卓球王国 2021年7月20日 発売 vol.292
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バタフライは終わりか。それとも始まりか。

<卓球王国別冊『卓球グッズ2016』より>

 

東京・阿佐ヶ谷にあるタマス(バタフライ)本社ビル

 

世界のリーディングカンパニー「タマス」こと、「バタフライ」ブランドに何が起きているのか。

常に卓球メーカーの中で先頭を走り、卓球市場でのプライスリーダーとして、この会社の一挙手一投足にほかのメーカーは目を光らせ、注意深く見つめている。

そのバタフライが2010年以降、様々なアクションを起こし卓球界にメッセージを発している。

トップカンパニーの真意を探ってみる。

 

文=今野昇

 

 

『スレイバー』『ブライス』『テナジー』という

卓球市場をリードする商品を

出し続けてきた

 

1967年の『スレイバー』の発売に始まり、高弾性高摩擦裏ソフトラバーの時代を切り開いたタマス社の「バタフライ」ブランド。1997年にテンション技術を開発し、『ブライス』を発売。それまで小売価格2千円台後半だったラバー市場で、5000円(税抜き本体価格、以下同様)という価格をつけて、業界やユーザーに衝撃を与えた。さらに2008年には『テナジー』でもスプリングスポンジを開発し、6000円の価格をつけた。常にバタフライというブランドが、価格でも技術でも先頭を走っている。

ラケットでは1978年にカーボンラケットを発売すると、その後、アリレートカーボン、ZLカーボンなどの素材ラケットを出したり、特殊素材を内側に配した『インナーフォース』シリーズを発売する。常に用具開発や新しいマーケティング戦略で先駆者となってきたのがバタフライなのだ。

2010年以降、タマス社は変革を試みたが、それがユーザーや卓球ショップに直接影響することだったために批判を浴びることも多かった。

まず10年に世界での商品の出荷価格を上げた。と同時に、ヨーロッパの販売代理店の組織を変えた。ドイツの大手流通業者の「ショーラ・ミッケ」「スポーツ・シュライナー」との取引をやめた。これらは取引先でありながら、それぞれ「アンドロ」「ドニック」のブランドを持っている商売敵(がたき)とも言える会社であり、自前の販売ルートを確立しようとした。

この時のテナジーの値上げは、日本のネットショップのヨーロッパからの逆輸入を防ぐ目的もあった。

つまり、10年当時は円高で1ドルが90円前後、1ユーロ110円前後だったために、日本のネット業者がヨーロッパのネットショップ(あるいはメーカー)から買い付けて、逆輸入をして日本で利ざやを稼いでいた。本来、国を超えてのビジネスであれば関税がかかるのだが、ブラックバイヤー(非正規購入業者)は贈答品扱いとして国際郵便で取り寄せて、テナジーなどを低価格で買い付けて卓球市場を混乱させた。

10年の時点でヨーロッパでのテナジーの小売価格は56.9ユーロ。当時のレート(1ユーロ=112円)なら小売価格は6384円となるが、実際には割引価格で購入できても日本との価格差がなくなり、日本への逆輸入を阻止した。

この時には少し遅れて海外市場だけではなく、国内での出荷価格も上げた。その際に卓球ショップでの「バタフライ」の割引が小さくなったことをご記憶の方もいるだろう。

 

 

 

2014年4月にリファインされた

ロゴとマークを発表し、

ブランディングを変える試み

 

14年4月には世界選手権東京大会が開催された。大会のオフィシャルスポンサーであったバタフライは、その大会で「Butterfly」のロゴを刷新し、蝶をイメージした二つの楕円やカンパニーカラーも変えた。それは1991年にロゴを刷新して以来、23年ぶりのチェンジだった。タマス規模の会社がブランドロゴを変更することは億単位の経費がかかる。

このロゴの変更をタマス社の大澤卓子・代表取締役専務(2016年当時・現社長)は「リファイン」(Refine=洗練して改良すること)と呼ぶ。「以前のバタフライ・ロゴは20年以上前にデザインされたものですが、当社といたしましては、企業ロゴやマークは時代に応じてリファインするべきものだと考えていました。そのため、このたびのバタフライ・ロゴのリファインをきっかけにしてラバーのパッケージなど各種のデザインを変更しました。ロゴのリファインには、グローバルにバタフライのイメージの浸透を図り、これまで以上に信頼していただくブランドに成長しようという思いを込めました。構想から数年を費やしましたが、バタフライ・ロゴを変更したことで、その後に課題を解決していくトリガー(引き金)になりました」(大澤)。

ロゴとマークの製作は、デザイン界の巨匠と呼ばれ、卓球大好きアートディレクターの浅葉克己氏がデザインし、このロゴの変更以来、ロゴとマークの使い方は統一された。ロゴとマークをセットで使う場合もあれば、ロゴだけ、マークだけを使う場合もある。