英田理志(あいだ・さとし)はすべてに異色であり、規格外だ。
1月の全日本卓球選手権大会ではノーシードからの初のベスト8入り。2020年シーズンから初参戦したTリーグでは、張本智和、水谷隼、宇田幸矢、戸上隼輔などの五輪代表を含む、日本のトップクラスを次々と連破して、「T.T彩たまに英田あり」とその存在を示した。
卓球を本格的に始めたのが小学6年生。近年、幼稚園生くらいで始めるトップ選手が多い中、明らかに遅い。そして、選んだのは父の戦型、カットマン。守備型であり、粒高や表ソフトという相手の回転を利用できるカット向きと言われる用具を使わず、あえて両面(フォア・バック)に裏ソフトという攻撃用のラバーを貼っている。「他のカットマンが表や粒高をやるなら、他と違うスタイルをやりたかった。自分は絶対裏裏(両面裏ソフト)をやめないと決めてました」(卓球王国最新号)と我が道を貫く。
全日本選手権やTリーグで英田の試合を分析していくと、ツッツキ(台上のカット)やカットという技術を使う割合は30%程度、サービスを持った時は70%以上が攻撃を仕掛ける。これはもはやカットマンというプレースタイルではない。師匠である高島規郎(元世界3位)が唱える「サービス・3球目、レシーブ・4球目の速攻戦術で点を取る。それができない時には変化カットで点を取る。それでもだめな時にはカットで粘り切って点を取る」という三段構えの戦術を、攻撃至上主義と言われる現代卓球で具現化している。もはやカットマンではなく、「変幻自在なオールランダー」と言えるスタイルだ。
彩たまの岸川聖也コーチ(元五輪代表)は「まだ中学生並みの技術もあるけど、向上心とポテンシャルは相当に高い。教えることが多くありすぎるから、まだまだ強くなる」と評している。
異色なのはプレースタイルだけではない。英田の父はキリスト教の牧師をしており、彼自身も敬虔なクリスチャンで礼拝を欠かさない。
卓球王国最新号のインタビューでは、卓球人生での偶然のような人との出会いに関して、「人との出会いも神に導かれているものを感じるということか?」と問われ、「そうです。そういう出会いや結果を『自分が努力したからでしょ』と言ってくださる人もいます。ありがたいけども、自分の中ではその考えは1mmもない。人より走り込みをしたり、練習はしているけど、それが『なぜできるのか』と問われれば、信仰心なんです。支えてもらっている気持ちがあります」と答えている。
ツイート