<2025年1月号編集後記より>
11月1~4日、石川で行われた全日本選手権(マスターズの部)を取材した。今回はマスターズの特別号を制作するため、今野昇・発行人とふたりで取材。「出場している選手を撮れるだけ撮るぞ!」と1回戦からシャッターを押しまくった。
男女計18種目を行う全日本マスターズの取材はハードだが、私は今年で3年連続のマスターズ取材。出る人だけでなく、見る人にも「中毒性」がある大会なのだ。
今大会で印象に残ったシーンは山ほどある。女子フォーティ決勝で、クールにラリーを展開した上原美月さんと朱夢軍さんが表彰式で見せた笑顔は、こちらも自然に笑顔になるほど輝いていた。
マスターズは外国籍選手は出場できないが、大会申込み時点で「外国出生で10年以上継続して日本に在住している」選手は出場できる。今大会は5種目で中国出身の選手がチャンピオンとなった。
あまりの強さに眉をひそめる人もいるかもしれないが、元中国代表の羽佳純子さんの「日本でレディース卓球の人たちに出会って、卓球が楽しいと初めて思った」という言葉が頭に浮かんだ。中国では常に競争の中に身を置いてきた選手たちが、日本のマスターズで思い切り卓球を楽しむ姿も素敵だと思うのだ。それに今のマスターズは、中国選手なら必ず勝てるかというと、それほどあまくはない。
一方で、上の年代では勝利への飽くなき意志に感服することも多かった。男子ハイシックスティでは坂本憲一さんが通算20回目の優勝。断トツの強さを誇りながら、「1回戦から苦しかった。私にはみんな向かってくるし、1ゲームでも落とせば試合の流れは変わってしまうから」と坂本さんは油断を見せない。群雄割拠のマスターズでチャンピオンであり続けるのは、並大抵のことではない。
「もう技術じゃない、体力と気力です」と勝因を語ったのは、男子ローセブンティ優勝の長谷川豊信さん。勝負どころで相手を見据える鋭い眼光は、さながら剣豪の如し。優勝してなお「また精進してまいります」と語る姿勢に脱帽だ。
マスターズには、さまざまな卓球人の人生が詰まっている。
卓球を愛する気持ちがある限り、誰もが年齢に関係なくボールを打ち続け、あきらめなければいつかはおとずれるかもしれない歓喜の瞬間を夢見る。
大会閉幕後、何度も渋滞に巻き込まれながら8時間かけて東京に戻った王国取材班ふたり。選手の皆さんと日本海の海の幸に元気をもらい、充電完了。充実のマスターズ特別号(詳細はこちら)にご期待ください。
〈副編集長 柳澤太朗〉
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