卓球王国 2021年4月21日 発売 vol.289
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今野の眼

なぜ卓球のラバーはこんなにも高くなったのだろう。 高いラバーがベストラバーなのか vol,2

「コートリ」と「ドッキン」の呪縛。

卓球用品の二重価格はなぜ生まれたのか

 

割引された商品で卓球愛好者は本当にハッピーになれるのだろうか。

インターネットでの販売(eコマース)がなかった時代、卓球選手は卓球用品を専門ショップか町のスポーツショップで買っていた。

当時は、卓球愛好者は定価で買ったり、せいぜい1割引程度だっただろう。2000年以降、徐々にインターネットでの販売が始まった。

ほどなくして2010年前後から本格的な「割引競争」が始まる。数字(割引率)の競争だ。物売りの自由競争は公正取引委員会が運用する独占禁止法によって守られていて、サーキットブレイカー(強制的に停止させる)制度はない。超薄利の領域まで行ってしまう。しかし、この法律が直接的な安売りの原因ではないだろう。適切な価格競争なら問題ないのだが、度を越した割引が問題になる。

卓球メーカーや問屋には全国の卓球ショップから「なんとかネットでの過度な割引をやめさせてくれないか」という苦情が寄せられる。しかし、「コートリ」(公正取引委員会)「ドッキン」(独占禁止法)の前に成すすべはない。ネットショップに「企業努力だ」と言われれば、そのとおりなのだ。

前出(Vol.1)の大手ショップの社長が卓球王国にこう語ってくれた。「うちにくるメーカーさんは二言(ふたこと)目にはネットでの価格競争の話をするけど、ぼくはネットでの競争を気にしていないのでストレスがないんですよ」。

卓球メーカーからの出荷価格が同じであれば、メーカーとしては安く売られても影響がないだろうが、数多くのショップを相手にしている営業マンなどはショップからの「なんとかしてくれないか」というクレームを聞くことになる。

卓球愛好者は知らないうちに二重定価に慣れてしまっている。定価があっても割引の価格を計算しながら買い物をするし、メーカーも割り引かれることを前提にして高めに定価を設定していないだろうか。メーカー商品、しかも売れ筋の商品が安売りされていくと、メーカーもブランドイメージを維持するのは難しくなる可能性がある。

一方、前回の記事を書いたあとに、「ネットが無い時代はショップが相当な力をもって殿様商売をしていたと思っていて、ネットの出現で自由競争が進み消費者に選択の幅が広がったことは良かった」というご意見もいただいた。

もちろんネットショップが罪で、リアル店舗がすべて良いわけではない。卓球ショップを営んでいる人の中には地元の卓球連盟を牛耳っているとか、売れない商品を売りつけている人もいて、だからお店では買いたくないという人もいる。

ネットショップが割引競争とは別に、卓球用具の価格破壊をもたらし、愛好者が安く用品を買えるきっかけを作り、殿様商売の人たちに活を入れたのは自由競争の「功」の部分だった。

また、ご意見を送っていただいた人には、「ここ何十年と国の平均年収が上がってないうえに税金と物価は上がり卓球道具の値段も上がっている中で、このままだと卓球はお金持ちしかできないスポーツになってしまうのではという危機感を持っています」という感想を寄せていただいた。