやっている仕組みのほうがありがたい、という声は聞こえています。

●今、宮﨑さんが言っていることを通すのであれば、24年のパリ五輪後も、協会は(国内重視のやり方を)踏襲することになるのでしょうか?
宮﨑 それは24年パリ五輪が終わった後、強化本部長が考えるところで、個人的に言わせてもらえば、パリの成績が悪ければ、もう一度世界ランキング(で選ぶ方式)に戻してもいいと思います。パリの成績がある程度良ければ踏襲した形にして、次のオリンピックまで4年間あるし、選手は下から上がっていくこともできるので、世界ランキングが半分、国内のポイントを半分というミックスさせたやり方を考えることもできると思います。
今回、このやり方でやる以上は、結果はどうなったのかということをしっかり精査して、悪ければ元に戻す、成績が良ければそのまま続ける、もしくは世界ランキングがある程度正確になるのであれば、世界ランキングの点数を半分にしますと柔軟に対応はできます。とにかく選手にとってランキング上位だけが優遇されるのは避けたいし、急激に成長した選手を評価できなくなり、卓球界の発展を阻害する恐れがあるので、みんなが頑張ればオリンピックに手が届く、その頑張る切磋琢磨が日本のレベルアップにつながると私個人としては考えています。

●しつこいようですが、来年の23年でWTTが十数大会やるとしても、日本は国内選考会のやり方を変えないんですか?
宮﨑 一度、決めたことを途中変更したらスポーツ仲裁機構に訴えられることになるかもしれません。協会としてもそれ(変更)はできないし、選手としてもそれは受け入れられないでしょう。軌道修正は認められない。だから本来は理事会で選考基準として正式発表したいので、ITTFとIOCから「NOCが決められる」という一文の入った文書がほしい。これは時間をかけて待つしかない。ただメールや電話では向こうは認めていますから、いつかは出してくれると信じています。

●さっきおっしゃったスポーツ仲裁機構というのは、「選考方法を変えるのはおかしい」と選手が協会を訴えるという意味ですね。
宮﨑 そうです。

●一方、もしITTFが明記してくれないで日本が独自で選んでしまうと、選手からスポーツ仲裁機構に持っていかれますよね。
宮﨑 ありえますね。だから、ITTFとのメールのやり取りを、選手にも隠さずに説明をしています。ITTFが世界ランキングの名簿を出しても、最終的に選ぶのは協会であって、国内選考会等のポイントの上位者を選びますと伝えています。選手からは質問、異議は一回もありませんでした。次の説明会で選手から異議が出るかもしれないし、その時にはさらに丁寧に説明していきます。

●選手やスタッフ、母体というのは宮崎さんの言っていることや、協会とITTFとのやり取りに関して理解して、納得しているという意味ですね。
宮﨑 今まではあまり理解していなかったと思います。メディアのみなさんが「五輪のシングルスは世界ランキング上位者1位、2位が選ばれる」という報道をされた後に、急いで国際ツアーに申し込んだ選手も多くいるし、国内選考会をキャンセルして国際大会を優先しないといけないと選手間で言っているということは聞きました。一方、監督、強化本部長には今までのITTFとの連絡過程を伝えてきました。
7月11日に電話、メールをいただいたメディアに対しては、「ITTFは各NOCが選んでいいと言っている」と伝えています。ITTFが発表した文章には「(世界ランキング上位者1位、2位が)望ましい」と書いていて、私たちが聞いた時もそう言ってました、「NOCが選んで良い」というのが「カッコ書き」であったのに今回は抜けていました。
私たち(協会)に連絡がないまま、ITTFのホームページを見て記事にしたメディアは世界ランクの1位と2位で日本代表が決まると書いたのだと思います。そこを訂正したかったし、ラウルさんはすぐに文書を送ると言っていたのですが、言葉ではOKをもらい、メールでも日本が選んでいいといただいているので、経過説明として選手に伝えなければいけないと判断しました。
選手からいろいろな意見が出たら協会として対応しなければならないと思って、説明会をしたら、全員の選手から意見は出なかったので、「わかりました、理解しました」ということだと思ったので、すぐにメディアのみなさんにお伝えしたかった。

●極端な想定ですけど、五輪代表を狙うためにWTTには出ないで選考会やTリーグだけに集中する選手も出てくるかもしれない。
宮﨑 それは選手個人の考え方だからわかりません。目標をどこに置くかは選手一人ひとりが違いますから何とも言えない。オリンピックに出て、オリンピックでメダルを獲ろうとする選手は世界ランキングを上げようとするし、選考会に出てポイントを取って代表になろうとするでしょうから、心配はしていません。世界ランキングが(五輪の)シードを取るうえで重要だというのは誰もがわかっていることなので、そこを阻害しないように来年のスケジュールも配慮しています。

●今までの日本卓球協会の強化本部は戦略的に世界ランキングを上げながら(チームランキングも考慮し)メダルを狙ってきました。でも、今のやり方は国際競争力よりも国内競争力に選手が向かうのではという懸念があります。
宮﨑 中国では「世界で勝つより国内で勝つ方が難しい」と言われます。日本もそういう時期に来ると思っています。国内でトップに立つ人は世界ランキングでもトップに立つし、日本はそういうレベル、特に女子はそうなっている。国内でしっかり勝つ人が、国際的にも勝てるようになってきていると思います。
たとえば、日本の若手でWTTのグランドスマッシュやチャンピオン、カップファイナルに出る資格がないが、全日本選手権に出ても決勝まで行くくらいの力は十分にある、という選手は今までもいたし、これから出てくると思う。こういう選手は過去の世界ランキングが高くないと(WTTに)出られない、本当の実力でオリンピック選手を出せるかという点で懸念される。国内選考会で何回も戦って、上位の選手が本大会に出る、日本で一番強い集団をオリンピックに送り込む、結果としてその集団は3人とも世界ランキングでも上位であってほしいと望んでいます。

●日本の卓球ファンはパリ五輪のメダルに期待しています。最後に、協会として改めて、選手たち、卓球ファンに向けてのメッセージをお願いします。
宮﨑 どこを目標に、どこを目的に頑張ればよいのだという道標を作ってあげるのが協会の仕事です。協会は考え方をぐらつかせることなく選手への道標を作ってあげたい。選手はその道標に沿って自分のパフォーマンスを発揮してほしい。そして日本の1位、2位となって代表権を獲得してほしい。その中にはアジア競技大会、アジア選手権、世界選手権の国際大会の個人戦も入っていて、そういう大会で勝った時のポイントは国内大会よりも高い。国内だけを見ているわけではないし、中国のトップ3に勝ったらポイントを獲得するという基準も選手からの要望で入りました。選手たちの要望も受け入れた中で、オリンピックに出て最高の成績をあげてほしいと思っています。
●今日はありがとうございました。
(8月11日インタビュー)

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