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世界最大の競技者用卓球ラバーサプライヤー、ドイツ・ESNのパーソンCEOが語る「未来のラバーを作り出す挑戦」

卓球は、世界中に1億人以上の愛好者を持つスポーツである。卓球では、木材を基にしたラケットに、天然ゴムと合成ゴムの加硫によって作られる「ラバー」を貼り付け、木製の卓球台さえあれば、限られたスペースでも楽しむことができる。この競技は1880年代にイギリスの貴族の間で流行し、現在でも「ピンポン」として親しまれている。

卓球ラバーの用具市場は、数十のメーカーがしのぎを削っており、ラケット、ラバー、ボールの生産によって成り立っている。一方で、世界のリーディングカンパニーである「バタフライ」ブランドのタマス(本社:東京)に対し、競技者用ラバーの製造枚数では世界最大のサプライヤーの座にあるのがドイツのESNだ。

1991年に設立されたESNは、現在約300名の社員を抱え、3シフト制で毎年数百万枚のラバーを生産。また、選手の発掘・育成を支援するグループ会社や、卓球のデジタル分析を行う「スピンサイト」を通じて、世界唯一の「卓球テクノロジー企業」として成長している。ESNはOEMとして、世界の17ブランドにラバーを供給し、卓球界への影響力を持っている。

ESNを牽引するのは、創業者ゲオルグ・ニクラスの後継者、ハンス・パーソンCEOである。スウェーデンの名門「ファルケンベリ」クラブの出身で、チャルマース工科大学では核物理学を専攻し、博士号を取得。ボルボ・グループで副社長を務めた後、2017年にESNの社長に就任した。

ESNが供給する卓球ラバーが似通っているという指摘に対し、パーソンCEOは「ラバーの組み合わせは無限大です。卓球メーカーが求める特性に応じた試作ラバーを提案し、テストを経て製品化を目指します」と回答。卓球の進化に対応する未来のラバーの開発が、研究への大きな原動力となっていると語った。

また、ESNは環境にも配慮し、エネルギーコストの高騰を受けて太陽光発電システムを導入。将来的には、全電力を自給できる計画を持つ。工場で生じるゴムのカット材は工業用カーペットとして再利用され、70%がリサイクルされている。ESNの本社から500mの場所には、データ分析を行う「スピンサイト」のラボがあり、フランス卓球協会や有望な若手選手たちが活用する機会が増えている。

バタフライが商品開発や品質向上に注力しているのに対し、ESNは様々なメーカーや選手の声に耳を傾け、選手育成やデジタル分析を活用しながら新しいラバーの革新を目指している。OEMの立場にあるため、卓球メーカーはESNの名前を公開しないことが多いが、VICTAS(本社:東京)との10年以上にわたる良好な関係のおかげで、新ラバーの発表などが行われている。

松下浩二社長は、「企業は限られた資源の中で成長しなければならない。今の時代、自社工場を持たないファブレス(製造設備を持たずに設計や販売に特化し、製造を外部に委託するビジネスモデル)の企業が非常に増えている。自社でラバーを最初から立ち上げるのは大変で費用がかかるため、ESNのような優れたパートナーと組むことで、効率的に開発できます。良いラバー工場と組んでいることを宣伝したい。そのほうが信用も得られます」とポジティブな見解を示した。

パーソンCEOは「現在300名以上の社員が在籍しており、その中には高い学術教育を受けた研究者もいます。私たちはテクノロジーを活用し、卓球のさらなる発展のために取り組むことができると信じています。また、私たちはラバー工場の枠を超え、協会やITTF(国際卓球連盟)とともに議論を重ねています。私たちは、メーカーの背後に隠れるのではなく、公共の場に出て行きます。卓球メーカーとのさらなる協力を進め、互いに深く理解することが重要です。ラバーを作るだけでなく、卓球市場に貢献していく方向性を持っています。」と前向きに述べた。

卓球ラバーの製造は精緻な工程と膨大な知見を要するため、大規模な市場であっても新たに参入するのは容易ではない。日本のバタフライ、ドイツのESN、そして中国の紅双喜がそれぞれ独自の戦略で競争を繰り広げ、卓球ラバー市場での革新を続けている。これからの卓球ラバー競争の動向にも注目が集まる。

天然ゴムと合成ゴミの加硫(ESN)

 

巨大なESNの工場だが、精緻な製造工程はほぼ撮影禁止(2023年)

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