中学、高校では全くの無名。岐阜の朝日大に進み、東海地区では知られる存在ではあったが、全国区の選手ではなかった。「大学で東海チャンピオンになり、社会人で全日本チャンピオンになる」という目標だけはデカかった。
日本卓球リーグに加盟する神奈川の信号器材に入社するも、スウェーデンリーグでプレーできる話が舞い込み、3年目で退社し、プロ生活に入ることを決断した英田。
「現在の目標は?」と問われれば、「世界チャンピオンになる目標を持たないと、全日本でも優勝できないから、世界1位になることが今の目標です」と大きな目標を掲げている。
しかし、世界の舞台に飛び出すためには日本のナショナルチームに入ることがひとつの超えるべきハードルになる。英田は28歳の誕生日を迎えたばかりで、ナショナルチーム入りは容易ではないだろう。
「ナショナルチームに入らないと国際大会に出るチャンスがないですかね。ぼくを選んでほしいですね。ぼくは必ず活躍しますから」
物静かな28歳の卓球プロ選手は真剣に訴えた。
最近、世間を騒がせている福原愛さんが3歳で卓球を始め、「天才卓球少女」と騒がれてから、「幼少時からの本格練習」が強くなるためのメソッドになり、卓球界において彼女のような育成法がひとつのロールモデルとして示された。水谷隼、伊藤美誠、平野美宇などがそのやり方を踏襲し、強くなってきたのも事実だ。
そのロールモデルに頓着せずに、9年ほど遅く卓球を始めた英田理志。しかも名門校に進まず、部活動と町の卓球クラブの練習のみで腕を磨いた。
「トップ選手になるためには1万時間の練習が必要だ」と、かつての世界チャンピオン・荻村伊智朗(故人)が世界を目指す選手たちを鼓舞した。実際にどのジャンルでも一流になる人は、才能だけでなく、1万時間を超える練習の積み重ねが重要だと言われている。
つまり、最近の卓球日本のトップ選手は才能だけでなく、物心つく頃からラケットを握り、ブンブンと振り始め、中学生くらいでは間違いなく1万時間には到達している。
英田理志は28歳にして、そろそろ1万時間に到達するのかもしれない。年齢は関係ない。彼はようやくトップ選手としてのスタートラインに立ったとも言える。
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