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「ありえないことをやっていかないと、トップの世界にはいけない」田阪卓研の強さを支える、松島卓司コーチの指導法とは

全日本ホープス・カブ・バンビで6連覇を成し遂げ、22年の全国中学校卓球大会では2連覇を達成した松島輝空。彼の強さの基盤を作ったのは、京都の歴史あるクラブチーム、田阪卓研だ。
チームとしても、2016年の全国ホープスで3位入賞、翌17年に全国ホープスで初優勝。さらに2年後の2019年には全国ホープスで2度目となるタイトルに輝いた。また、松島輝空の妹であり、現在田阪卓研で腕を磨く松島美空は、小学3年生にしてノジマTリーグ 2022-2023シーズンに最年少で出場するなど、ここ数年活躍著しいクラブだ。

田阪卓研の練習拠点となる田阪卓球会館は、1955年に現在のオーナーである田阪弘の父・常雄によって作られた。そして3度の移転を経験し、現在の伏見区に定着。以前は弘と妻の和子が中心となって指導を行っていたが、後に娘夫婦の松島卓司と由美も加わり、現在はこの二人が中心となってジュニアの指導を行っている。
卓球王国2023年3月号掲載の『潜入ルポDX』では、そんな田阪卓研にお邪魔し、彼らの強さを支えている練習、そして多くの好選手を育て上げた松島卓司コーチの指導法に迫った。ここでは松島コーチの指導に対する考えの一部を紹介。

28歳で指導者となり、松島輝空をはじめとする多くの好選手を育て上げた松島コーチ。彼が指導の上で大事にしているのは”正解を持たない”こと。指導書や卓球動画はほとんど参考にせず、独自のアイデアで指導を行っている。

「卓球は常に進化していくと思うんです。輝空(息子)が卓球を始めた時、いつか必ず両ハンドがバランス良く振れないと勝てない時代がくる、バックでも得点できるようにしとかなあかんなと思っていました。バック対バックで回り込んだらどうしてもフォアが空いてしまうので、それやったらバックで決められたらいいやんって。当時はあまり言われなかったことかもしれないけど、ありえないことをやっていかないと、トップの世界にはいけないと思っていたので。大人だったら今勝たせなくちゃいけないけど、子どもたちは10年後、15年後に繋げなくちゃいけない。”今”じゃなく、もう一つ先の先ぐらいを見て教えないといけない」(松島コーチ)

田阪卓研・松島卓司コーチ

また「正解を持たない」という指導法には、松島コーチ自身の選手時代の経験も強く影響しているという。「ぼくが今までやってきた練習を子どもたちにさせたら、やっぱり世界を狙える選手には育たないと思う。『俺がやってた練習やー』って言ってオールフォアの練習ばかりしていたら、バックが振れなくなる。ぼく自身、バックが全くできないんです。でもそうなってはダメだから、ぼく自身の教科書は基本的に教えない。自分ができなかったことをまず教えられるように」(松島コーチ)。

「正解を持たない」という指導法が、”今”だけでなく、”この先”も活躍できるような選手の土台を作っていることは間違いない。本人は自分の指導法を「めちゃくちゃ」と言うが、彼が育てた選手はクラブを卒業してからも活躍し続けている。先を見据えた彼の指導によって、今後田阪卓研からどんな選手が育っていくのか楽しみだ。

今回は本誌で載せることのできなかった取材時の一枚。最年少Tリーガーの松島美空選手はカメラを向ければ腹筋中でも笑顔(?)でピース。とにかくサービス精神旺盛だ

 

●卓球王国2023年3月号の詳細はこちら

 

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