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今野の眼

WTTのエントリー権は個人に移り、選手個人のウエアで参加するようになるのか!?

自費参加の選手は「協会ウエア」ではなく

「個人スポンサーウエア」を着る時代が

来るのではないか

 

世界の卓球ツアーとなっているWTTは「協会代表」という形から、テニスのように「個人」エントリーするような形になるのではないだろうか。

わかりやすく言えば、張本智和、戸上隼輔などの選手は日本代表のVICTASウエアではなく、自身の契約スポンサーであるバタフライのウエアを着て、胸に日の丸はなくても、自身のスポンサーのシールがプリントされたウエアを着る日が近い将来、来るだろう。

現在、東京五輪も終わり、各競技団体は「オリンピックのための強化資金」、つまり「補助金の季節」が終わり、予算の切り詰め、強化予算のやりくりに頭を痛めている。日本卓球協会も例外ではないだろう。海外遠征、とりわけWTTイベントに協会派遣として(渡航費や宿泊費などの経費は協会負担)行く選手はごく一部だ。

ほとんどの選手が自己負担で参戦する。もちろん、誰でもが行けるわけでもなく、エントリーには人数制限があるために、世界ランキング上位者が優先されつつ選手派遣は強化本部が決める。

全日本チャンピオンの戸上選手もWTTなどの国際大会では日本代表ウエアを着る

 

全日本選手権では自身が契約するスポンサー付きのバタフライのウエアを着る戸上選手。実際に多くのスポンサーを持つトップ選手でも、個人ウエアを着る機会は少ない

 

WTTは世界ランキングによって選手を選びたいので、「協会による選出」ではなく、「(世界ランキングを持っている)個人」のエントリーに切り替えていこうとするのが自然の流れのような気がする。

参戦のための自己負担といっても、選手によって事情は様々だ。

母体が費用負担する場合。これは所属するスポンサー(企業)が負担するが、大学や高校が負担する場合もあるだろう。学生選手の場合は保護者が負担する場合が多いだろう。学校が費用負担をするのは稀(まれ)だろう。選手の親などが出費するとなると2大会ほど参戦すれば100万ほどかかってしまうので、相当な負担になる。

もうひとつは卓球メーカーが契約の中で、費用負担する場合もある。たとえば、「あなたと年間200万円で契約します。加えて、WTTツアーに行きたい場合は3大会の経費を負担します」というような契約だ。1大会のエアチケット、宿泊費が40万円だとすれば、このメーカーは年間120万円を負担することを契約に盛り込む。実質的な契約金は320万円となる。

選手の契約メーカーがそこまでの費用負担をするのであれば、その選手はツアーではスポンサーウエアを着たいと思うはずだ。メーカーもそれがうれしい。ところが実際に多くのスポンサーを持つトップ選手でも、個人ウエアを着る機会は少ないのが現状。試合でスポンサーとしてのメリットを感じ取ってもらうメリットが小さくなってしまう。

自己負担でのWTTツアーへの参戦が多くなり、しかもエントリーが個人に移るとしたら、選手、もしくは選手が所属するマネジメント会社が考えるのは「選手個人の契約メーカーのウエアを着る」ことだ。

日本代表として出場するオリンピック、世界選手権、アジア選手権、アジア競技大会は当然日本代表としてのエントリーであるが、WTTに自己負担で参戦する場合は個人ウエアを着たい、と思うのは自然だ。その選手の活動はすべて契約メーカー、スポンサーに支えられているからだ。

もちろん、そうなると協会と契約しているオフィシャルスポンサー(卓球・スポーツメーカー)は黙っていないだろう。「国際大会は日本代表で出るのだからオフィシャルウエアで参戦してほしい」と主張するが、WTTイベントはほとんどの選手が自己負担の参戦になっていくと、日本代表ウエアから個人ウエアに移行するのは当然のことではないか。

その分、オフィシャルスポンサーは協会との契約金を下げる交渉に移る可能性がある。また個人参加となって、協会のスタッフが帯同しないケースも出てくるかもしれない。選手と協会(ナショナルチーム)の関係も変わってくるかもしれない。

将来的に、WTTは選手に直接打診して、選手は参戦するかを直接WTTに返答し、協会にも通知する、というやり方になるのではないだろうか。

しかし、これは中国ではあり得ない。中国の場合、国家チームがすべてで、選手個人の意思で国際大会に出場することは認められない。中国選手はある一定の強さになれば、国家チームに選ばれ訓練する。その費用はすべて中国卓球協会が負担して、選手を訓練し、コーチをつけ、育成していくからだ。国際大会も協会の予算で派遣される。

ヨーロッパでは協会の予算は極めて小さく、選手が個人で参戦し、経費を負担して、個人ウエアを着るのは当たり前になっている。韓国選手も、WTTには大韓航空、サムソンなどの所属企業のウエアを着てプレーしている。

日本でもWTTでは選手個人が自分を支えてくれているメーカーやスポンサーのウエアを着るのは時間の問題だと思うが、これは選手が直接、もしくは母体やマネジメント会社が協会に伝えなければ事態は変わらない。つまり日本卓球協会がオフィシャルサプライヤーと契約の話をする時に、包括的に「すべての国際大会でのウエア」という文言で契約するのか、自費参加する選手個人の権利を認めて「指定された国際大会でのウエア」でのオフィシャルウエアを着るのか。

協会のオフィシャルサプライヤーとの契約は次のパリ五輪になる。

近年、卓球選手のプロ化が進み、選手の周りにはサポートする企業、メーカーが集まってきている。中国のように協会が遠征費などの全額負担はできないし、若手選手が育成される過程でも相当なお金がかかり、1チーム(とりわけ学校チーム)、もしくは親が負担するのは困難だ。

前述したオリンピックや世界選手権、アジア競技大会などの日本代表としての大会は別にして、「個人参加するWTT大会は個人ウエア」を着るようになる日が近づいてきてる。(今野)

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