卓球王国WEBでの情報は、よく(無断で)中国のスポーツメディア、卓球メディアのネットニュースに引用されることがある。この記事が中国の卓球ファンや、ひいてはシンガポールのWTT(World Table Tennis)に伝わることを前提にして原稿を書きたい。
世界選手権成都大会の期間中、卓球王国編集部に1本の電話があった。「YouTubeやテレビの試合を映すカメラが横位置にある。あれは見にくい。しかるべき人に伝えてほしい」と。
大会期間中、そしてその前のWTTを放送している時にも「カメラの横位置はやめてくれ」という数多くの声がSNSであがった。テレ東では独自のスイッチングで右後ろからの映像にしていたようだが、世界に流れていたYouTubeなどの動画配信ではメインは横位置だった。つまりWTTが作る映像は横位置をベースにしているのだろう。
横位置のカメラアングルは実に見にくい。
一般の視聴者にも不評な「横位置カメラ」をなぜWTTは採用しているのか。
「新しい卓球の価値の創造」を掲げているWTTは、従来の卓球放送の概念を変えたいと思っているのだろう。卓球台、床やフェンスをそれまでのブルーや赤色から黒色に変え、スタイリッシュな雰囲気を演出しようとしている。このカラーコーディネイトにしても、見やすいと言う人もいるのだが、台や床の黒が選手の顔に反射するので写真や映像でアップにした時に選手の顔色がくすんでしまうのも事実だ。(今までのWTTの映像を見れば顔色の悪さはわかる)
さらに何十年も前から卓球台の後方から撮影するメイン映像も、横位置からのカメラをメインに変えた。新たな発想としての挑戦は理解するが、長年、卓球を撮影した放送人の知見を無視したとも言える。
なぜ横位置が見えにくいのか。
ボールのスピードが速いために目の動きが追いつかない。そして、カメラフレームに両選手を入れようとして、カメラを引いた位置から撮影するためにボールはより小さく見える。小さく見えるボールによる左右の速いラリーでは、目でボールを追いかけるのは困難だ。
以前のITTF(国際卓球連盟)のワールドツアーなどの画面では、カメラは相当高い位置にあり、フレームに両選手を入れようとした。ボールは画面の中で上下に動くが、目で追いかけられる。画面の左右でのボールの動きの大きさよりも、画面の中で上下するボールの移動距離は小さい。ただしカメラの位置は高すぎた。
今大会の期間中にテレビ東京の「卓球塾」の企画で、試合を見ながら水谷隼さん(東京五輪金メダリスト)と雑談し、それをライブ配信することを行った。
その時に水谷さんは「横位置はやめてほしい。選手の体でボールが一瞬見えなくなるとしても、後方から低めのカメラ位置が一番良い」と語っていた。同感だ。その位置がもっとも卓球の迫力がわかる。
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