卓球王国 2024年11月21日 発売
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なんとも素敵な試合後の瞬間。そして発刊後に人と人をつなげる「全日本マスターズ2024」

ゲームセットの声がかかり、勝った人の喜びの声があがり、負けた人は首を傾げながら悔しい表情を見せる。しかし、その直後にどちらからともなく歩み寄り、肩を抱いたり、背中をポンポンと叩いたり、お互いの健闘を称え合う。

それは熱い空気が充満する高校生や大学生の試合とも違うし、最高峰の「全日本」とも違う。

真剣勝負を繰り広げながらもお互いをリスペクトしている「全日本マスターズ」ならではの風景だった。試合後に「あのサービス良かったな」「バックハンドが強いよ、まいった」などと声を掛け合いながら、しばらく談笑する。この人たちは地方予選を勝ち抜きながらも、石川の地に集まり、本当に卓球を楽しんでいる。写真を撮りながら、こちらもついつい微笑んでしまう大会。

卓球王国特別号「全日本マスターズ2024」は書店売りをせずに、卓球ショップや直販のみの限定版だ。1回目の試みなので外部の人を入れないで、自分たちだけで作るとどのくらい大変かを実感した。

できるだけたくさん、できるなら出場者全員、そして全員名前をいれる、ということを告げると編集スタッフは表情が曇った。無謀だ。名前を入れるためには背中のゼッケンを撮らなければいけないからだ。撮影者は自分を入れて2名だけ。そして、会社に戻り、パソコンのモニター上で全部が写ることのないゼッケンを一枚ずつ拡大して、名前の断片、所属チーム、ある時は対戦相手のゼッケンも確認していく。

製作前にはそこまで考えないほうがよい。編集作業を投げ出したくなるから。とにかく特別号に掲載されたら選手の皆さんに喜んでもらえるはず、という一方的な思い込みで突き進むしかない。

卓球王国で毎月200ページをこなす編集部スタッフは休日返上で「発行人のワガママ」にお付き合いいただいた。感謝しかない。

本誌(月刊)では全日本マスターズを紹介できるのは6ページだけだ。全日本やインターハイなどの一部の大会を除いて、ほぼすべての取材対象の大会はそのくらいのページ数でしか報道できない。特定の大会だけを報道する一冊ができないかと以前から考えていた。デジタル(ネット)での紹介もできるが、ほんの1週間くらいで消えてしまう感覚に陥る。

紙ならではの記憶に刻む特別号を作りたい。その大会に参加した人しかニーズはないかもしれない。だからこその限定版。作るにあたり、卓球メーカーにもご協力をいただいた。ありがとうございました。

本格的な試合の撮影は2016年のリオ五輪以来。1日目にして足腰にダメージ、情けない。2日目はさらに辛い。本来の大会担当だった「タロー」こと柳澤太朗にも負担を強いることになった。だが、全日本マスターズだけで100ページを越える一冊を作ることができた。クレイジーだが喜んでもらえただろうか。

836名の選手たちが登場する一冊。掲載できなかった人たちには本当に申し訳ないが、これだけの卓球の猛者たちが繰り広げる「もうひとつの全日本」を感じ取っていただけたらこの上なくうれしい。

発刊後に、卓球ショップや直接本人から会社に注文が来る。これも書店売りの月刊卓球王国とは違うものだ。そして個人的にも「◯◯県のこの人に送ってもらえますか」と依頼されるが、卓球仲間のつながりが見え、卓球人同士の会話が生まれていることを嬉しく思う。

来年のことはわからないけど、「作ってよかった」。今、しみじみそう思っている。

<卓球王国発行人・代表 今野昇>

 

↑卓球ショップ、アマゾン、卓球王国(直販)で発売中の「全日本マスターズ2024」

 

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