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「変えて」強くなる 岸川聖也

 

8日8

 

<卓球王国2011年9月号より>

 

あなたの潜在力は眠っている

「変えて」強くなる

岸川 聖也

元五輪日本代表

Seiya Kishikawa

 

ドイツに行ったことで、

自分のすべてが変わった。

 

15歳(中学3年)の時にドイツへ行ったことが、ぼくにとっては一番大きく、すべてが変わった。ただそれは自分が準備して行ったというよりも、まわりがどんどん話を進めていて、ぼくは行くしかなかった。

 

中学2年の時から練習でドイツに行っていたので、15歳でいきなり行ったわけではなかった。中2で行った時もデュッセルドルフに1カ月間滞在した。柳承敏(韓国)やメイス(デンマーク)といった世界のトップ選手が練習していて、それを間近で見られて、たまに一緒に練習もできる。そういう環境に自分自身が驚き、こういうところでやれば強くなるんだろうなと思った。こればかりは行かないとわからない。実際に海外に行ってみて、初めてプレースタイルの違いや練習の違いがわかるものだ。日本とヨーロッパでは相当に違うものだから。

 

ただし、中3で1シーズン行った時は、環境が違いすぎて大変だった。やはり1カ月の滞在と、1シーズン向こうに住むというのは相当違うし、言葉もそれほど話せないし、若いからさほどではないけれど、ストレスがたまった。ただ、ドイツに住んだ1シーズン目の途中で全日本選手権があり、中3でジュニアで優勝できたので、それで自信を持てた。

 

技術面はわからないけど、やはり気持ちが変わっていった。ドイツに行って良い練習をしているのに国内で負けている場合じゃないという思いはあった。シニアになれば1歳、2歳上の人とやるのは当たり前。ドイツに行って世界を目指していくという気持ちがあったので、そういう環境では年下とか年上は関係ない。ドイツにいて練習したり、試合をしていると、若くて強い選手が多いし、年齢は本当に関係ないと思った。ぼくらと同じジュニアの選手でもバリバリお金を稼いだりしていたから、ビックリしたのを覚えている。

 

ぼくも中学1年くらいまではフォアハンド中心の卓球だったけど、その後、マリオ(アミズィッチ)に会って変わってきた。ヨーロッパの選手はバックハンドがすごいから、それを見てバックハンドを使おうと思ったし、マリオもバックハンドを教えてくれた。そういう意味では、ドイツに行ったことで自分のプレースタイルは大きく変わったと思う。ただ、自分で「さあ、変えるぞ」と取り組んでいったわけではない。ドイツでやっていれば、バックハンドは当たり前のように使うわけだから。

 

一方で、ぼくとか坂本竜介(協和発酵キリン)さんが日本の若い選手のスタイルを変えていったという意識はある。ぼくらの年代からフォアもバックも振れる選手が増えてきたし、今はそういう卓球を若い子が真似して、「変わってきた」という意識はある。

 

ドイツでの7年目のシーズン、強豪ボルシア・デュッセルドルフ時代の岸川聖也。横にいるのはボル

 

ドイツに渡り、岸川のプレーは大きく変わった。両ハンドを自在に操るスタイルは、下の年代の選手たちにも大きな影響を与えた

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