卓球王国 2024年12月20日 発売
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石川佳純の声は強化本部に届くのか。「団体戦の成績を個人の争いである選考レースの中に入れることが正しいのでしょうか」

「切磋琢磨する競争は絶対必要ですが、
国際大会での戦い方と国内での
戦い方は違うと思います」

 

五輪メダリストの石川佳純(全農)は12月21日発売の「卓球王国2月号」の独占インタビューで五輪代表の選考方法について口を開いた。
それは選考方法の問題点を指摘した、初めての選手の声だ。

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【石川佳純インタビュー】 卓球王国12月21日発売号よりの抜粋
●―卓球王国は一貫して、「このパリ五輪代表の選考方式がおかしい」という記事を月刊誌でもWEBでも主張してきました。協会側の主張も聞きつつ、先日は水谷隼さんの意見をWEBで紹介しましたが、選手の声がなかなか聞こえてこなかった。3回の五輪に出場し、そのたびに苛酷な代表レースを戦ってきた石川さんの意見を聞きたいです。
石川 オリンピックの代表レースはいつもハードで、肉体的にも精神的にも極限まで頑張らないといけないものです。しかし、それと選考方法は別のものだと思います。安心して、思う存分競争できないもどかしさは今までと少し違いますね。コロナの影響で国際大会が決まっていないこともあるでしょうけど、選手が不安な状態のままオリンピック代表の選考レースがスタートしたのは残念ですね。
私が一番に思うのはTリーグのことです。プロリーグとしてやっている試合を、オリンピックの選考基準に入れることが卓球界を盛り上げることになるのでしょうか。団体戦の成績を個人の争いである選考レースの中に入れることが正しいのでしょうか。それではTリーグの魅力が卓球ファンには伝わらない。
オリンピックにはみんな出たいんですよ。それなのに(Tリーグの)チーム状況で、誰を出すのか、誰に当てるのか、そういうことをしていたら見る側も辛いと思います。オリンピックの代表レースの厳しさと、Tリーグの楽しさは分けるべきだと私は思います。
●―Tリーグの活性化と五輪代表選考を一緒にすることは明らかに間違いですね。Tリーグの関係者で五輪代表選考基準から(Tリーグを)外すことに反対する人がいるのでしょうか?
石川 私はTリーグの1シーズン目から出場しています。それは自分の強化はもちろんですが、卓球のプロリーグができたことはうれしいことだし、盛り上がってほしいと思っていました。今になって(五輪の)選考ポイントに入れるのは、果たしてどうかなと思っています。オリンピックを目指す選手が多くいるチームはオーダーも大変です。
切磋琢磨する競争は絶対必要ですが、国際大会での戦い方と国内での戦い方は違うと思います。

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現在、卓球の国際ツアーWTTに参戦し、世界ランキング8位でありながら、世界選手権の個人と団体の2大会(成都・ダーバン)の出場を逃す見通しとなっている石川佳純。対外的な強さと国内のトーナメント戦での結果は一致しない。
石川同様に、日本卓球界を牽引してきた五輪金メダリストの水谷隼は、卓球王国の11月のインタビューに対して、「パリ五輪の選考方法」についてこう語っている。
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「Tリーグの勝ちを選考基準に入れるのはどう考えてもおかしい。Tリーグというのは特殊なルールで試合が行われるし、団体戦なので、相手チームによってオーダーが変わったり、オーダーから外された場合、試合に出れないこともあるので、Tリーグの勝ちを選考ポイントに入れるのは不公平だと思う」
「当時(昨年秋)と国際大会の状況も違ってきているし、そもそもオリンピックは出場することが目的ではなくて、勝つことが目的で、なおかつ今の日本は金メダルを求められています」
「国内の最強ではなく、『世界で最強の日本選手』を選ぶべきです。つまり、オリンピックで日本選手が試合をするのは海外の選手なんです。いくら日本の選手に勝って、国内で成績を残していても、それは参考にはならない。
でも国外で強い選手は国内でも強い。だけど、国内で強い選手は国外で強いと言えない。プレースタイルも関係しているし、卓球では初対戦の場合、海外の選手に対して勝つのがより難しいからです」
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12月17日の日本卓球協会理事会が行われ、強化本部は最終的な「パリ五輪代表の選考方法」を上程し、承認を得ると思われる。
日本卓球界のために貢献してきた五輪メダリストたちの声は理事会に届くのだろうか。そして、協会の最終決定機関とも言われる理事会のメンバー(会長を含め18人)は、この「パリ五輪代表の選考方法」の問題点を理解し、ディスカッションしてくれるのだろうか。

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