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五輪代表選手たちの熾烈なWTTの4連戦。そして残り2大会でのシード権争い

オリンピック前にこれほどの国際大会の連戦は、かつて誰も経験していない。

2021年の東京五輪の時にはコロナ禍ということもあり、国際大会の開催がほぼなくなり、国内での調整を経て大会を迎えた。また、2016年リオ五輪まではITTFワールドツアーが行われており、5月のアジアシリーズでほぼ国際大会を終え、7、8月からのオリンピックに備えるということを繰り返してきた。

ところが、今回、オリンピック代表の選手たちは5月20~26日のWTTコンテンダー・リオデジャネイロ(ブラジル)を皮切りに、WTTチャンピオンズ(中国・重慶)、WTTコンテンダー・ザグレブ(クロアチア)、WTTスターコンテンダー・リュブリャナ(スロベニア)と4週連続でWTTに出ている。

さらに1週間空けて、コンテンダーのチュニス(チュニジア)、スターコンテンダーのバンコク(タイ)に参戦し、もし決勝まで進めば7月7日までが試合となる。

これほど苛酷な大会日程をオリンピック代表の選手たちがこなすのは理由がある。それは7月16日に行われるパリ五輪のドロー(抽選)で、より良いシード権を獲得するためだ。

世界ランキングによる女子団体の第2シードは確定、シングルスでは早田ひなの第3シードも確定で4番目が韓国の申裕斌。日本の平野美宇は5番目で、あと2大会で申裕斌を追い越し、4番目に上がる可能性もあるが、チュニス大会にはエントリーしていないので、バンコクでのスターコンテンダーだけで400点以上を逆転するのは難しいだろう。

第3、4シードであれば、中国選手とは準決勝まで対戦しないが、5位以下となると、準々決勝で中国選手と対戦する可能性は2分の1の可能性になる。(準々決勝に出るのは8人だが、同国選手は別々のブロックになるため、中国選手、もしくは第4シードの選手と準々決勝で対戦する)。

WTTのザグレブ(クロアチア)、リュブリャナ(スロベニア)の2大会連続で2冠となった早田ひな

 

●パリ五輪出場選手による世界ランキングによる女子シングルスの順位 
*( )内は6月18日現在の獲得ポイント

1位 孫穎莎(中国・8200)
2位 陳夢(中国・5360)
3位 早田ひな(日本・3600)
4位 申裕斌(韓国・2080)
5位 平野美宇(日本・1643)
6位 スッチ(ルーマニア・1605)
7位 A.ディアス(プエルトリコ・1520)
8位 鄭怡静(チャイニーズタイペイ・1462)

男子団体は中国の1位とドイツの2位はほぼ確実。以下は世界チームランキング3~6位のチームと獲得ポイント(2024年6月現在)

3位 フランス(4420)
4位 チャイニーズタイペイ(4210)
5位 日本(4194)
6位 韓国(4188)

世界チームランキングは現在世界シングルスランキングの上位3名の獲得ポイントの合計と、チーム獲得ポイントの合算でランキングが決まっている。上記の4チームが第3、4シードの座を巡って激しく争っている状態だ。
同様に男子シングルスのパリ五輪出場選手では、張本は第5~8シードを確保できる見込みだが、戸上も9位につけ、残り2大会で8位の張禹珍の上に行き、第8シード以内を確保したいところだ。

●パリ五輪出場選手による世界ランキングによる男子シングルスの順位
*( )内は6月18日現在の獲得ポイント

1位 王楚欽(中国・7925)
2位 樊振東(中国・4228)
3位 F.ルブラン(フランス・3587)
4位 カルデラノ(ブラジル・3580)
5位 林昀儒(チャイニーズタイペイ・2616)
6位 チウ・ダン(ドイツ・2015)
7位 張本智和(日本・1980)
8位 張禹珍(韓国・1665)
・・・・・・・・・・・・・・・
9位 戸上隼輔(日本・1370)
10位 シェルベリ(スウェーデン・1330)
11位 アルナ(ナイジェリア・1280)
12位 A.ルブラン(フランス・1278)

●混合ダブルスの順位
1位 王楚欽/孫穎莎(中国・6780)
2位 林鐘勲/申裕斌(韓国・3990)
3位 張本智和/早田ひな(日本・3605)
4位 黃鎮廷/杜凱琹(香港・2695)

混合ダブルスでは第2シードを獲得できれば、中国とは決勝でしか対戦しない。第3シードだと準決勝では2分の1の確率で中国ペアと当たることになる。日本の張本/早田ペアは残り2大会で、林鐘勲/申裕斌(韓国)との385点の差を逆転できるか。気を抜けない状態だ。

混合ダブルスの第2シード争いで韓国ペアを猛追している張本/早田の日本ペア

混合ダブルスのランキングで2位をキープしている林鐘勲/申裕斌(韓国)

<写真提供:WTT>

 

現在、世界の卓球界はWTTを中心に国際大会が開催されているが、WTTグランドスマッシュとオリンピックでの優勝者の獲得ポイントは同じ2000点で、世間一般の注目度とは全く別に「WTTグランドスマッシュはオリンピックと同格」と表明しているようなものだ。

テニスやゴルフの国際ツアーがロールモデル(規範)になっているWTT。オリンピックを軽視しているとは思えないが、トップ選手はオリンピック直前までWTTに参加し、シード権を争っている。バンコクでのスターコンテンダーから3週間足らずで迎えるオリンピックは、選手への負担が相当に大きいとも言える。

一方、第1、2シードを早々と決めた中国は他の国よりも1カ月以上前に強化合宿に入り、オリンピックに備えている。

シード権争いも重要だが、オリンピック代表選手にはケガや故障がないようにWTTの試合を終えてほしいと願うばかりだ。(今野)

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